2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

ベタニスの処方は高齢者のみ?

ベタニスの警告

ベタニスの添付文書の警告には、

生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること。[動物実験(ラット)で、精嚢、前立腺及び子宮の重量低値あるいは萎縮等の生殖器系への影響が認められ、高用量では発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着床数及び生存胎児数の減少が認められている。]

と、若い人には投与しないように注意喚起がされている。女性に限らず、男性も。

通常であれば、高齢者に処方される薬ではあるが、トイレが近いという訴えをもつ若年者に処方される可能性もあるので注意が必要。

警告の記載内容からすると、子どもができにくくなるという理由に思われるが、妊婦への使用上の注意書きでは、催奇形性についても記載されている。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[動物実験(ラット、ウサギ)で、胎児において着床後死亡率の増加、体重低値、肩甲骨等の屈曲及び波状肋骨の増加、骨化遅延(胸骨分節、中手骨、中節骨等の骨化数低値)、大動脈の拡張及び巨心の増加、肺副葉欠損が認められている。]

男性においても注意するという点で、見逃さないようにすべきである。

ベタニス

選択的β3アドレナリン受容体作動薬。

・ミラベグロンは、動物実験で生殖器系への影響が認められており、添付文書の警告には生殖可能な年齢の患者への投与はできる限り避けることとされている。
・ミラベグロンには肝薬物代謝酵素のチトクロームP450(CYP)2D6を阻害する作用があり、CYP2D6で代謝される薬剤との併用には注意を要する。
特に、抗不整脈薬のフレカイニド酢酸塩(タンボコール)とプロパフェノン塩酸塩(プロノン)は、血中濃度が上昇して心室性不整脈などを誘発する恐れがあるため、併用禁忌となっている。
・ミラベグロンは空腹時に服用すると血漿中の濃度が高くなることが示されているため、必ず食後に服用する。
・徐放性製剤であることから、割ったり、すりつぶしたりすると徐放性が失われ、薬物動態が変わる恐れがあるため、かまずにそのまま服用するように指導する。

ベタニスと既存の抗コリン薬との違い

ベタニスは、既存の抗コリン薬とは異なる作用機序を有する新規OAB治療薬です。

抗コリン薬は膀胱のムスカリン(M)受容体に結合して膀胱の異常な収縮を抑制しますが、ベタニスは膀胱のβ3アドレナリン受容体に結合し、弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させてOAB症状を改善します。

作用機序が異なるため、ベタニスでは抗コリン薬に特徴的な口内乾燥、便秘、排尿困難等の副作用が起こりにくいのが特徴です。

膀胱とノルアドレナリンとアセチルコリン

正常な膀胱では、交感神経終末より放出されたノルアドレナリンが、膀胱のβ3受容体を介して膀胱を弛緩させるとともに、α1受容体を介して尿道を収縮させることで尿をためている(蓄尿期)。

そして排尿期には、ノルアドレナリンの放出が抑制されて尿道が弛緩、同時に副交感神経終末からアセチルコリンが放出され、ムスカリン受容体を介して膀胱が収縮することで排尿が起こる。

しかしOABでは、蓄尿期であるにもかかわらずアセチルコリンが放出されて膀胱が収縮し、尿意切迫感を生じる。

OABと抗コリン薬

そこでOABの治療には、膀胱収縮抑制作用を有するコハク酸ソリフェナシン(ベシケア)、酒石酸トルテロジン(ウリトス、ステーブラ)などの選択的ムスカリン受容体拮抗薬、または抗コリン作用とカルシウム拮抗作用を併せ持つプロピベリン塩酸塩(バップフォー)が広く使用されている。

しかし、これらの抗コリン薬は、口腔内乾燥をはじめ、便秘、頭痛、目のかすみなどの副作用が出現しやすい。

また、重篤な副作用として、急性緑内障発作、麻痺性イレウスなどのほか、中枢神経のムスカリン受容体を阻害することで認知症、記憶障害、傾眠傾向などを生じ得る。

ベタニスとOAB

ミラベグロン(ベタニス)は、日本で開発され2011年9月に発売された新規OAB治療薬である。

ミラベグロンは、膀胱のβ3受容体に結合して蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させることで正常な蓄尿期の状態に近づける薬剤である。

そのため、抗コリン薬に特徴的な口腔内乾燥、便秘などの副作用が起こりにくいのが特長である。

β3刺激薬

▽ベタニス錠25mg、同50mg(一般名:ミラベグロン、アステラス製薬)「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」を効能・効果とする新規有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
 選択的β3アドレナリン受容体作動薬という新規作用により、膀胱平滑筋の弛緩させ、症状を改善する。
海外承認はなし。

薬食審・第一部会 新薬など9成分を審議、承認了承 国内ニュース ニュース ミクスOnline

β1、β2はよく聞きますが、β3受容体の働きを知りませんでした。
アドレナリン受容体 – Wikipedia
β1:心臓に主に存在し、心収縮力増大、子宮平滑筋弛緩、脂肪分解活性化に関与
β2:気管支や血管、また心臓のペースメーカ部位にも存在し、気管支平滑筋の拡張、血管平滑筋の拡張(筋肉と肝臓)、子宮の平滑筋等、各種平滑筋を弛緩させ、および糖代謝の活性化に関与
β3:脂肪組織、消化管、肝臓や骨格筋に存在する他、アドレナリン作動性神経のシナプス後膜にもその存在が予想されている。基礎代謝に影響を与えているとも言われている。

1998年頃からの日本人を中心とした研究によって、ヒト膀胱平滑筋のβ受容体の97%がβ3であること、ヒト膀胱の弛緩がβ1やβ2ではなくβ3を介すること、ラットモデルで膀胱過活動が選択的β3アゴニストによって抑制されることなどが示され、OABに有効である可能性が示されました。

β3アドレナリン受容体作動薬 ミラベグロン、過活動膀胱(OAB)治療薬として承認申請|takのアメブロ 薬理学などなど。

抗コリン薬にとって代わり、過活動膀胱に対する第一選択薬となりうるのでしょうか。
乞うご期待。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

3 件のコメント

  • がっちゃまん のコメント
         

    ラット試験による試験結果は、生殖器系への影響(精嚢・前立腺・子宮の重量低下あるいは萎縮など)を引き起こすと警告されていますね。
    自分はこれから服用を始めるので、この点に焦点をあてて観察してみたいと思います。

  • N のコメント
         

    大変お世話になっている方がベタニスを8カ月間服用しましたところ、肝機能異常(AST260IU/L、ALT420IU/L)と糖尿病(血糖値530mg/dL、A1c11%)の症状など(γGT610IU/L、ALP510IU/L)の影響で体調不良となりました。ホームページで調べたところ、ベタニスの長期投与は28日まで(以前は14日)とあります。
    何か治療法などご存知の方はお教え下さい。
    とても不安です。
    宜しくお願い申し上げます。

  • 0207 のコメント
         

    三十代ですがベタニス50を処方されていて自分の中では主治医が逆に疑うくらい効果が出ています。
    生殖可能な人への投与は注意と言うことは飲み始めて半年後に知って主治医と笑いました。
    生理が終わったかと思う位来なかったからですが現在ではベタニスが原因かは分かりません。
    ただ卵巣機能の低下は婦人科医に診断されました。
    あと二分脊椎持ちの出産経験あり。
    帝王切開で全身麻酔くらいましたけど。
    こんな例外(?)もおります。

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