2026年2月25日更新.2,761記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ペースメーカーで予防できる不整脈

ペースメーカー・ICD・CRTの違い―「どの不整脈に、どの機械が使われるのか」

医療現場や服薬指導の場面で、患者さんからこんな言葉を聞くことがあります。

「心臓に機械が入っています」
「胸に装置が入っていて…」

このとき、多くの医療者がまず思い浮かべるのが「ペースメーカー」でしょう。

しかし実際には、心臓に植え込まれる機器にはいくつか種類があり、目的も対象となる不整脈もまったく異なります。

代表的なのが:
・ペースメーカー(PM)
・ICD(植込み型除細動器)
・CRT(心臓再同期療法装置)
です。

これらを正しく理解していないと、

・病態評価を誤る
・予後を読み違える
・薬物治療の意図を見誤る

といった問題につながります。

本記事では、

✔ 不整脈の種類
✔ 各デバイスの役割
✔ 適応の違い
✔ 実務での考え方

を体系的に整理して解説します。

まず押さえるべき「不整脈の基本分類」

心臓デバイスを理解する前に、不整脈を大きく分類しておきましょう。

① 徐脈性不整脈(遅すぎる)
心拍が極端に遅くなるタイプです。

代表例:
・洞不全症候群
・房室ブロック
・洞停止

問題点:
→ 脳や臓器への血流不足
→ 失神・突然死リスク

② 頻脈性不整脈(速すぎる)
心拍が異常に速くなるタイプです。

代表例:
・心房細動
・心室頻拍
・心室細動

問題点:
→ 心不全悪化
→ 血栓形成
→ 突然死

③ 心不全関連リズム異常
拍動の「速さ」ではなく、

→ 心臓の動きの「ズレ」

が問題になるタイプです。

例:
・左脚ブロック
・心室同期不全

→ 心臓のポンプ効率低下

▶ この3分類がすべての基礎になります

分類主な対応装置
徐脈ペースメーカー
致死性頻脈ICD
重症心不全CRT

ペースメーカー(PM)とは何か

ペースメーカーの本質
ペースメーカーとは:
→「心拍が遅くなりすぎるのを防ぐ装置」
です。

心臓の動きを常に監視し、設定した下限値を下回ると電気刺激を出します。

例:
設定60回/分
→ 60未満になると自動作動

対象となる不整脈

主に次の疾患です。

✔ 洞不全症候群
・洞停止
・著明徐脈

✔ 房室ブロック(高度)
・Ⅱ度高度
・Ⅲ度(完全房室ブロック)

✔ 一過性心停止
これらはペースメーカーの王道適応です。

できること・できないこと

できること

✅ 徐脈防止
✅ 失神予防
✅ 心拍安定化

できないこと

❌ 心房細動停止
❌ 心室頻拍治療
❌ 除細動

実務的な意味

ペースメーカー留置患者は:

→「徐脈が問題だった人」
です。

比較的予後は安定しているケースが多いのも特徴です。

ICD(植込み型除細動器)とは何か

ICDの本質
ICDとは:
→「突然死を防ぐための装置」
です。

致死性不整脈が出現した瞬間に:

✔ 強い電気ショック
✔ 抗頻拍ペーシング

を行い、リズムを正常化します。

対象となる不整脈

ICDの主な対象は:

✔ 心室頻拍(VT)
✔ 心室細動(VF)

これらは放置すれば数分で死亡します。

適応となる背景疾患

ICD患者は重症例が多いのが特徴です。

例:
・心筋梗塞後
・拡張型心筋症
・心停止既往
・遺伝性不整脈

→「一度死にかけた人」
→「突然死リスクが極めて高い人」

が対象です。

ペースメーカーとの違い

ICDには:

✔ ペースメーカー機能
✔ 除細動機能

の両方があります。

つまり:
→ ICD = 上位互換ペースメーカー
のような位置づけです。

実務的な意味

ICD留置患者は:

⚠️ かなり重症
⚠️ 予後リスク高
⚠️ 心不全併存多い

と考えるのが基本です。

CRT(心臓再同期療法)とは何か

CRTの本質
CRTとは:
→「心臓の動きをそろえる装置」
です。

不整脈というより:
→心不全治療機器
に近い位置づけです。

なぜ同期が必要か

重症心不全では:
・左右の心室がズレて収縮
・ポンプ効率低下
が起こります。

CRTは:

✔ 両心室を同時刺激
✔ 収縮を同期

させます。

対象となる患者

主に:
・LVEF低下(≤35%)
・左脚ブロック
・重症心不全
が適応です。

CRT-PとCRT-D

CRTには2種類あります。

種類内容
CRT-Pペースメーカー型
CRT-D除細動器付き

→ CRT-Dは「CRT+ICD」
です。

実務的な意味

CRT患者は:
→ 重症心不全患者
です。

心不全薬が多剤併用されているケースがほとんどです。

3つの装置を総合比較

目的別比較

項目ペースメーカーICDCRT
主目的徐脈防止突然死防止心不全改善
主対象徐脈VT/VF同期不全
重症度比較的軽重い重い

不整脈対応別比較

不整脈PMICDCRT
洞不全
房室ブロック
心房細動
心室頻拍
心室細動

◎:主対象 △:補助的 ✕:不可

薬物治療との関係

ペースメーカー+薬
徐脈が補正されるため:

✔ β遮断薬
✔ Ca拮抗薬
✔ 抗不整脈薬
が使いやすくなります。

ICD+薬
ICD患者では:
・アミオダロン
・β遮断薬
併用が多いです。

→ ショック回数を減らす目的。

CRT+薬
CRTは心不全治療の一部です。

ほぼ必ず:
・ARNI / ACE阻害薬
・β遮断薬
・MRA
・SGLT2阻害薬
と併用されます。

患者対応で役立つ確認フレーズ

現場でおすすめなのは:

「電気ショックが出る機械ですか?」

これだけで:
・はい → ICD/CRT-D
・いいえ → PM/CRT-P
が判別できます。

まとめ:3つの装置の本質

最後に本質を一言でまとめます。

▶ ペースメーカー
→「遅すぎ防止装置」

▶ ICD
→「突然死防止装置」

▶ CRT
→「心不全改善装置」

結論

心臓に入る機械は、すべて「不整脈のため」ではありません。

・徐脈 → ペースメーカー
・致死性頻脈 → ICD
・重症心不全 → CRT

という明確な役割分担があります。

これを理解しているだけで、患者背景の把握、処方意図の理解、リスク評価の精度は大きく向上します。

まさに、臨床力を底上げする知識といえるでしょう。

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