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バセドウ病の治療法選択:薬、アイソトープ、手術
公開. 更新. 投稿者:甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症.この記事は約3分32秒で読めます.
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バセドウ病の治療法選択:薬、アイソトープ、手術─それぞれの利点と注意点

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)は、自己免疫反応により甲状腺が過剰にホルモンを分泌する病気です。治療法としては、薬物療法(抗甲状腺薬)、放射線療法(アイソトープ治療)、外科的治療(甲状腺の切除)があり、患者の年齢、妊娠の可能性、副作用の有無、甲状腺の大きさ、再発リスクなどに応じて選択されます。
薬物療法:まず最初に選択される治療法
◆使用薬と治療の流れ:
薬物療法では、抗甲状腺薬であるメチマゾール(メルカゾール)またはプロピルチオウラシル(プロパジール)を使用します。初期はメルカゾール30mg/日、プロパジール300mg/日など高用量で開始し、甲状腺ホルモン値(FT3、FT4)が正常化したら維持量(メルカゾール5〜10mg/日)に減量して継続します。
◆寛解と再発:
約2年間の治療で30〜50%の患者が薬を中止できるとされますが、再発率も高く、2年以内に約25%が再発します。5年以上の服薬を要する例もあり、完全な寛解を得るには個人差があります。
薬の副作用
・発疹、肝障害、関節痛、味覚障害など
・稀だが重大な副作用として無顆粒球症(白血球の激減)があり、突然の発熱や咽頭痛には注意が必要です
副作用が強く出た場合や治療の継続が難しい場合は、他の治療法の検討が必要となります。
放射線療法(アイソトープ治療):比較的簡便な治療法
放射性ヨウ素(I-131)を内服し、甲状腺細胞を選択的に破壊します。1回の内服で済むことも多く、手術より負担が少ないのが利点です。
◆適応と禁忌:
・妊婦および妊娠可能性のある女性には禁忌
・18歳未満は発がんリスクが否定できず原則禁忌
◆メリット:
・身体への負担が少ない
・外来で治療が可能
◆デメリット:
・効果発現までに数か月かかる
・甲状腺機能低下症が高頻度で生じ、チラーヂンSなどによる一生のホルモン補充が必要になることが多い
手術療法:即効性と再発抑制の両立
◆適応:
・薬の副作用が強い
・腫瘍の合併
・大きな甲状腺腫(100g以上)
・短期間で治療を終えたい
◆手術の種類:
・亜全摘術(部分切除):再発リスクあり
・全摘術(完全切除):再発率低いが、永久的にホルモン補充が必要
◆合併症:
●甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの補充(チラーヂンS)で対応
●副甲状腺機能低下症(7〜8%):
・血中カルシウムの低下(しびれ、テタニー、けいれん)
・活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドールなど)やカルシウム製剤で治療
●反回神経麻痺(稀):声がかすれる、発声困難などの症状
甲状腺がなくても生きていける?
結論から言えば、甲状腺が無くても生きていけます。ただし、甲状腺ホルモンが無ければ代謝バランスが崩れ、命に関わります。術後はチラーヂンS(レボチロキシン)などの服用が一生必要になることを理解しておく必要があります。
治療法選択のポイント
治療法 | 対象となる患者 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
薬物療法 | 初発患者 | 非侵襲的、柔軟な治療調整 | 副作用あり、寛解率低い |
放射線療法 | 妊娠予定のない成人 | 一度で済む、外来可能 | 妊娠NG、低下症率高い |
手術療法 | 若年者、腫瘍合併、大腺腫 | 即効性高い、再発しにくい | 合併症リスク、術後ホルモン補充必要 |
まとめ:患者ごとの最適な選択を
バセドウ病の治療は、単に「治せば良い」というものではありません。患者のライフスタイル、妊娠の有無、副作用リスクなどを総合的に考慮して、その人にとって最適な治療法を選ぶ必要があります。
どの治療法にも一長一短があり、「薬を飲み続けたくない」「再発したくない」「短期で治したい」といった価値観の違いによって選択肢は変わってきます。医師と十分に相談し、納得のいく治療方針を選んでください。