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糖尿病患者が舐める「血糖値を上げない飴」
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目次
糖尿病患者が舐める「血糖値を上げない飴」

「この飴なら血糖値は上がらないですよね?」
糖尿病患者さんから、こんな質問を受けたことはないでしょうか。
「血糖値が上がらない飴ってありますか?」
「ラカントの飴なら安心ですよね?」
「低血糖のとき、これを舐めればいいですか?」
一見すると同じ「飴」の話ですが、
この3つはまったく別の意味を持つ質問です。
特に注意が必要なのが、
血糖値を上げない飴 = 低血糖時にも使える飴
と誤解されているケースです。
糖尿病患者が舐めても血糖値を上げにくい飴とは何か、
そして
それらが低血糖時には役に立たない理由を、
勉強していきます。
糖尿病患者が「血糖値を上げない飴」を求める理由
まず、なぜ糖尿病患者さんが「飴」を欲しがるのか。
理由① 口渇・口寂しさ
・口が乾く
・何か舐めていたい
・間食を我慢している反動
理由② 低血糖への不安
・「もし下がったらどうしよう」
・「いつも何か持っていたい」
理由③ 甘いものへの欲求
・食事制限のストレス
・甘味への心理的依存
この中で、
①と③の目的なら“血糖値を上げない飴”は有用ですが、
②の目的には致命的に不向きです。
血糖値を上げない飴の正体
糖尿病患者向け、低糖質、血糖値が上がらないとされる飴の多くは、
砂糖の代わりに別の甘味料が使われています。
主に使われる甘味料
・エリスリトール
・ラカンカ抽出物
・ステビア
・キシリトール
・人工甘味料(アスパルテームなど)
これらに共通する特徴は、
甘いが、血糖値をほとんど上げない
という点です。
なぜ血糖値を上げないのか?
ここを理解しないと、誤解が生まれます。
エリスリトールの場合
・小腸でほぼ吸収される
・しかし代謝されず、エネルギーにならない
・そのまま尿中へ排泄
血糖にもインスリンにも影響しない
ラカンカ(羅漢果)の場合
・甘味成分はモグロサイド
・消化・吸収されにくい
・エネルギーにならない
「甘味=糖質」という前提が成り立たない
人工甘味料の場合
・糖構造を持たない
・血糖値を上げる経路が存在しない
・「甘い=血糖値が上がる」は誤り
ここが最大の誤解ポイントです。
正しい整理
❌ 甘い → 血糖値が上がる
⭕ 吸収されるブドウ糖 → 血糖値が上がる
つまり、
甘味の強さと血糖上昇は無関係
なのです。
では、低血糖のときに舐めてもどうなる?
ここからが最重要ポイントです。
血糖値を上げない飴を舐めた場合
・口の中は甘い
・脳は「甘いものを摂った」と錯覚
・実際の血糖値は上がらない
低血糖は改善しません。
低血糖時に必要なのは「速やかに吸収される糖」
低血糖対応の原則はシンプルです。
低血糖に有効なもの
・ブドウ糖(タブレット・ゼリー)
・砂糖
・飴(※砂糖使用のもの)
・清涼飲料水(糖入り)
無効または不十分なもの
・ラカント使用の飴
・ノンシュガー飴
・キシリトールガム
・チョコレート(脂質が多く吸収が遅い)
「血糖値を上げない飴」は、
低血糖時には“何もしていない”のと同じです。
実際に起こりうる危険なケース
ケース①
「いつも舐めている糖尿病用の飴を、低血糖のときにも舐めた」
→ 血糖値が上がらず
→ 症状が進行
→ 意識障害
ケース②
「甘いから大丈夫だと思った」
→ 甘味=安心という思い込み
これは知識不足ではなく、説明不足の問題です。
薬剤師が伝えるべきポイント
① 目的を分けて説明する
・普段舐める飴(血糖値を上げない)
・低血糖時の対処(血糖値を上げる)
この2つは別物
② 「これは低血糖には効きません」と明言する
あいまいな言い方はNGです。
❌「あまり上がらないです」
⭕「低血糖のときには使えません」
③ 実物を見せて説明する
・ブドウ糖タブレット
・ノンシュガー飴
を並べて、
「見た目は似ていても役割が違います」
と説明すると理解されやすくなります。
まとめ
・糖尿病患者向けの「血糖値を上げない飴」は存在する
・甘いが、血糖値は上がらない
そのため
・低血糖時の対処には使えない
・この誤解は非常に危険
・薬剤師による明確な啓蒙が必要
薬剤師的ひとこと
「甘い=低血糖に効く」は最も危険な誤解の一つ




