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果物は血糖値を上げにくい?
公開. 更新. 投稿者: 137 ビュー. カテゴリ:糖尿病.この記事は約4分2秒で読めます.
目次
果糖は血糖値を上げにくい?

「果物は血糖値を上げにくいと聞きました」
「果糖は血糖値を上げないから安心ですよね?」
調剤室や服薬指導の場面で、こうした質問を受けた経験がある薬剤師は少なくないでしょう。
一見すると、果物や果糖は「血糖値にやさしい糖質」のように扱われがちです。
しかし、
果物は本当に血糖値を上げにくいのか?
果糖は血糖値を上げにくいから安全なのか?
・果糖とは何か
・果糖が「血糖値を上げにくい」と言われる理由
・果糖と果物を同一視してよいのか
・血糖値は上げなくても起こりうる代謝上の問題
・薬剤師としてどのように説明すべきか
を、勉強していきます。
まず結論を整理する
最初に、結論をシンプルにまとめます。
・果糖は、単独では血糖値を上げにくい糖である → 事実
・果物は、血糖値を上げにくい「場合が多い」 → 条件付きで事実
・「血糖値を上げにくい=代謝的に安全」ではない → 重要
この3点を区別できるかどうかが、
果糖・果物を正しく理解するカギになります。
果糖(フルクトース)とは何か
果糖(フルクトース)は、単糖類の一種です。
・ブドウ糖(グルコース)
・果糖(フルクトース)
・ガラクトース
と並ぶ、基本的な単糖のひとつで、
果物やはちみつ、砂糖(ショ糖)に多く含まれています。
果糖はなぜ「血糖値を上げにくい」と言われるのか
① GI(血糖上昇指数)が低い
果糖のGI値は、文献によって多少差はありますが、
・おおむね15〜25前後
とされており、
・ブドウ糖:GI=100
・白米:GI=70前後
と比べると、明らかに低い値です。
この数値だけを見ると、
「果糖=血糖値にやさしい糖」
と理解されやすくなります。
② インスリン分泌をほとんど刺激しない
ブドウ糖は、
・血中濃度が上昇
・膵β細胞が感知
・インスリン分泌
という流れで血糖調節が行われます。
一方、果糖は、
・膵β細胞を直接刺激しにくい
・血中ブドウ糖として現れにくい
という特徴があり、
インスリン分泌をほとんど促しません。
③ 代謝の主戦場が「肝臓」
果糖は、吸収後、
・筋肉
・脂肪組織
ではほとんど利用されず、
優先的に肝臓へ運ばれて代謝されます。
この点が、果糖の代謝を「特殊」に見せている最大の理由です。
果糖の代謝は「血糖値に出にくい」だけ
肝臓に入った果糖は、次のような経路をたどります。
・肝グリコーゲン合成
・乳酸産生
・脂肪酸合成(de novo lipogenesis)
重要なのは、
果糖は血糖値を上げにくいが、代謝されないわけではない
という点です。
血糖として現れない代わりに、
脂質代謝側に流れやすいという特徴を持っています。
血糖値が上がらない=安全、ではない理由
① 中性脂肪が増えやすい
果糖の過剰摂取では、
・肝臓での脂肪酸合成↑
・VLDL産生↑
・中性脂肪↑
という流れが起こりやすくなります。
血糖値は安定していても、
脂質代謝が悪化する可能性がある点は重要です。
② 脂肪肝(NAFLD)のリスク
果糖は、アルコールと同様に、
肝臓に負担を集中させる糖質
と表現されることがあります。
特に、
・果糖ブドウ糖液糖
・清涼飲料水
・加工食品由来の果糖
は、短時間に大量摂取されやすいため、
脂肪肝リスクとの関連が指摘されています。
では「果物」はどう考えるべきか
ここが、果糖の話と最も混同されやすいポイントです。
果物 ≠ 果糖単体
果物には、果糖だけでなく、
・食物繊維
・水分
・ビタミン
・ポリフェノール
などが含まれています。
この「セット効果」が、
果物の血糖影響を大きく変えています。
果物が血糖値を上げにくい理由
① 食物繊維が吸収を緩やかにする
・胃排出速度の低下
・糖吸収の遅延
② 咀嚼が必要
・摂取スピードが遅い
・過剰摂取になりにくい
③ 果糖量が限定的
・通常の摂取量では果糖過剰になりにくい
このため、
果物は「血糖値を急上昇させにくい食品」であることが多い
という評価になります。
ただし「果物なら無制限」は誤り
ここも薬剤師として強調したい点です。
・果物は糖質を含む
・食べ過ぎれば血糖値は上がる
・ジュース・スムージーは別物
特に、
・果汁100%ジュース
・スムージー
は、
・食物繊維が破壊され
・摂取スピードが速く
・果糖量が増えやすい
という点で、
「果物」とは代謝的に異なると説明すべきです。
糖尿病患者への説明で注意すべきポイント
よくある誤解①
❌「果糖は血糖値を上げないから安心」
⭕「血糖値は上げにくいですが、
摂りすぎると中性脂肪が増えやすい糖です」
よくある誤解②
❌「果物はいくら食べても大丈夫」
⭕「量と食べ方が大切です」
薬剤師向け:一言で整理するなら
果糖
→「血糖値には出にくいが、肝臓で脂肪になりやすい糖」
果物
→「血糖値を急に上げにくいが、糖質であることに変わりはない食品」
「血糖値だけ」で食品を評価する危うさ
GI値や血糖値は、
代謝の一側面にすぎません。
・血糖
・脂質
・肝機能
・インスリン抵抗性
これらを総合的に見る視点が、
これからの栄養指導・服薬指導では重要になります。
まとめ
・果糖は単独では血糖値を上げにくい
・しかし脂質代謝・肝臓への影響には注意が必要
・果物は果糖単体とは別物
・「血糖値に出にくい=健康」ではない
・薬剤師の説明次第で、誤解も安心も生まれる




