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ワキ汗を止める薬?
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約4分53秒で読めます.
4,507 ビュー. カテゴリ:エクロックゲル
エクロックゲル(一般名:ソフピロニウム臭化物)というワキ汗、原発性腋窩多汗症の薬が2020年11月に発売されるそうだ。
ボトックス注射の適応に「重度の原発性腋窩多汗症」とあり、院内で使われることがあるようだが、処方薬で原発性腋窩多汗症に適応のある薬はないので、どのくらい需要があるものなのか?わかりません。
重症の原発性局所多汗症患者は手掌で約 61.6 万人、足底で約 32.3 万人、腋窩で約223.9 万人と推測されているそうだ。
かなりいますね。しかし、ワキ汗程度で医療機関を受診するという患者さんは少ないだろう。
「原発性腋窩多汗症」に適応のある薬はボトックスとエクロックゲルのみだが、多汗症に適応のある薬としては、プロ・バンサイン錠やミョウバンなどがある。
抗コリン薬なので、緑内障や前立腺肥大症に禁忌となっている。
塗り薬なので、そんなに影響ないような気もしますが、薬物動態の項目に血中濃度も記載されているので、体内に吸収されます。
エクロックの使用方法
エクロックゲルの使用方法については、説明書に以下のように記載されている。
水平にしたアプリケーターの上面にエクロックゲルをのせて、わきの下に塗布します。必ずアプリケーターを使用し、薬液には手を触れないように注意してください。手を使って塗布しないでください。使用量は、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分です(本剤1本(20g)が14日分に相当します)。
薬液を塗った後、わきが乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意してください。使用後のアプリケーターに残った薬液は、ティッシュペーパーなどでていねいに拭き取るか、水で洗い流してください。
手で塗っちゃダメで、使用時にはアプリケーターを用いる。こういう使い方の薬は初めてです。
デオナチュレみたいに、直塗りできれば使いやすいんでしょうけど、使用量を適切に管理するためには、こういう方法しか無かったのでしょう。
目に入るとよくないから。でも、手についたら洗えばいい。
「本剤1本(20g)が14日分に相当します」と記載されているが、30プッシュ分くらい使えるらしい。15日分使えますね。
アルミニウムと多汗症
ワキの臭い対策に、ミョウバンが使われることがある。ミョウバンは硫酸アルミニウムカリウム。アルミニウムが効くようだ。
8×4などの制汗デオドラントには必ずアルミニウムが入っている。
日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版」では、多汗症を発汗量が全身で増える全身性多汗症と、体の一部で増加する局所性多汗症に分類している。
また、特に原因のない原発性(特発性)と、他の疾患に合併して起きる続発性がある。
温熱や精神的負担の有無にかかわらず、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に日常生活に支障を来すほどの大量の発汗を生じる状態を、原発性局所多汗症と定義している。
ガイドラインでは、発症部位によらず塩化アルミニウム外用療法を第一選択の治療法として推奨している。
手掌多汗症には、軽症であれば単純外用、中等症や重症であれば密封療法(occlusive dressing technique: ODT) が望ましいとされる。
保険適応のある外用薬はなく 、塩化アルミニウム六水和物を無水アルコールに溶解し20 ~30 % に希釈したものがよく用いられる。
通常は1日1回発汗部分に外用して就寝し、ODTの場合は翌朝、水で洗い流す。 効果発現まで2~3週間掛かるとされる。
効果発現のメカニズムとして報告されているのは、皮膚に存在するムコ多糖類と金属イオンが合成した沈殿物 が、汗腺に障害を与え閉塞させることで発汗量が減るというもの。
また、汗の分泌細胞自体は障害を受けないが、汗を出す管がダメージを受け続けることにより分泌機能を失うとされているため、継続した外用が望ましい。
主な副作用として、刺激性皮膚炎があるが、外用の休止や保湿剤・ステロイドの外用で対応可能である。
多汗症と抗コリン薬
多汗症には、内服薬を用いた治療法も存在する。
多汗症に適応のある内服薬としては、漢方薬以外では抗コリン薬のプロ・バンサインのみである。
発汗の原因となる交感神経を抑制するために、抗コリン薬が使用されやすく、実際、局所多汗症に対する内服療法の中で報告数が圧倒的に多い。
汗腺は他の部位と異なり、交感神経のみで支配されている。
一般に、交感神経の伝達物質はノルアドレナリンだが、汗腺を支配する交感神経は例外的にアセチルコリンである。
日本で唯一、多汗症に保険適応を持つ抗コリン薬はプロパンテリン臭化物(プロ・バンサイン) で、1回1錠を1日3 、4回服用する。そのほかにも、ロートエキスやアトロピン硫酸塩水和物などが使われる。
ロートエキスは、主成分であるl-ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンが体内の各部位に分布するムスカリン様受容体において、アセチルコリンと競合的に拮抗する。
効果は服用後30分から1時間ほどで表れるとされることから、緊張や不安で汗を多くかきそうな状況の前に服用することで、過剰な発汗を抑えることが期待できる。
副作用としては、抗コリン作用による口渇、便秘、排尿障害などが挙げられるが、頓服では問題になるケースは多くない。
ただ抗コリン薬のため、緑内障、前立腺肥大による排尿障害、重篤な心疾患、麻痺性イレウスのある患者には禁忌となっている。
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