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生理食塩水は薬局で買えない?
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約2分24秒で読めます.
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生理食塩水はドラッグストアで買えない?

「生理食塩水、ありますか?」
薬局やドラッグストアでは、時折こうした質問を受けます。しかし結論から言うと、現在、生理食塩水は処方せん医薬品に指定されており、一般の薬局では販売されていません。
それでも、鼻うがい用、コンタクトレンズ用など、生理食塩水に近いものは市販されています。なぜ生理食塩水は市販できないのか、代用や自作は可能かなど、勉強していきます。
生理食塩水は薬局やドラッグストアで買えるの?
かつては薬局でも生理食塩水(0.9%食塩水)が販売されていました。しかし、2005年4月の薬事法改正により、生理食塩水は「処方せん医薬品」に指定されました。
つまり、医師の処方がなければ購入できない薬となったのです。これは、医療現場での注射液としての使用を前提とした製品であるためです。
そのため、薬局で「ありません」と言われるのは当然のことで、実際に多くの薬剤師がこの制度変更を知らなかったという声もあります。
なぜ処方せんが必要なの?
「たかが食塩水なのに」と思うかもしれませんが、医療用の生理食塩水は以下のような厳しい品質管理がされています。
・無菌であること
・エンドトキシン(発熱性物質)が含まれないこと
・注射や点滴として血管内に入れても安全なこと
特に注射用の溶剤としての用途があるため、誤用や不正使用(麻薬の希釈など)を防ぐ目的で規制されています。
自分で作ることはできるの?
理論上、生理食塩水は以下の比率で簡単に作れます。
・水1リットル
・食塩(塩化ナトリウム)9グラム
これは0.9%食塩水(w/v)で、生理食塩水と同じ濃度になります。ただし、無菌性の確保は不可能であり、特に粘膜や創傷への使用は推奨されません。
鼻洗浄などに使う場合は、清潔な器具と水(可能であれば精製水)を使用するなど、衛生面に十分注意が必要です。
コンタクトレンズ用の食塩水は代用になる?
ドラッグストアで「コンタクトレンズ用の食塩水」を見かけることがあります。これも0.9%の塩化ナトリウム溶液で、生理食塩水と濃度は同じです。
しかし、
・用途が限定されており、コンタクトのすすぎなどのみに使うことが前提
・無菌性やエンドトキシン管理の基準が異なる
といった理由から、医療用としての使用は適しません。
特に点滴、注射、粘膜への使用は絶対に避けるべきです。
安易な代用が危険な理由
処方される医療用生理食塩水は、体内に入れることを前提として製造されています。そのため、わずかな雑菌や不純物が致命的になる可能性も。
一方で、自作や市販の製品には以下のリスクがあります:
・雑菌混入による感染症
・エンドトキシンによる発熱や炎症
・製品ラベル通りの濃度が保証されない
「同じ0.9%食塩水だから大丈夫」という認識は非常に危険です。
まとめ:必要な場合は必ず医師に相談を
生理食塩水は、現在処方せん医薬品です。
医療目的での使用が必要な場合は、必ず医師に相談して処方してもらいましょう。
鼻うがいやコンタクト用など、目的が明確であれば代用品もありますが、使用前に薬剤師に相談することをおすすめします。
安全性と効果の両立のために、正しい知識をもとに行動しましょう。
11 件のコメント
鼻の手術をした後、鼻うがいを先生から指示されたのですが、使うよう言われた生理食塩水を使い終えてしまってドラッグストアをずっと探していました。
記事を読んで納得です。
院内の薬局で取り扱いがあるので、そちらで購入します。
ありがとうございました。
市販のハナノアをつかったあとに、アラミストをしても問題ないですか?
コメントありがとうございます。
大丈夫だと思います。
私はドラッグストアの一般の店員です。生理食塩水は、と聞かれて、食塩水を販売しました。登録販売者に聞かなかったです。犯罪になりますか?
コメントありがとうございます。
犯罪にはなりませんが、クレームはくるかも知れませんね。
ご丁寧にありがとうございます。以後気を付けて仕事します。
薬剤師です。大変勉強になります。10年以上薬剤師やってて知りませんでした。生理食塩水、処方箋医薬品ですか…
愛犬が結石の手術をしたのですが石が残っていたようで今カテーテルを入れてます。膀胱洗浄をしたくてドラッグストアを巡ったのですがどこにもありませんでした。置かない理由がわかりました、ありがとうございます。仕方がないので自分で作ります。
消毒液は、色々な種類で販売されています。第3類のエタノールとビオレの消毒液や他の消毒液は、何が違いますか?教えてください。ドラッグストアで働いている一般の店員でお客様に聞かれて困りました。宜しくお願い致します。
コメントありがとうございます。
エタノールにもいろいろありますが、消毒用エタノールはエタノール濃度が80%前後のもので、このくらいの濃度が最も消毒効果が優れていると言われます。市販の消毒液はこれよりも濃度が低いものもあります。ビオレの消毒液は調べたらエタノール濃度57%でした。60%を超えると消防法の規制が入って、大量購入する際には消防署へ許可申請または届出が必要になることがあるようです。
また、消毒用エタノールはお酒と同じように酒税がかかりますが、添加物を入れて飲めなくすると酒税がかからなくなるという仕組みがあって、安く販売するためにエタノール以外の成分入れてたりします。
ご丁寧にありがとうございます。勉強になりました。