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喘息になりやすい職業は?職業性喘息
公開. 更新. 投稿者: 38 ビュー. カテゴリ:喘息/COPD/喫煙.この記事は約4分13秒で読めます.
目次
喘息になりやすい職業は?― 知らないうちに進行する「職業性喘息」とは

「喘息は体質の問題」「子どもの頃からある病気」というイメージを持っている人は少なくありません。
しかし実際には、大人になってから仕事をきっかけに発症する喘息も多く、その代表が職業性喘息です。
職業性喘息は、特定の職業・職場環境で吸入する物質が原因となって発症・悪化する喘息を指します。
原因物質は、粉じん、化学物質、動植物由来のタンパク、消毒薬、金属塩など非常に多岐にわたります。
・職業性喘息とは何か
・喘息になりやすい職業と原因物質
・なぜ仕事を続けていると悪化するのか
・一般的な喘息との違い
・早期発見のポイントと対策
について、勉強していきます。
職業性喘息とは?
定義
職業性喘息とは、
仕事に関連して吸入した物質が原因で新たに発症する、または既存の喘息が悪化する状態
をいいます。
重要なのは、「もともと喘息がなかった人」でも発症する点です。
職業性喘息の2つのタイプ
職業性喘息は大きく次の2つに分けられます。
① 感作型(アレルギー型)
・特定の物質に繰り返し曝露されることで免疫反応が成立
・数か月〜数年の潜伏期間あり
・いったん感作されると少量でも発作が起きる
多くの職業性喘息はこちら
② 刺激物質型(RADS)
・高濃度の刺激物を一度吸入して発症
・事故・災害・消毒作業などがきっかけ
・アレルギー機序を介さない
喘息になりやすい職業と原因物質一覧
ここからは、実際に職業性喘息が報告されている職業と原因物質を見ていきます。
製造業(食品・医薬品・化学)
主な原因物質
・小麦粉
・アミラーゼ
・抗生物質
・ピペラジン
・メチルドパ
・サルブタモール
・シメチジン
小麦粉や酵素はタンパク質抗原として非常に感作性が高く、
製粉工場・食品工場・医薬品製造現場では典型的な原因です。
「薬を作る側が、薬で喘息になる」という皮肉なケースも少なくありません。
酪農業・畜産業
主な原因物質
・倉庫ダニ
干し草や飼料に繁殖したダニの死骸や排泄物を吸入することで発症します。
農業・酪農では慢性的な低濃度曝露が続くため、気づきにくいのが特徴です。
洗剤・酵素製造業
主な原因物質
・枯草菌酵素
洗剤に含まれる酵素は洗浄力が高い反面、気道への刺激・感作性が非常に強いことで知られています。
電気・電子部品(ハンダ付け)
主な原因物質
・コロホニー(マツヤニ)
ハンダのフラックス成分に含まれるコロホニーは、
職業性喘息の古典的原因物質です。
農業
主な原因物質
・大豆ダスト
大豆の粉じんは強力なアレルゲンで、
港湾作業や飼料製造、農作業での発症例が知られています。
医療従事者
主な原因物質
・オオバコ種子
・ラテックス
・各種殺菌剤
医療現場は、意外に職業性喘息のリスクが高い職場です。
・ゴム手袋(ラテックス)
・消毒薬・殺菌剤
・吸入薬の粉末
など、日常的に曝露する機会があります。
美容師
主な原因物質
・過硫酸塩
ブリーチ剤に含まれる過硫酸塩は、
美容師の職業性喘息の代表的原因です。
若年で発症し、職業継続が困難になるケースもあります。
めっき業者・金属加工
主な原因物質
・ニッケル塩
金属塩はアレルギー性接触皮膚炎だけでなく、
気道アレルギーも引き起こします。
精錬所労働者
主な原因物質
・白金塩
・パラジウム
貴金属塩は極めて感作性が高く、
少量曝露でも重症喘息を引き起こすことがあります。
自動車塗装業
主な原因物質
・エタノールアミン
・ジイソシアネート
ジイソシアネートは最も重要な職業性喘息原因物質の一つです。
塗装・ウレタン樹脂関連職では特に注意が必要です。
病院勤務者(清掃・消毒業務含む)
主な原因物質
・サルファチアゾール
・クロラミン
・ホルムアルデヒド
・グルタールアルデヒド
・ラテックス
消毒・殺菌業務は、短時間でも高濃度曝露になることがあり、
刺激物質型喘息の原因にもなります。
ゴム加工業
主な原因物質
・ホルムアルデヒド
・エチレンジアミン
・無水フタル酸
揮発性化学物質が多く、
密閉空間では曝露量が増えやすい職場です。
職業性喘息の特徴的な症状
職業性喘息では、次のような時間的特徴が重要です。
・仕事中・仕事後に症状が悪化
・休日・長期休暇で症状が軽くなる
・転職・部署異動で改善する
「月曜日が一番つらい」「連休明けに咳が出る」といった訴えは要注意です。
一般的な喘息との違い
| 項目 | 一般的な喘息 | 職業性喘息 |
|---|---|---|
| 発症時期 | 小児〜若年 | 成人以降が多い |
| 悪化因子 | 感冒、運動、ダニ | 特定の職場 |
| 改善 | 薬物治療 | 環境改善が重要 |
| 放置 | 慢性化 | 重症化しやすい |
なぜ早期発見が重要なのか
職業性喘息は、
・原因物質から離れれば改善する可能性がある
・曝露が続くと不可逆的な気道障害が残る
という特徴があります。
「薬を増やせば何とかなる」と考えて放置すると、
最終的には薬が効きにくい重症喘息に移行することもあります。
予防と対策
個人レベル
・マスク・保護具の適切な使用
・体調変化を記録する
・早めに医療機関へ相談
職場レベル
・換気設備の改善
・原因物質の代替
・作業工程の見直し
薬剤師・医療職ができること
・「お仕事は何をされていますか?」と一言聞く
・成人発症喘息では職業歴を意識
・吸入指導だけで終わらせない
職業性喘息は、気づいた人が救える喘息でもあります。
まとめ
・喘息になりやすい職業は実際に存在する
・原因は粉じん・酵素・化学物質・金属塩など多様
・仕事と症状の関連に気づくことが最重要
・早期対応で予後は大きく変わる
「喘息=体質」と決めつけず、
「仕事が原因かもしれない」という視点を持つことが、患者を守る第一歩です。




