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ベオーバとベタニスの違いは?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約4分0秒で読めます.
8,452 ビュー. カテゴリ:β3受容体刺激薬
ベタニス(ミラベグロン)に次ぐ選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤として、ベオーバ錠(ビベグロン)という薬が発売されるらしい。
どっちも「ベ」から始まるので紛らわしいが、ベータ3受容体刺激薬だから仕方ない。
ちなみにベタニスの名前の由来は、Beta 3 agonistから。そのまま。
ベオーバの名前の由来は、Beta 3 agonist for the patient with Overactive bladder らしい。Overactive bladderはOAB、過活動膀胱のこと。
β受容体といえば、不整脈や降圧剤としてのβ1遮断薬や、気管支拡張薬としてのβ2刺激薬などがある。β3受容体は膀胱に存在し、β3受容体が刺激を受けると筋肉が緩み膀胱が広がり、尿道が縮むことで、尿をより蓄えることができるというメカニズム。
ベタニスの処方もあまり見たことがないので効果のほどがよくわからないが、ベタニスとベオーバを比較してみる。
まず、ベオーバの錠剤の大きさがベタニスに比べて小さくて飲みやすそうだ。
妊婦とベオーバ
ベタニスの添付文書をみると、まず飛び込んでくるのが、警告欄。
生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること。[動物実験(ラット)で、精嚢、前立腺及び子宮の重量低値あるいは萎縮等の生殖器系への影響が認められ、高用量では発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着床数及び生存胎児数の減少が認められている。]
この警告がベオーバには無いので、年齢関係なく使いやすい。
ベオーバ(ビベグロン)は、添付文書において生殖可能年齢の患者に対する注意喚起はなされておらず、妊婦および妊娠している可能性のある婦人に対して有益性投与となっている。
一方ベタニス(ミラベグロン)は、動物実験において胎児や出生児への影響が認められていたことから妊婦等・授乳婦への投与は禁忌とされている。さらに同薬は、動物実験で生殖器への影響が認められたことから、生殖可能な年齢の患者への投与はできる限り避けるよう添付文書の警告の項に記載されている。
ベオーバと肝機能
ベオーバは、高度の肝機能障害患者で血中濃度が上昇する恐れがあることから投与には注意を要するとされている。
一方、ベタニスは中等度の肝機能障害患者・重度の腎機能障害患者に投与した際に、血中濃度時間曲線下面積(AUC)が約2倍に上昇したことから、これらの患者には開始投与量を通常の半分(25㎎)にするよう設定されている。
また、より血中濃度が上昇すると考えられる重度の肝機能障害患者には投与禁忌である。
ベオーバと相互作用
なお、ベオーバは薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4およびP糖蛋白の基質であることが示唆されている。そのため、CYP3AおよびP糖蛋白を阻害する薬剤や誘導する薬剤は、併用注意に設定されている。
また、ベタニスはタンボコール(フレカイニド)とプロノン(プロパフェノン)が併用禁忌となっているが、ベオーバは併用禁忌となっている医薬品が無い。
この点においてもベオーバは使いやすい。
また、ベタニスには25mgと50mgの2規格存在し、肝機能や腎機能による用量調節があるが、ベオーバには無い。
多規格在庫を置かなくてよいので、在庫管理的にも良い。
やはり、警告や禁忌があると、かなり危険、使いづらいというイメージが付いてしまうので、ベオーバのほうが発売されて1年もすればかなりシェアを取りそうな気はする。
β3受容体
膀胱の機能調節には、副交感神経(骨髄神経)、交感神経(下腹神経)、体性神経(陰部神経)が関与し、いずれの神経も求心路を含んでいる。
畜尿期には、交感神経終末からノルアドレナリンが放出され、膀胱平滑筋(排尿筋)のβ受容体サブタイプ(β1、β2、β3)のβ3受容体を介して尿道が収縮する。
排尿期にはノルアドレナリンの放出が抑制され、尿道が弛緩するとともに、副交感神経の末端からアセチルコリンが放出され、ムスカリンM3、M2受容体を介して膀胱平滑筋(排尿筋)が収縮する。
しかし、過活動膀胱では畜尿期においてもアセチルコリンが放出され、膀胱のムスカリン受容体に結合し、膀胱平滑筋(排尿筋)の異常な収縮が起きる。
そのため、過活動膀胱では十分な量の尿をためられるだけの膀胱平滑筋(排尿筋)の弛緩が起こらない。
ベタニス(ミラベグロン)はヒト膀胱平滑筋のβ3受容体に対し極めて選択的に作用する選択的β3アドレナリン受容体作動薬である。
ちなみに、ヒト膀胱平滑筋の弛緩を主に受け持つサブタイプはβ3受容体であり、β受容体を遺伝子発現量(mRNA発現量)で比較すると、β1とβ2はそれぞれ1.5%および1.4%にすぎず、β3受容体が全体の97%を占めている。
ベタニスが膀胱のβ3受容体に結合すると、β3受容体の活性化を介して膀胱(排尿筋)の平滑筋細胞内でアデニル酸シクラーゼが活性化し、cAMPの産生が促進される。
これにより、細胞質内のカルシウム(Ca2+)濃度が低下し、畜尿期のノルアドレナリンによる膀胱平滑筋(排尿筋)の弛緩作用を増強し、膀胱容量を増大させる。これにより、膀胱は正常な畜尿期の状態に近づき、過活動膀胱の症状が改善される。
なお、β3受容体は、当初脂肪細胞に存在することが報告され、その刺激によってミトコンドリアの酸化的リン酸化を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸させることから、β3受容体刺激薬は抗肥満薬として期待が持たれているが、現在のところその開発は成功していない。
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