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貼り薬を切って使ってもいい?
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約6分45秒で読めます.
33,770 ビュー. カテゴリ:切って使っちゃいけない貼り薬
湿布を半分に切れば効果も半分?
例えば、モーラステープのような痛み止めの貼り薬を切って使うこともあるだろう。
ホクナリンテープも切って貼付するよう指示されていることがある。
医師の裁量、あるいは患者の判断で切って使うような貼り薬もある。
しかし、添付文書上、明確に「切ってはいけない」となっている薬もある。
ワンデュロパッチ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。また、傷ついたパッチは使用しないこと。
デュロテップMTパッチ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。また、傷ついたパッチは使用しないこと。
エストラーナテープ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。
ニュープロパッチ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。[ハサミ等で裁断すると本剤の有効成分が析出し、血中濃度が低下するおそれがある。]
ノルスパンテープ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。また、傷ついた本剤は使用しないこと。
フェントステープ:本剤をハサミ等で切って使用しないこと。
メノエイドコンビパッチ:本剤を半分などに切って使用しないこと.
ニュープロパッチは理由として、「血中濃度が低下する」と書かれているが、他の薬の切ってはいけない理由は記載されていない。
理由としては、薬価の問題が挙げられるだろう。
半分に切って使ったほうが安上がりだけど、それをやられたらメーカー的に損する。
とにかく、処方せん上、これらの薬を「切って使用するように」指示されていたら疑義照会が必要。
逆に言えば、これらの注意書きのないテープ剤は切断して使用しても良いということにもなる。ビソノテープにはこのような注意書きは無く、マトリックス型であり、単位面積当たりのビソプロロールの濃度が一定で、半分に切ることで、有効成分が漏れ出すことはないため、半分に切って半量投与が可能である。
ただ、メーカーに問い合わせれば、「切断すると粘着層が露出し、衣類などに付着して、剥がれる原因になるなど取り扱いにくくなる。」と言われ推奨しないだろう。ビソノテープ8㎎の薬価は79.6円で4㎎の薬価は60.1円、半分の量で半額ってわけじゃないから切断して使われるとメーカー的には損だからね。
また、鎮痛貼付剤で言うと、テープ剤は切りやすいが、パップ剤はハサミにくっついて切りにくい。湿布の63枚制限などあり、不足する場合に半分に切って使おうとする患者もいるかも知れないので注意が必要。
マトリックス型とリザーバー型
経皮吸収型貼付薬の構造には、粘着層(マトリックス層)に薬剤を含有させた「マトリックス型」と、薬物貯蔵層と放出制御膜で薬剤の放出速度を制御する「リザーバー型」がある。
マトリックス型の方が製剤構造が単純であり、ホクナリンテープやフランドルテープ、デュロテップMTパッチなど広く用いられている。
ニュープロパッチ、イクセロンパッチ、ビソノテープもマトリックス型である。
一方、リザーバー型は薬物貯蔵層と放出制御膜により、皮膚への薬物透過を長く一定にコントロールすることができるというメリットがあり、ニトロダームTTS、フェントステープなどで採用されている。
リザーバー型製剤を切断すると、薬物貯蔵層の切断面から薬剤が漏出し、皮膚刺激感などの局所的副作用や、急速・過量投与による全身的副作用が生じる可能性がある。そのため同製剤は、切断使用を控えるよう患者や家族に説明しなければならない。
マトリックス型製剤は、マトリックス層の面積と薬剤放出量が比例するため、理論上は切断して使用できる場合が多い。
しかし切断すると剥がれやすくなることが多く、適切な使用のためには患者に安易に勧めることは控えたい。
また、有効成分の性状や製剤の特性を考慮すると、切断を避けるべき薬剤もある。
例えば、パーキンソン病治療薬であるニュープロパッチは、有効成分が結晶化しやすいため、マトリックス層に再結晶を防止する工夫が施されている。
そのため切断すると薬剤の結晶が析出し、血中濃度が低下する恐れがあるため、切って使用してはならない。
高血圧治療薬であるビソノテープは、粘着層を1mmほど大きめに覆う表層がある。切断すると粘着層が露出し、衣類などに付着して、剥がれる原因になるなど取り扱いにくくなるため、推奨されていない。
減量などやむを得ず切って使用する場合は、切断面を絆創膏などで覆うと良い。また同薬はアルミ袋に挟んでビニール袋に入れ暗所で室温保存し、1か月以内に使用する。
アルツハイマー型認知症治療薬であるリバスチグミン貼付薬(イクセロン、リバスタッチ)は、有効性や安全性が確認されていないなどの理由から、各製造販売元が2017年3月に切断使用しないよう「適正使用のお願い」を公表した。同文書では、貼付薬の剥がし忘れや複数枚同時使用による過量投与についても注意喚起している。
医師もここらへんの製剤知識は持ち合わせていないことが多く、麻薬性鎮痛薬の貼付剤を切断指示してくる話も聞いたことがあるので、不可であることを説明したい。
ホクナリンテープ2/3枚?
