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R体S体とD体L体の違いは?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約4分35秒で読めます.
60,929 ビュー. カテゴリ:旋光性とは?
物質の結晶または溶液が、偏光を左右いずれかに回転させる現象のこと。
右に回転させる性質を右旋性、左に回転させるものを左旋性という。
レボセチリジン、デキストロセチリジンの名称は、左旋性のlevorotatory、右旋性のdextrotatoryに由来する。
エナンチオマー(鏡像異性体)とは?
不斉炭素を含む化合物のなかで、右手と左手のように、互いに鏡像の関係にある立体異性体のことを鏡像異性体(エナンチオマー)といいます。
互いに鏡像異性体の関係にある2つの化合物は反対の旋光性(光学的な性質)を持ちます。そのため、「光学異性体」ともいわれます。
不斉炭素の4種の置換基に原子番号の大きい方から順位をつけ、最低順位の置換基の裏側から見て、残りの3個の置換基が順位の上位から順に時計回りに並んでいれば、その不斉炭素はR配置(rectus 右)を、反時計回りならS配置(sinister 左)をもつという。
エナンチオマーは、R体とS体でそれぞれ物理的性質(密度、融点、沸点、屈折率など)が同じである一方、生物学的性質は異なる。
エナンチオマーは、旋光性を示す、d-、l-を用いて表されていたが、鏡像異性体を生む原子の空間配置の差と旋光性の方向には一定の関係がないことから、IUPACの規則ではR、Sの表示方法が取り入れられている。
原子団の順位
直接結合する原子の原子番号が大きいものを優位とするので、O→C→Hの順となる。
乳酸にはCが2つ(COOH、CH3)あるので、さらにCに結合している原子について大きい順に比べてみると、O→Hとなる。
ゆえに、①OH→②COOH→③CH3→④Hの順となる。
光学異性体
医薬品には、構造中に不斉炭素を持つものが多い。
不斉炭素に結合する置換基の配置が異なるために、右手と左手のように鏡像関係にある一対の分子を鏡像異性体と言う。
鏡像異性体は、平面偏光の振動面を互いに逆の方向に回転させる性質を持つため、光学異性体とも言う。
キラル分子と言うこともある。
キラルの語源はギリシャ語の「手のひら」を意味する「cheir」で、右手と左手が互いに鏡像の関係にあることに由来しています。
光学異性体の表示法には複数あり、右旋光性の物質をd(dextro)体、左旋光性の物質をl(levo)体と表すdl法が以前は主流であった。
しかし、原子の空間配置と旋光性の向きには一定の法則がなく、光学異性体を区別するのに旋光性のみによるのは不便であるため、近年はRS法を使うことが多い。
RS法は、不斉炭素に結合する置換基の立体配置が、原子番号順に見て、右回りのものをR(rectus)体、左回りのものをS(sinister)体と表す方法である。
キラルスイッチ
光学異性体は、融点、沸点など物理化学的性質は同じであるが、生物学的性質は異なる。
これは生体が光学異性体を識別できるためで、医薬品としてR体またはS体を取り入れた場合、薬理作用や毒性が大きく異なるケースがある。
しかし従来は製造技術上の問題から、光学異性体が1対1の割合で混ざった混合物(ラセミ体)の医薬品が多かった。
その後、技術開発により光学異性体の一方のみを合成したり、単離することが可能になった。
そこで過去にラセミ体で製品化されていた医薬品を新たに光学異性体の一方のみにして製品化する「キラルスイッチ」が盛んにおこなわれている。
レボとデキス
レボセチリジン塩酸塩の「レボ」は、左旋性に由来しています。光学活性な化合物は、旋光性を持ち、左旋性か右旋性か、どちらかになります。
左旋性を英語でlevorotatoryというので、その接頭辞部分をとって「レボ」をつけます。一方、右旋性を英語でdextrorotatoryというので、「デキス」をつけます。セチリジン塩酸塩の左旋性を示すエナンチオマーを新たな医薬品として開発したので、レボセチリジン塩塩酸と名前がつけられたのです。
また、右旋性を示すエナンチオマーを新たな医薬品として開発した例としては、デクスメチルフェニデートなどがあります。
このほかにも、立体構造を表記するS/R表記を使って新たな名前をつけることがあります。ラセミ体であるオメプラゾールを基にしてS体のみで開発されたエソメプラゾール(エス=オメプラゾール)がその例です。
シストランスとEZ命名法の違いは?
シス-トランス異性
二置換アルケン(二重結合炭素に水素以外の2つの置換基が付いているアルケン)の場合、同一の置換基が二重結合の同じ側についているものをシス異性体、反対側についているものをトランス異性体と呼ぶ。
EZ命名法
各炭素上の優先順位が高い(原子番号が大きい方の)置換基が同じ側に付いている場合をZ(zusammen、ドイツ語で「一緒」の意味)、反対側に付いている場合をE(entgegen、ドイツ語で「反対側」の意味)で表す。
+-表記またはdl表記 | 光の偏光面を回転させる性質、旋光性による命名法 | 右回りに回転させる右旋性が(+)またはd 左回りに回転させる左旋性が(-)またはl |
RS表記 | 不斉中心に結合した原子(置換基)を一定のルールで順序づけた絶対立体配置による命名法 | 不斉中心に結合した原子(置換基)を、原子番号の大きさを主としたルールで順序づける。最も小さい原子を奥にして、残りの3つを不斉中心の側から大きい順にみたとき、右回り(時計回り)がR、左回り(反時計回り)がS |
DL表記 | d-グリセルアルデヒドを基準とし、それに特定のルールを付加した絶対立体配置による命名法 | d-グリセルアルデヒドから立体配置を変えずに合成できるのがD、その逆がL(主にアミノ酸や糖などの生体分子に使う) |
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
SとRって鏡像体なのかな・・DとLならわかるけど。とサプリの裏を眺めて不思議に思っていましたので大変参考になりました!読みやすくまとまっててわかりやすかったです。ありがとうございます。
薬学関連の勉強で立体異性体の光学活性について勉強をしているのですが、他のサイトなどでR体=右旋性みたいな書かれ方されているものが多く見受けられました。
レボセチリジンの不斉炭素がR体なのに左旋性(薬品名にレボ)を示すのはなぜだと理解するのに苦労しました。
RS体と旋光性に関与がないことが知れていいと思います。