記事
ペースメーカーで予防できる不整脈
公開. 更新. 投稿者: 27 ビュー. カテゴリ:未分類.この記事は約5分1秒で読めます.
目次
ペースメーカー・ICD・CRTの違い―「どの不整脈に、どの機械が使われるのか」

医療現場や服薬指導の場面で、患者さんからこんな言葉を聞くことがあります。
「心臓に機械が入っています」
「胸に装置が入っていて…」
このとき、多くの医療者がまず思い浮かべるのが「ペースメーカー」でしょう。
しかし実際には、心臓に植え込まれる機器にはいくつか種類があり、目的も対象となる不整脈もまったく異なります。
代表的なのが:
・ペースメーカー(PM)
・ICD(植込み型除細動器)
・CRT(心臓再同期療法装置)
です。
これらを正しく理解していないと、
・病態評価を誤る
・予後を読み違える
・薬物治療の意図を見誤る
といった問題につながります。
本記事では、
✔ 不整脈の種類
✔ 各デバイスの役割
✔ 適応の違い
✔ 実務での考え方
を体系的に整理して解説します。
まず押さえるべき「不整脈の基本分類」
心臓デバイスを理解する前に、不整脈を大きく分類しておきましょう。
① 徐脈性不整脈(遅すぎる)
心拍が極端に遅くなるタイプです。
代表例:
・洞不全症候群
・房室ブロック
・洞停止
問題点:
→ 脳や臓器への血流不足
→ 失神・突然死リスク
② 頻脈性不整脈(速すぎる)
心拍が異常に速くなるタイプです。
代表例:
・心房細動
・心室頻拍
・心室細動
問題点:
→ 心不全悪化
→ 血栓形成
→ 突然死
③ 心不全関連リズム異常
拍動の「速さ」ではなく、
→ 心臓の動きの「ズレ」
が問題になるタイプです。
例:
・左脚ブロック
・心室同期不全
→ 心臓のポンプ効率低下
▶ この3分類がすべての基礎になります
| 分類 | 主な対応装置 |
|---|---|
| 徐脈 | ペースメーカー |
| 致死性頻脈 | ICD |
| 重症心不全 | CRT |
ペースメーカー(PM)とは何か
ペースメーカーの本質
ペースメーカーとは:
→「心拍が遅くなりすぎるのを防ぐ装置」
です。
心臓の動きを常に監視し、設定した下限値を下回ると電気刺激を出します。
例:
設定60回/分
→ 60未満になると自動作動
対象となる不整脈
主に次の疾患です。
✔ 洞不全症候群
・洞停止
・著明徐脈
✔ 房室ブロック(高度)
・Ⅱ度高度
・Ⅲ度(完全房室ブロック)
✔ 一過性心停止
これらはペースメーカーの王道適応です。
できること・できないこと
できること
✅ 徐脈防止
✅ 失神予防
✅ 心拍安定化
できないこと
❌ 心房細動停止
❌ 心室頻拍治療
❌ 除細動
実務的な意味
ペースメーカー留置患者は:
→「徐脈が問題だった人」
です。
比較的予後は安定しているケースが多いのも特徴です。
ICD(植込み型除細動器)とは何か
ICDの本質
ICDとは:
→「突然死を防ぐための装置」
です。
致死性不整脈が出現した瞬間に:
✔ 強い電気ショック
✔ 抗頻拍ペーシング
を行い、リズムを正常化します。
対象となる不整脈
ICDの主な対象は:
✔ 心室頻拍(VT)
✔ 心室細動(VF)
これらは放置すれば数分で死亡します。
適応となる背景疾患
ICD患者は重症例が多いのが特徴です。
例:
・心筋梗塞後
・拡張型心筋症
・心停止既往
・遺伝性不整脈
→「一度死にかけた人」
→「突然死リスクが極めて高い人」
が対象です。
ペースメーカーとの違い
ICDには:
✔ ペースメーカー機能
✔ 除細動機能
の両方があります。
つまり:
→ ICD = 上位互換ペースメーカー
のような位置づけです。
実務的な意味
ICD留置患者は:
⚠️ かなり重症
⚠️ 予後リスク高
⚠️ 心不全併存多い
と考えるのが基本です。
CRT(心臓再同期療法)とは何か
CRTの本質
CRTとは:
→「心臓の動きをそろえる装置」
です。
不整脈というより:
→心不全治療機器
に近い位置づけです。
なぜ同期が必要か
重症心不全では:
・左右の心室がズレて収縮
・ポンプ効率低下
が起こります。
CRTは:
✔ 両心室を同時刺激
✔ 収縮を同期
させます。
対象となる患者
主に:
・LVEF低下(≤35%)
・左脚ブロック
・重症心不全
が適応です。
CRT-PとCRT-D
CRTには2種類あります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| CRT-P | ペースメーカー型 |
| CRT-D | 除細動器付き |
→ CRT-Dは「CRT+ICD」
です。
実務的な意味
CRT患者は:
→ 重症心不全患者
です。
心不全薬が多剤併用されているケースがほとんどです。
3つの装置を総合比較
目的別比較
| 項目 | ペースメーカー | ICD | CRT |
|---|---|---|---|
| 主目的 | 徐脈防止 | 突然死防止 | 心不全改善 |
| 主対象 | 徐脈 | VT/VF | 同期不全 |
| 重症度 | 比較的軽 | 重い | 重い |
不整脈対応別比較
| 不整脈 | PM | ICD | CRT |
|---|---|---|---|
| 洞不全 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 房室ブロック | ◎ | ◎ | ◎ |
| 心房細動 | △ | △ | △ |
| 心室頻拍 | ✕ | ◎ | △ |
| 心室細動 | ✕ | ◎ | △ |
◎:主対象 △:補助的 ✕:不可
薬物治療との関係
ペースメーカー+薬
徐脈が補正されるため:
✔ β遮断薬
✔ Ca拮抗薬
✔ 抗不整脈薬
が使いやすくなります。
ICD+薬
ICD患者では:
・アミオダロン
・β遮断薬
併用が多いです。
→ ショック回数を減らす目的。
CRT+薬
CRTは心不全治療の一部です。
ほぼ必ず:
・ARNI / ACE阻害薬
・β遮断薬
・MRA
・SGLT2阻害薬
と併用されます。
患者対応で役立つ確認フレーズ
現場でおすすめなのは:
「電気ショックが出る機械ですか?」
これだけで:
・はい → ICD/CRT-D
・いいえ → PM/CRT-P
が判別できます。
まとめ:3つの装置の本質
最後に本質を一言でまとめます。
▶ ペースメーカー
→「遅すぎ防止装置」
▶ ICD
→「突然死防止装置」
▶ CRT
→「心不全改善装置」
結論
心臓に入る機械は、すべて「不整脈のため」ではありません。
・徐脈 → ペースメーカー
・致死性頻脈 → ICD
・重症心不全 → CRT
という明確な役割分担があります。
これを理解しているだけで、患者背景の把握、処方意図の理解、リスク評価の精度は大きく向上します。
まさに、臨床力を底上げする知識といえるでしょう。




