2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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塗り薬の混合の可否

薬を混合して使う理由

薬剤師

混ぜちゃいけない塗り薬?

「軟膏・クリーム配合変化ハンドブック」によると、ステロイド外用薬の混合を行う理由は、軟膏塗布のコンプライアンス向上が最大の目的である。

皮膚を清潔にして軟膏を塗布するスキンケアはアトピー性皮膚炎の治療において重要な柱であるが、吸入や内服に比べ時間を要するという問題がある。

保湿剤とステロイド外用薬を併用する必要がある場合、全身に保湿剤を塗ってからステロイド外用薬を塗ると単純に倍の時間がかかるだけでなく、金属の5gチューブから出すのに時間がかかったり指先が痛んだりして嫌になって続けられない場合もある。

軟膏の混合を行うことで1度に2種類を塗ることができるため、その分、ていねいに塗りムラがないよう塗る余裕もできる。

また、金属のチューブではなく軟膏壺になるため、使い勝手もよくなるというメリットがある。

ただし、壺に入った軟膏を使う際は手で直接すくいとったりすると手指の雑菌が壺の中で増殖してしまうことがあるため、清潔な計量スプーンやヘラで量りとるようにし、最後まで清潔な状態で使うことも非常に大切である。

皮膚科のお医者さんは、なんで塗り薬を混ぜたがるのだろう?
オリジナルのレシピによる他の皮膚科との差別化を図り、患者を取り込む作戦なのであろうか。

重ね塗りして皮膚上で混ぜたほうが、薬の劣化、変質、ムラは少ないと思われるのだが。
薬局における混合にかかる手間、時間、患者の待ち時間、計量混合加算の計上による医療費増大、患者負担増などはあまり考えていないものと思われますが、そもそも混合した後の薬の状態、硬さ、使用感などについて把握してらっしゃるのかどうかも疑問に思う。

混合手技

混合には、軟膏板・軟膏ヘラ、乳鉢・乳棒を使うほか、自動軟膏練り機を使う方法がある。

軟膏板を使うと、水分の多い基剤は空気の混入は少ないが、水分が蒸発しやすいので、手早く混ぜるようにする。

乳鉢・乳棒で混ぜる場合、早過ぎると乳化の破壊や空気の混入が起きやすくなるので、ゆっくり混ぜるようにする。

一方、自動軟膏練り機は、回転数や回転時間の設定を誤ると、乳化の破壊、酸敗のほか、軟化して液状化してしまうことがある。

なお、手動、自動にかかわらず混合が可能とされている基剤同士でも、亜鉛華軟膏やその他の水溶性基剤のような固めの軟膏は、混合前によく練って軟らかくしておくなど、双方の物性を近づけるようにすることも重要だ。

塗り薬はよく混ぜたほうがいい?

塗り薬を混和はよく行われています。

軟膏板の上でヘラで混ぜることが多いと思います。
最近は、ふり混ぜ君みたいな機械で混ぜている薬局も多いかと。
乳鉢で混ぜることも。

軟膏板の上で混ぜる際には、それほど勢いよく混ぜることはできませんが、乳鉢などで混ぜるときには、グルグルと早くかき混ぜることができます。
が、乳棒を速く回し過ぎると、空気の混入や乳化の破壊による分離が起こるのでその点を注意する必要があります。
ただ混ざればいい、ってわけでも無いのです。

基剤別にみた外用薬の混合の可否

油脂性水溶性O/W型乳剤性W/O型乳剤性ゲル
油脂性×××
水溶性×××
O/W型乳剤性×××
W/O型乳剤性×××
ゲル×××××

軟膏とクリームを混ぜちゃダメ

油脂性基剤は薬物透過性が低いため、乳剤性基と混合すると逆に主薬の透過性が高まることがあります。
油脂性基剤同士は混合が可能ですが、液滴分散法など特殊な方法で調整されているものは混合すべきではありません。

水溶性基剤は他基剤とは性状が異なるため混合は避けます。

最近では褥瘡の分泌液の量に応じて、この基剤と他基剤を混合する場合がありますが、主薬の放出について検討されていないため、現時点では避けるべきです。

乳剤性基剤は水中油型(o/w)と油中水型(w/o)の2つのタイプがあり、いずれも薬物透過性が高いのが特徴です。

原則として、乳剤性基剤は混合により乳化が破壊されやすいので混合すべきではありません。水中油型は混合により空気も混入しやすいことから注意が必要です。

ゲル基剤は、pHの変化、塩や界面活性剤の添加および温度変化などにより相分離を起こし粘度が低下するため混合は避けるべきです。

O/W型のクリームは混ぜちゃダメ?

ザーネ軟膏、レスタミン軟膏、ユベラ軟膏などの古典的外用薬はすべてO/W型である。
O/W型の外用薬を油脂性のステロイド外用薬と混合した場合、混合されたステロイド外用薬の主剤であるステロイドの皮膚からの透過は半減し、したがってその作用である血管反応も半減してしまう。

基本的に同性質の基剤同士を混ぜると、その性質を損なう可能性は低い。

乳剤性基剤、特にO/W型は混合することで乳化が破壊されやすく、薬物透過性が低下する。混合には向いていない。浸透させて効果を期待するものは注意が必要である。

さらに乳化が破壊されると、水の層が分離して、1日2回の手指の指しいれ実験では1週間後の判定で室温保存で全例に、冷蔵庫保存では半数に細菌汚染が検出された。O/Wの混合は、効果の低下のみならず、細菌汚染のリスクが高まることもあり、混合調整は避けるべきである。

