2025年9月2日更新.2,612記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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外箱を捨ててはいけない注射剤

注射剤は箱から出して渡しちゃダメ?外箱の役割と注意すべき薬剤一覧

インスリン製剤やインクレチン製剤など、薬局で主に調剤する注射剤のほとんどは外箱を捨てて患者さんに渡すことが多い。
しかし、注射剤の中には「箱から出して渡すと品質や安全性に影響する可能性がある薬剤」も存在します。

箱を捨てた後になって気づいて後の祭りにならないように、特に高額な注射剤では注意して添付文書を確認しましょう。

外箱の役割は「単なる梱包材」ではない

薬の外箱は、単なる輸送用・保管用の梱包材と思われがちですが、実際には品質保持と安全性の確保という重要な役割を持っています。特に注射剤の場合、以下の点で外箱が機能します。

光から薬を守る(遮光)
外箱は遮光性を持たせて作られている場合があります。

光によって薬が分解・変質するのを防ぐ目的です。

特に蛋白質医薬品や一部の抗がん剤は光に弱く、長時間の露光で有効成分が分解される恐れがあります。

衝撃や振動から守る(物理的保護)
注射ペンやシリンジは精密な部品で構成されており、衝撃により内部の針や薬液カートリッジが損傷することがあります。

外箱は輸送や持ち運び中の緩衝材の役割を果たします。

温度変化からの緩和
厳密に温度を一定に保つ機能はありませんが、外箱があることで急激な温度変化が直接製剤に伝わるのをある程度緩和します。

誤使用・誤投与防止
外箱には薬の名称や用量、使用期限、ロット番号が明記されており、識別を容易にします。

特に自己注射製剤では、箱に使用説明書や針などの付属品が同梱されていることが多く、箱から出すと必要部品の欠落や誤使用のリスクが高まります。

添付文書に記載されないケースもある

「箱のまま保管」という文言が添付文書に明記されていない場合もあります。
このため、薬局では外箱捨ててしまうことも珍しくありません。しかし、メーカーのFAQや患者向け資材では「箱のまま保管」を推奨しているケースがあります。

これは、添付文書が法的に必要な最低限の情報にとどまる一方、メーカーは製剤特性や輸送時の安定性試験データを踏まえ、より慎重な保管方法を案内しているためです。

また、「外箱に入れて保管」の文言は、「貯法」ではなく、「取扱い上の注意」に記載されている。

▶外箱に入れたまま保管する注射剤一覧

医薬品名添付文書の記載
アイモビーグ皮下注ペン遮光を保つため、本剤は外箱に入れた状態で保存すること。外箱開封後は遮光して保存すること。
アクテムラ皮下注シリンジ
/オートインジェクター
患者が家庭で保存する場合は、本剤は外箱に入れた状態で、凍結を避け、冷蔵庫内で保存すること。
アドトラーザ皮下注gシリンジ投与30分前を目安に冷蔵庫から取り出し、外箱から出さずに、室温に戻しておくこと。
アドトラーザ皮下注ペン投与45分前を目安に冷蔵庫から取り出し、外箱から出さずに、室温に戻しておくこと。
イブグリース皮下注オートインジェクター
/シリンジ
本剤は遮光保存する必要があるため、本剤を使用するまでは外箱に入れて保管すること。
イベニティ皮下注シリンジ投与前30分程度、遮光した状態(外箱に入れた状態)で室温に戻してから投与すること。
エンスプリング皮下注シリンジ患者が家庭で保存する場合は、本剤は外箱に入れた状態で、凍結を避け、冷蔵庫内で保管すること。
エンタイビオ皮下注ペン
/シリンジ
患者が家庭で保存する場合は、本剤を外箱に入れた状態で、凍結を避け、冷蔵庫内で保存すること。
エンブレル皮下注シリンジ
/皮下注ペン
光曝露を避けるため、本剤は外箱に入れて保存すること。
また、外箱開封後も光を遮り保存すること。凍結を避けること。
ケシンプタ皮下注ペン患者が家庭で保存する場合は、本剤は外箱に入れた状態で、冷蔵庫内で保存すること。
シュンレンカ皮下注本剤は遮光する必要があるため、使用直前まで外箱に入れて保存すること。
ジルビスク皮下注シリンジ本剤は外箱にいれた状態で遮光保存すること。
ジーラスタ皮下注ボディーポッド使用する30分前にデバイスを冷蔵庫から取り出し、外箱に入れたままの状態で室温に戻すこと。
スキリージ皮下注オートドーザー外箱のまま、投与45~90分前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、室温で静置すること。
ゾレア皮下注シリンジ/ペン投与する約30分前に冷蔵庫から取り出し、外箱に入れたまま室温(25℃以下)に戻すこと。
タクザイロ皮下注シリンジ本剤は遮光する必要があるため、外箱に入れて保存すること。
テゼスパイア皮下注シリンジ/ペン投与60分前に冷蔵庫から取り出し、本剤を外箱に入れたままの状態で室温(25℃以下)に戻しておくことが望ましい。
デュピクセント皮下注ペン
/シリンジ
冷蔵庫から取り出した後は、外箱に入れたまま25℃以下で保存し、14日以内に使用すること。
外箱開封後は遮光して保存すること。
トルツ皮下注オートインジェクター光の影響を防ぐために、本剤は外箱に入れた状態で遮光保存すること。
ナノゾラ皮下注シリンジ/オートインジェクター本剤は外箱に入れて保管すること。外箱開封後は遮光して保管すること。
ヌーカラ皮下注ペン/シリンジ凍結を避けて保存すること。冷蔵庫から取り出した場合は、室温(30℃以下)で外箱に入れたまま保存し、7日以内に使用すること。また、外箱開封後は遮光して保存すること。
ヒムペブジ皮下注ペン冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、外箱に入れたまま15~30分間かけて室温(30℃以下)に戻しておくこと。
ビンゼレックス皮下注シリンジ/オートインジェクター本剤は外箱にいれた状態で遮光保存すること。
ファセンラ皮下注シリンジ/ペン投与30分前に冷蔵庫から取り出し、本剤を外箱に入れたままの状態で室温に戻しておくことが望ましい。
ミチーガ皮下注用シリンジ患者が家庭で保管する場合は、光曝露を避けるため外箱に入れたまま保存するよう指導すること。
レパーサ皮下注ペン/オートミニドーザー本剤は外箱に入れた状態で保存すること。外箱開封後は遮光して保存すること。
ロゼバラミン筋注用光の影響を防ぐために、薬剤バイアルは外箱に入れ遮光した状態で保管すること。

まとめ

・注射剤の外箱は、光・衝撃・温度変化・付属品管理など多くの役割を担っている。
・「箱のまま保管」指示は添付文書に必ずしも記載されず、メーカーのWebサイトやFAQに掲載されることもある。
・光や衝撃に弱い製剤、高額なバイオ医薬品、精密機器を含む自己注射ペンなどは特に注意。
・現場では患者の利便性と品質保持のバランスをとりながら対応が必要。

1 件のコメント

  • 田中大智 のコメント
         

    なぜ薬の箱に入っているのか?

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