ホクナリンテープの処方で、2/3枚という処方を受けたことがあります。
通常、成人にはツロブテロールとして2mg、小児にはツロブテロールとして0.5~3歳未満には0.5mg、3~9歳未満には1mg、9歳以上には2mgを1日1回、胸部、背部又は上腕部のいずれかに貼付します。
通常、切って使うということは考えられませんが、副作用が出たとか、病院に規格がそろってないとか、0.5歳未満に使うとか、考えられなくもありません。
ホクナリンテープの大きさを比べてみるとわかりますが、0.5mgの倍の大きさで1mg、4倍の大きさで2mgになっています。
そのため、切って使っても問題ありません。
ホクナリンテープを昼食後に貼る?
ホクナリンテープは、成人では貼付から約12時間後、小児では約14時間後に最高血中濃度に到達します。
気管支喘息の患者では、多くの場合、早朝4時ごろに最も呼吸機能が低下することがわかっています。
基本的には就寝前に貼付することが多いのですが、寝るときの咳がひどいような患者さんの場合、お昼頃に貼るように指示されることもあります。
ミニトロテープを半分に切っても良い?
例えば、ホクナリンテープを切って使うように指示された処方を見たことはある。
モーラステープを患部に合うように、適当な大きさに切って使うように医師から指示されたという話を患者から聞くこともある。
マトリックス型の貼付剤であれば、切って使用しても効果に問題はないはずだ。
しかし、添付文書上切って使う用法が指示されているわけではない。
逆に、添付文書では、「ハサミで切ってはいけない」と指示されているものが多い。
麻薬が多いが、ワンデュロパッチ、デュロテップMTパッチ、エストラーナテープ、ニュープロパッチ、ノルスパンテープ、フェントステープ、メノエイドコンビパッチなど。
そんな中、ニトログリセリン製剤のミニトロテープには、添付文書に切って使う使い方が記載されている。
ミニトロテープの添付文書の「高齢者への投与」には、
本剤は、主として肝臓で代謝されるが、高齢者では一般に肝機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続し、頭痛、頭重、血圧低下等が発現するおそれがあるので、少量(例えばテープを半分に切断して半量とする)から投与を開始するか、投与間隔を延長するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
高齢者には、半分に切って使う使い方が例示されている。
ニトログリセリンテープ27mg(14cm2)には、他にバソレーターテープやメディトランステープもあるのだが、それらの添付文書には、
本剤は、主として肝臓で代謝されるが、高齢者では一般的に肝機能が低下していることが多いため高い血中濃度が持続し、頭痛、頭重、血圧低下等が発現するおそれがあるので、注意すること。
とだけ書いてあり、切断する使用法は記載されていない。
ミニトロテープは堂々と切って使うことができる。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
ホクナリンテープ2/3枚使用の処方箋に副作用予防のためと書いてありました
自分もホクナリンテープ®2/3枚などと指示することがあります。昔々、メーカーの方に50㎍/㎏だったかな?、単位がうろ覚えですいません、あたりを目安に使用するみたいなことを言われた記憶がありまして。製剤の㎎数、㎍に換算して、を体重㎏で割って、100とか、50の2倍以上になるようだと流石に副作用が心配なので切断して使う指示を出すことがあります。