また、ゲルは混合によってpHが変化したり、界面活性剤などが添加されると相分離を起こしやすく、粘度が低下してしまうため、混合不可となっている。

ステロイドとpH

17位モノエステル型のステロイド(ロコイド、ボアラ、リンデロンV、ベトネベート)は、アルカリにより、17位のエステルが転移し、薬剤の効果が落ちることが知られています。
混合相手として特に問題となるのは尿素軟膏であり、分離すると尿素が水相へ移行して分離しアンモニアを生成するため、よりアルカリ性になるので注意を要する。

デルモベート、キンダベート、リンデロンV、コロイド、ボアラなど。たとえば、リンデロンV軟膏をpH8前後のザーネ軟膏やパスタロンソフトと混合すると、効力は1/8になるといわれています。

ステロイド骨格の17位と21位にエステルを付けることによって効果があがります。
例えば、リンデロンDPは、ジプロピオネートといって、プロピオン酸が2個、17位と21位に付いています。

基剤のpHと主薬の安定性

皮膚外用剤中の主薬は基剤のpHに影響される。ステロイドやアダパレンは酸性で安定であり、逆に活性型ビタミンD3製剤やナジフロキサシンクリームではアルカリ性となっている。

混合により主薬の安定性に影響を受けるが、先発医薬品と後発医薬品で基剤のpHあるいはみかけのpHが異なることがあり、切り替えにより、主薬の安定性に大きく影響することがあり、注意を要する。具体的には活性型ビタミンD3製剤とプロピオン酸クロベタゾールの混合で、先発医薬品との混合では活性型ビタミンD3の含量低下はすぐには認められないが、後発医薬品の一部では24時間で急激に含量低下することが認められている。

pHが1変動することは予想以上に主薬の安定性に影響を与える。
特にステロイド外用薬のボアラ、ロコイドおよびリンデロン製剤と活性型ビタミンD3製剤には注意すべきである。

ステロイド軟膏のエステル基による分類

ノンエステル:アドコルチン、ケナコルトAG、デカダーム、テラ・コートリル、ブデソン、フルコート、フルメタ、プレドニゾロン
モノエステル(17位):キンダベート、デルモベート、ベトネベート、ボアラ、リンデロンV、ロコイド
モノエステル(21位):シマロン、トプシム、ネリゾナ、ビスダーム、ロコルテン
ジエステル:アルメタ、アンテベート、ジフラール、ダイアコート、パンデル、プロパデルム、マイザー、メサデルム、リドメックス、リンデロンDP

混ぜてはいけない塗り薬

添付文書上で「他剤と混合して使用しないこと。」とされている皮膚外用剤を挙げる。

イソジンシュガーパスタ軟膏
ゲーベンクリーム
ソアナース軟膏/ユーパスタコーワ軟膏

ゲーベンクリームの使用上の注意に、「塩化物を含む消毒液(塩化ベンザルコニウム等)が本剤に混入し,その後曝光すると変色するおそれがあるので,軟膏ベラはよく清拭して用いること.」という記載も見られるが、混合しない薬なので軟膏ベラを使う機会は無さそうなのですが。
500gのボトルから小分けする時とかの為かな。

ワセリンで薄まる?

ステロイド外用薬と保湿剤や白色ワセリンを混合すると、ステロイド外用薬の濃度が薄くなるため効果や副作用を減ずることができると思われがちだが、商品によってステロイド外用薬単独と他剤配合後の皮膚透過比には差がみられる。
血管収縮効果による判定では希釈した程度には効果が低下しないことが多い。

混合後、作用・副作用が減弱するどころか、むしろ透過比は高くなっている。

保湿剤とステロイドを混合することで効果が増強することをおまけとして期待している医師もいる。

軟膏混合についてはメリットだけに気をとられることなく、その混合を行うことで製剤的な問題が起こらないかどうか、デメリットの確認も重要である。

軟膏混合の処方が出た際には、軟膏・クリーム配合変化ハンドブックなどで混合の可否を確認してから調剤を行う。

17位モノエステルのステロイド外用薬(ロコイド、ボアラ、リンデロンV、ベトネベート)は、pHがアルカリ性に傾くことでエステル転移による加水分解を起こし、含有量が低下するため、混合には注意が必要である。

O/W型クリーム製剤は、混合により乳化が破壊されるため混合には不向きである。

液滴分散型軟膏

プロトピック軟膏など液滴分散法による製剤も混合できないため注意が必要である。

プロトピック軟膏のインタビューフォームの「他剤との配合変化」には、
「本剤は基剤中に微細な液滴として分散した液滴分散系軟膏である。他剤あるいはワセリンと混合することにより液滴が合一して大きくなるため、混合することは好ましくない。」と記載されている。

皮膚移行性を高める目的で薬物を飽和状態に溶解し、ワセリン基剤中に微細な液滴で均等分散した液滴分散法で調製されている軟膏には、アルメタ軟膏、プロトピック軟膏、ボンアルファ軟膏、ドボネッ
クス軟膏、オキサロール軟膏などがある。
主薬の分散性が悪化することが予想されるため、混合は避ける。

可溶化剤のプロピレングリコールを含む薬剤は液滴分散型軟膏になっている。アンテベート軟膏にはプロピレングリコールは添加されていないが、GEには添加されているものが多く、分離するため、GEへの変更には気をつける。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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