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過活動膀胱治療薬の一覧
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱. タグ:薬の一覧. この記事は約7分1秒で読めます.
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過活動膀胱治療薬の一覧
分類 | 商品名 | 一般名 |
---|---|---|
膀胱平滑筋直接作用薬 | ブラダロン | フラボキサート塩酸塩 |
抗コリン薬 | ポラキス | オキシブチニン塩酸塩 |
ネオキシ | オキシブチニン塩酸塩 | |
バップフォー | プロピベリン塩酸塩 | |
ベシケア | コハク酸ソリフェナシン | |
デトルシトール | 酒石酸トルテロジン | |
ウリトス/ステーブラ | イミダフェナシン | |
トビエース | フェソテロジンフマル酸塩 | |
β3刺激薬 | ベタニス | ミラベグロン |
ベオーバ | ビベグロン |
過活動膀胱治療薬の分類
過活動膀胱とは、尿意切迫、頻尿、切迫性尿失禁の症状を呈する疾患です。
前立腺肥大症は過活動膀胱を合併することが多く、50~70%は合併しているという。逆の働きをする抗コリン薬とα₁遮断薬が併用されることもあり、尿意切迫感を伴う前立腺肥大症患者に、その違いを理解できるように説明することが必要である。
抗コリン薬やβ₃刺激薬とα₁遮断薬では、働く筋肉の違いで相乗効果を説明することができる。
尿失禁と過活動膀胱
2002年の国際禁制学会用語基準で、過活動膀胱の定義が大幅に変更され、尿意切迫感の自覚症状だけで診断できるようになったため、その頃から「過活動膀胱」という病名が普及され始めました。
それまでは尿失禁=尿漏れが無ければ病気として認識されなかった。
薬の適応症名も、最近の薬は「過活動膀胱」となっているが、ポラキス、ブラダロンには過活動膀胱の適応症名はない。
尿失禁には4つの分類がある。
①腹圧性尿失禁:重い荷物を持ち上げた時や、走ったりジャンプをした時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入った時に起こる尿失禁
②切迫性尿失禁:急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまう尿失禁
③溢流性尿失禁:尿を出し切ることができず、尿が少しずつ漏れ出てしまう尿失禁
④機能性尿失禁:認知機能や身体機能の問題が原因で起こる尿失禁
過活動膀胱によって引き起こされるのは②切迫性尿失禁である。
過活動膀胱治療薬としては、抗コリン薬かβ₃刺激薬が主に使われる。
M₃アセチルコリン受容体に対する刺激をブロックして膀胱平滑筋の収縮を妨げる(抗コリン薬)。あるいは、β₃アドレナリン受容体を刺激して、膀胱平滑筋を弛緩して、膀胱を広げる(β₃刺激薬)。
活動時に働く交感神経(アドレナリン)とリラックス時に働く副交感神経(アセチルコリン)。
リラックスは弛緩=畜尿?という直感が邪魔をする。畜尿がアドレナリンで、排尿がアセチルコリンになる。
畜尿は、交感神経が優位の状態で、緊張した状態。
排尿は、副交感神経が優位の状態で、リラックスした状態。
戦闘状態に備えるのが交感神経、安静・休息状態にするのが副交感神経であるが、戦闘状態でトイレにも行ってる場合じゃない、ということ。
抗コリン薬は膀胱のムスカリンM₃受容体に結合し、アセチルコリンがムスカリンM₃受容体に結合するのを阻害します。これにより、アセチルコリンによって引き起こされる膀胱平滑筋の異常な収縮が抑制される。
抗コリン薬もβ₃刺激薬も「膀胱を広げる薬」で伝わるとは思うが、併用されることもあり、その違いを伝える際には、抗コリン薬は「膀胱が縮むのを抑える薬」「膀胱の過剰な反応を抑える薬」といった伝え方になるだろう。
ちなみにブラダロン(フラボキサート塩酸塩)は抗コリン薬の分類ではなく、膀胱平滑筋に対するカルシウム拮抗作用やホスホジエステラーゼ阻害による直接弛緩作用を持つ薬で、特殊である。緑内障に対しても禁忌とはなっていない。膀胱平滑筋弛緩作用を持つので「膀胱を広げる薬」ではある。
β3アドレナリン受容体刺激薬
ベタニス、ベオーバなどのβ₃アドレナリン受容体刺激薬は、膀胱の β3 受容体に結合して、膀胱の弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させる。
β₃作動薬が、膀胱の β3 受容体に結合すると、β3 受容体の活性化を介して平滑筋の細胞内でアデニル酸シクラーゼが活性化し、cAMP の産生が促進される。
これにより、細胞質内のカルシウム(Ca2+)濃度が低下し、膀胱平滑筋の弛緩(伸展)をもたらす。
オキシブチニン(ポラキス、ネオキシテープ)やプロピベリン(バップフォー)にはCa拮抗作用もあるので、膀胱を広げる働きも期待できる。
抗コリン薬やβ₃刺激薬を使って、膀胱を広げて容量を増やし「尿をためやすくする」ともに、α₁遮断薬で尿道を広げることで「尿を出しやすくする」。これにより残尿を減らし尿意切迫感を生じる間隔を延ばし日常生活を快適に過ごすことができる。
口渇と薬剤選択
過活動膀胱の治療において、口の渇きの副作用は治療中断を余儀なくされるほど重要な副作用である。
