2026年3月15日更新.2,763記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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マクロゴール400とマクロゴール4000の違い

マクロゴール400と4000の違いは?― 分子量で変わる作用・用途・安全性 ―

医薬品の添加物や下剤の成分としてよく目にする「マクロゴール」。
しかし、マクロゴール400とマクロゴール4000は同じ「マクロゴール」でありながら、実際の使われ方や作用は大きく異なります。

・分子量で何が変わるのか?
・なぜ4000は下剤として使われるのか?
・なぜ体内に吸収されないのか?
・腎機能への影響は?
・臨床上の注意点は?

といった観点も含め、勉強していきます。

マクロゴールとは何か?

マクロゴール(Macrogol)は、別名ポリエチレングリコール(PEG)と呼ばれる高分子化合物です。

構造は非常にシンプルで、

HO–(CH₂CH₂O)n–H

という繰り返し構造を持っています。

この「n」の数が増えるほど分子が長くなり、分子量が大きくなります。
つまり、

nが小さい → 分子量が小さい → さらさらの液体

nが大きい → 分子量が大きい → 固体になりやすい

という性質を持ちます。

マクロゴール400とは?

基本情報
・分子量:約400
・常温で:無色透明の液体
・主な用途:溶媒、可溶化剤、軟膏基剤、注射剤添加物

特徴
分子量が小さいため、
・水にも油にもある程度なじむ
・粘性はあるが液体
・薬を溶かす力が強い
という性質があります。

そのため、マクロゴール400は「薬効を出す成分」ではなく、薬を支える成分」として使われることがほとんどです。

たとえば、
・軟膏の基剤
・内服薬の可溶化補助
・注射剤の溶媒
などで使用されます。

マクロゴール4000とは?

基本情報
・分子量:約4000
・常温で:白色粉末(固体)
・主な用途:浸透圧性下剤、基剤

代表的製剤
・モビコール配合内用剤
・モビプレップ

最大の特徴:浸透圧作用
マクロゴール4000は分子が大きく、腸管からほとんど吸収されません。

そのため腸内にとどまり、
・水を引き込む
・便を柔らかくする
・排便を促す
という浸透圧性下剤として働きます。

分子量で何が変わるのか?

① 状態が変わる
・400 → 液体
・4000 → 固体

これは分子間の相互作用の違いによります。
分子が長いほど、互いに絡み合い固体になりやすいのです。

② 体内吸収性が変わる
ここが臨床的に非常に重要です。
・マクロゴール400 → ある程度吸収されうる
・マクロゴール4000 → ほぼ吸収されない

分子量が大きくなると、腸管上皮を通過できなくなります。

一般に、
分子量500を超えると吸収が困難になる
とされており、4000はその8倍です。

③ 薬理作用の有無が変わる
・400 → 薬理作用ほぼなし(添加物)
・4000 → 浸透圧作用あり(治療薬)

つまり、
400は“支える側”、4000は“働く側”

という決定的な違いがあります。

なぜマクロゴール4000は吸収されないのか?

理由は主に3つあります。

① 分子が大きすぎる
腸上皮細胞の隙間(タイトジャンクション)を通れません。

② 脂溶性が低い
細胞膜を通過しにくい。

③ 代謝されない
分解酵素の基質にならない。

そのため、腸内にそのままとどまり、浸透圧だけを発揮して便とともに排出されます。

腎機能への影響は?

ここも重要なポイントです。

一般的な下剤との違い

刺激性下剤:
・電解質異常を起こしうる
・依存の問題あり

マクロゴール4000:
・電解質をほぼ動かさない
・腎臓への負担が少ない

例えば モビコール配合内用剤 は
電解質を含んだ製剤設計になっており、体液バランスが大きく崩れないよう配慮されています。

ただし注意点
・大量使用
・重度腎不全
・心不全患者

では水分バランスへの注意は必要です。

しかし通常量では、腎機能に重大な悪影響を及ぼすことはまれとされています。

なぜ400は下剤にならないのか?

分子量が小さいため、
・腸管から吸収される
・浸透圧効果が弱い
・腸内滞留時間が短い

という理由で、持続的な下剤作用を示しません。

もし400を大量に飲めば下痢は起こりえますが、
それは薬理作用というより「高浸透圧溶液による一時的な水分移動」です。

PEGアレルギーとの関係

近年話題となったのが、ワクチンに含まれるPEGによるアレルギー反応です。

PEGは分子量に関わらず抗原となる可能性があり、

・造影剤
・抗体薬
・mRNAワクチン

などにも使用されています。

ただし、経口マクロゴール4000で重篤なアレルギーが起こるのは非常に稀です。

臨床的まとめ

項目マクロゴール400マクロゴール4000
分子量約400約4000
状態液体固体
吸収一部吸収ほぼ吸収されない
主用途添加物下剤
薬理作用ほぼなし浸透圧作用
腎影響ほぼ問題なし通常量で安全性高い

本質的な違いとは?

最大の違いは、

「分子量が1桁違うことで、物質の役割そのものが変わる」

という点です。

400は溶かすための液体。
4000は腸内にとどまる高分子。

同じマクロゴールでも、
「添加物」と「治療薬」ほどの違いがあります。

まとめ

・マクロゴール400と4000の違いは分子量
・分子量の違いが状態・吸収性・作用を変える
・400は溶媒、4000は浸透圧性下剤
・4000は腸から吸収されず安全性が高い
・腎機能への影響は通常量では少ない

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