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30代女性にエビスタ使っちゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:骨粗鬆症.この記事は約5分36秒で読めます.
4,065 ビュー. カテゴリ:エビスタと閉経後骨粗鬆症
閉経後って何歳くらい?
エビスタやビビアントなどのSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)についての話。
SERMは、骨に対しては骨吸収を抑制するというエストロゲン様の作用を発揮しますが、乳房や子宮に対してはエストロゲン様の刺激作用は発揮せず、乳がんや子宮癌などのホルモン感受性癌に影響しないという薬です。
逆に乳房や子宮では抗エストロゲン作用を発揮するので、乳がんや子宮癌の予防になるのではないかという、とっても都合の良い薬なのです。
女性ホルモン様作用からの骨粗鬆症予防薬なので、女性ホルモンが分泌されている現役女性には必要のない薬。
そのため、エビスタやビビアントの適応症は、「閉経後骨粗鬆症」となっています。
40代後半の女性なら、「早いな」と思いつつ、「閉経」という女性のデリケートな話題に突っ込めず、そのまま調剤しますが。
20代、30代でエビスタやビビアントが処方されていたら「?」マークが頭に浮かびます。
これは早速疑義照会、となるのは早とちり。
純粋な閉経ではないかも知れませんが、人工的な閉経、卵巣摘出の手術を受けている可能性があります。
卵巣が摘出されれば、女性ホルモンは分泌されず、更年期障害と同様の症状になります。
「卵巣摘出」というのも突っ込みづらいキーワードですが、「お若いですが・・・」と患者本人に確認するのが優先。
SERMとDVT
若年者に対してSERMが効果がないという話をしましたが、高齢者に対してはDVT(深部静脈血栓症)という血栓ができやすくなる副作用が気になってくるので、使いにくい薬です。
「長期不動状態(術後回復期、長期安静期等)にある患者」には禁忌となっており、寝たきり患者には使えません。
50~70歳代くらいがターゲットでしょうか。
しかし、日本人においてはDVT(深部静脈血栓症)の発症率は低く、副作用発現に人種差があるというメーカーのお話もありましたので、さほど気にせず使い続けてもいいのかも知れません。
閉経後骨粗鬆症
女性ホルモンには骨を破壊する破骨細胞を減らし、骨密度の低下を防ぐ働きがあります。
そのため閉経を向かえ、女性ホルモンの分泌が無くなると女性は骨密度が急激に減少します。
よって骨粗鬆症になりやすいのです。
閉経前後で15%くらい骨密度が下がると言われています。若年成人平均(20歳代から30歳代の平均値)から30%以上下がると骨粗鬆症と診断されるので、閉経前は丈夫だったと思っていた骨が、閉経後には骨粗鬆症と診断されることもありえます。
骨折は寝たきりの原因第2位です。気をつけましょう。
女性ホルモンと骨粗鬆症
骨代謝は思春期におけるモデリング期、成熟期におけるリモデリング期に分類される。
リモデリング期では破骨細胞による骨吸収と、それに続く骨芽細胞による骨形成という一連の過程からなる再構築(リモデリング)を繰り返し、骨の内側より骨代謝を担っている。
骨構造は主に骨表面の皮質骨と海綿骨から成り立ち、骨代謝においては以前よりエストロゲンが海綿骨の骨形成に促進的に働くことが知られている。
女性においてエストロゲンは初潮とともに卵巣より分泌が開始され[性成熟期(生殖器)]、40代より始まる老年期(非生殖期)の前段=更年期を経過すると、エストロゲンの分泌は低下し始める。
その後、閉経を迎えると卵胞の消失とともに卵巣からの分泌は消失する。
このようにエストロゲンの分泌レベルが低下すると骨代謝における骨形成と骨吸収のバランスは骨吸収側に偏る。
エストロゲンは腎におけるビタミンDの活性化を促進させ、腸管におけるCa2+の吸収を促進させる。
また、腎尿細管では尿中排泄されたCa2+の濃度を上昇させる方向へ働く。
破骨細胞および骨芽細胞に対してはエストロゲン受容体(ER)を介し、破骨細胞においては骨吸収を抑制する。
一方、骨芽細胞においてはインターロイキン-6(IL-6)の産生抑制を介した骨吸収抑制および直接的な骨形成作用を示す。
これにより骨からのCa2+放出が抑制され、血中Ca2+濃度は低下する方向へ働く。
血中Ca2+レベルは副甲状腺においてモニターされており、血中Ca2+レベルは副甲状腺においてモニターされており、血中Ca2+濃度が低下すると間接的に破骨細胞活性化作用のある副甲状腺ホルモン(PTH)が副甲状腺より放出されるが、実際にはエストロゲンの破骨細胞に対する直接的な骨吸収抑制作用と、腸管や腎におけるCa2+の吸収が骨吸収作用を打ち消している。
閉経後のエストロゲン減少は、これらの骨吸収抑制と骨形成維持に関わるエストロゲン作用の急激な低下により、骨吸収を亢進させる。
また、骨形成促進能の低下を介して骨量を急激に減少させるとともに、骨微細構造も劣化させ、骨強度を減少させる。
RANKL
女性の閉経に伴う卵巣機能の低下により、血中エストロゲン濃度が低下する結果、骨吸収が亢進する。
一方、骨形成は相対的に抑制されるため、高骨代謝回転型の骨量減少を来たす。
これには破骨細胞の分化および活性化に必須のNFκB活性化受容体リガンド(receptor activator of Nuclear Factor κ B ligand:RANKL)の発現が促進されることが関与する。
閉経と尿路結石
更年期は女性ホルモンががくっと減ります。
女性ホルモンの低下は骨からのカルシウムの流出を促し、ひいては尿中のカルシウム濃度を上げてしまうので結石が増えるのです。
また、女性ホルモンの働き自体に結石をできにくくする働きがあるとも言われています。
男でも骨粗鬆症になる?
男性の骨量維持には、アンドロゲンとエストロゲンの両者が必要であるが、女性と異なり、加齢に伴うこれら性ホルモンの減少は緩やかで、骨吸収は著明には亢進しない。
むしろ骨芽細胞の分化、増殖に重要な成長因子や転写因子の作用低下、骨形成抑制因子スクレロスチン(sclerostin)の発現亢進、力学的負荷に対する反応性低下などによる骨形成低下を主とし、低骨代謝回転型の骨量減少を徐々に来たすのが典型的とされる。
また、飲酒や喫煙の影響も女性より大きいと思われるが、詳細は不明な点が多い。
高齢者では男女を問わずカルシウムやビタミンDの摂取不足、吸収低下、日光曝露不足などの結果、Caバランスが負になることや、運動量が低下することも関与する。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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