なぜなら、口の渇きで水を飲む→水を飲むことで頻尿が悪化する、という悪循環が生まれるからである。
抗コリン薬に比べてβ₃刺激薬は口渇の副作用が少ないと言われる。また、安定した血中濃度が得られるテープ剤も口渇の頻度は少ない。
夜尿症治療薬
過活動膀胱治療薬のカテゴリーとは違うかも知れないが、ミニリンメルト(デスモプレシン)が夜間頻尿や夜尿症に使われる。
規格によって適応が異なるので注意が必要である。
デスモプレシンは抗利尿ホルモンであるバソプレシンと似た構造を有し、バソプレシンV2受容体に結合し、尿中から水の再吸収を行い、尿量を減少させる働きがある。
夜間頻尿に使えるのであれば、前立腺肥大症や過活動膀胱患者にも使えそうな気がするが、ミニリンメルトの添付文書には、「夜間頻尿の原因には、夜間多尿の他に、前立腺肥大症、過活動膀胱等の膀胱蓄尿障害等があることから、夜間頻尿の原因が夜間多尿のみによることを確認すること。前立腺肥大症及び過活動膀胱で夜間頻尿の症状を呈する場合には当該疾患の治療を行うこと。」とあり、前立腺肥大症や過活動膀胱患者に使用するには高いハードルがある。
高齢者のおもらし(尿失禁)と子どものおもらし(夜尿症)ではメカニズムが異なるが、使用される薬では共通するものもある。
尿をためやすくする薬
「膀胱の過剰な収縮を抑える薬」「膀胱を広げる薬」「尿をためやすくする薬」など色々な言い方があるだろう。
過活動膀胱は膀胱にうまく尿が貯められなくなった状態で、蓄尿(尿を溜める)という膀胱機能の障害です。
「我慢できないような尿意が急に起こる」「すごくトイレが近い」「急に尿に行きたくなり、我慢できず尿が漏れてしまう」などの症状があります。
尿をためる、畜尿機能の障害と考えると、「尿をためやすくする薬」という言い方がわかりやすい。
時々、膀胱に対するアセチルコリンの働きとアドレナリンの働きがごっちゃになる。
活動時に働く交感神経(アドレナリン)とリラックス時に働く副交感神経(アセチルコリン)。
リラックスは畜尿じゃね?という直感が邪魔をする。畜尿がアドレナリンで、排尿がアセチルコリン。
β3刺激薬
ベタニス、ベオーバなどのβ₃アドレナリン受容体刺激薬は、膀胱の β3 受容体に結合して、膀胱の弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させる。
これにより、膀胱は正常な蓄尿期の状態に近づき、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善す
る。
β₃作動薬が、膀胱の β3 受容体に結合すると、β3 受容体の活性化を介して平滑筋の細胞内でアデニル酸シクラーゼが活性化し、cAMP の産生が促進される。
これにより、細胞質内のカルシウム(Ca2+)濃度が低下し、膀胱平滑筋の弛緩(伸展)をもたらす。
β₃刺激薬と抗コリン薬の違いは?
抗コリン薬とβ₃刺激薬の違いについて説明する前に、交感神経と副交感神経の違いから。
排尿は、副交感神経が優位の状態で、リラックスした状態。
畜尿は、交感神経が優位の状態で、緊張した状態。
過活動膀胱の患者では、畜尿機能を高める状態にもっていきたいわけなので、交感神経を刺激する「β₃刺激薬」、あるいは副交感神経をブロックして相対的に交感神経優位の状態にもっていく「抗コリン薬」が使われる。
抗コリン薬のほうは、「膀胱のムスカリン受容体へのアセチルコリンの結合を阻害し、膀胱の異常な収縮を抑制する」という働き。
β₃刺激薬のほうは、「膀胱のβ₃受容体に作用し、畜尿期のノルアドレナリンによる膀胱弛緩作用を増強することで膀胱容量を増大させる」という働き。
β₃刺激薬のほうが「膀胱を広げて、尿をためやすくする薬」、抗コリン薬のほうが「膀胱の過剰な収縮を抑えて、尿をためやすくする薬」といえる。
β₃刺激薬と抗コリン薬の副作用
抗コリン薬の副作用としては、「口内乾燥」と「便秘」が多い。
β₃刺激薬も同じく「便秘」と「口内乾燥」が多い。
ここらへんの副作用は、戦闘状態に備えるのが交感神経、安静・休息状態にするのが副交感神経という覚え方で、戦闘状態で「口からカラカラ」になり、トイレにも行ってる場合じゃない、ということで覚えられる。
畜尿と排尿のメカニズム
排尿に関する末梢神経は3種類に大別され、胸髄中枢から下腹神経(交感神経)が膀胱、尿道、前立腺に分布し、仙髄中枢から骨盤神経(副交感神経)が主に膀胱体部に分布している。
陰部神経(体性神経)は仙髄中枢から外尿道括約筋に分布している。
交感神経α1受容体は、尿道平滑筋や前立腺に密に分布し、畜尿期には交感神経末端から分泌されるノルアドレナリンによって活性化され、細胞内Caイオン濃度を上昇させて平滑筋を収縮させる。
β受容体は、膀胱平滑筋に密に分布し、畜尿期にはノルアドレナリンによって刺激されアデニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内ATPをcyclicAMPに変換させ、平滑筋を弛緩させる。
膀胱平滑筋組織中にはβ3受容体が強く発現している。
膀胱体部組織中にはムスカリン受容体が多く存在し、排尿期では副交感神経末端から分泌されるアセチルコリンによって活性化され、膀胱が収縮する。
膀胱に多く存在するのはM2とM3タイプであるが、機能的にはM3タイプを介する収縮が主と考えられている。
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