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塗り薬を重ねて塗ってはダメ?
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約2分10秒で読めます.
4,937 ビュー. カテゴリ:密封療法と重層療法
塗り薬の効果を高めるために、他の薬を重ねて塗ったり(重層療法)、上からガーゼなどで覆ったり(密封療法)することがある。
密封療法を「ODT(= occlusive dressing technique)療法」とも言う。
薬の効果を高めるためには有意義な方法であるが、逆に効果が強くなり過ぎ、副作用のリスクが高まるということもある。
そのため、外用薬によって、密封療法を禁止していたり、推奨していたりと異なる。
以下に添付文書の記載をいくつか挙げる。
医薬品名 | 添付文書の記載 |
---|---|
5-FU軟膏5%協和 | 原則として閉鎖密封療法(ODT)を行うのが望ましい。 |
アンテベート軟膏0.05%/アンテベートクリーム0.05%/アンテベートローション0.05% | 大量又は長期にわたる広範囲の使用[とくに密封法(ODT)]により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様な症状があらわれることがある。 |
アルメタ軟膏 | 大量又は長期にわたる広範囲の密封法(ODT)等の使用により,副腎皮質ホルモン剤を全身投与した場合と同様な症状があらわれることがある。 |
インテバン軟膏1% | 密封包帯法で使用しないこと。 |
エキザルベ | 大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)等により、副腎皮質ステロイド剤を全身的投与した場合と同様な症状があらわれることがある。 |
エパテックゲル3%/エパテッククリーム3%/エパテックローション3% | 密封包帯法で使用しないこと。(ゲル,ローション) |
オキサロール軟膏25μg/g/オキサロールローション25μg/g | 本剤の密封療法(ODT)における安全性は確立していない。 |
ジフラール軟膏 0.05%/ ジフラールクリーム 0.05% | 大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、副腎皮質ステロイド剤を全身的投与した場合と同様な症状があらわれることがあるので、長期又は大量使用、密封法(ODT)は難治性症例に対してのみ行うこと。 |
スミルスチック3% | 密封包帯法で使用しないこと。 |
ゼスタッククリーム | 通常、1日1~数回適量を塗擦又はガーゼ等にのばして貼付する。症状により密封法を行う。 |
デルモベート軟膏0.05%/ デルモベートクリーム0.05% | 大量又は長期にわたる広範囲の使用[特に密封法(ODT)]により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様な症状があらわれることがあるので、特別な場合を除き長期大量使用や密封法(ODT)を極力避けること |
ドボネックス軟膏50μg/g | 本剤の密封療法(ODT)における安全性は確立していない。(皮膚刺激があらわれやすい。また、単純塗布に比べて皮膚からの吸収が助長され、全身性の副作用が発現しやすくなるおそれがある。) |
ドボベット軟膏 | 本剤は副腎皮質ホルモンを含有しており、同一病変に対する他の副腎皮質ホルモン剤との併用は避けること。大量または長期にわたる広範囲の使用〔特に密封療法(ODT)〕により、副腎皮質ホルモン剤を全身投与した場合と同様な症状があらわれることがあるので、特別な場合を除き長期大量使用やODTを極力避けること。 |
ファルネゾンゲル1.4% | 密封法(ODT)における安全性は確立していない(使用経験がない)。なお、他の副腎皮質ステロイド外用剤の使用上の注意には大量又は長期にわたる広範囲の密封法(ODT)等の使用により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様の症状があらわれることがあるとの記載がある。 |
ブレオS軟膏5mg/g | 患部に1日1回Occlusive Dressing Therapy(以下ODTと略す)(閉鎖密封療法)する。ODTが困難な場合は1日2~3回単純塗布する。 |
プロトピック軟膏0.1% | 密封法及び重層法での臨床使用経験はないので、密封法及び重層法は行わないこと。 |
ベセルナクリーム5% | 塗布部位及びその周辺に重度の紅斑、びらん、潰瘍、表皮剥離等があらわれることがあるので、本剤を過量に塗布しないこと。また、塗布部位を絆創膏やテープ等で密封しないこと。 |
ボルタレンゲル1% | 密封包帯法(ODT)での使用により、全身的投与(経口剤、坐剤)と同様の副作用が発現する可能性があるので、密封包帯法で使用しないこと。 |
5-FU軟膏やブレオS軟膏といった抗癌剤は、薬の効果を高めるため密封療法をしなければならない。
プロトピック軟膏やベセルナクリームは、副作用のリスクが高いので、密封療法をしてはいけない。
意外なのは、ボルタレンゲルやロキソニンゲルといったNSAIDs外用薬も密封療法を禁止している点だ。
ボルタレンテープやロキソニンテープがあるから問題ないようにも思える。
エパテッククリームについては、ゲル・ローションでは禁止されているが、クリームは密封療法可能という不思議な記載もみられる。
ステロイド外用薬については、治療効果を高めるため密封療法を行うこともあるが、全身性の副作用に注意するよう記載がある。ストロンゲストの薬で特に強めに書かれている。
ビタミンD3外用剤では「安全性が確立していない」ため推奨されていない。高カルシウム血症のリスクも上がりそうなので、単純塗布のほうがいいだろう。
患部にガーゼを当てている患者さんには気を付けましょう。
密封療法(ODT)
ステロイド外用剤を0.5~1mmに塗布したあと、ポリエチレンフィルムで被い密封する療法です。
密封により重層療法より吸収が高まります。
密封期間は日本では高温多湿のため、汗疹や悪臭を考慮して1~2日間が主です。
基剤はおもにO/W型基剤が使用されます。
5-FU軟膏やブレオマイシン硫酸塩軟膏などの抗悪性腫瘍剤のようにODTが原則的なものと、プロトピック軟膏やボルタレンゲルのように禁忌があり、添付文書での確認が大切です。
ステロイド外用剤の副作用を考慮した使用基準では、ODTは吸収量が増加するため、単純塗布と比べて使用量は3分の1、使用期間は2分の1に設定されています。
おむつは密封療法と同じ効果があり、吸収が高まるので注意が必要です。
重層療法
重層療法は一般にステロイド外用剤を単純塗布した上から亜鉛華軟膏など、古典的な外用剤をリント布に1~3mmの厚さに延ばしたものを貼付する方法です。
2種類の皮膚外用剤を順番に単純塗布する方法や、1枚のガーゼに2種類の皮膚外用剤を相前後して延ばして貼付する方法もあります。
いずれも単純塗布よりも吸収が増加し、治療効果が高まります。
リント布やガーゼを用いた場合、掻破による悪化を防止できる利点があります。
亜鉛華軟膏をリント布に延ばしたボチシートも市販されています。
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