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重ねて塗ってはいけない塗り薬?
公開. 更新. 投稿者: 50 ビュー. カテゴリ:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約7分57秒で読めます.
目次
重ね塗りで黄色くなる?

ニキビ治療では、外用薬を複数組み合わせる場面が少なくありません。抗菌薬、角化抑制薬、過酸化ベンゾイル(BPO)製剤などを、患者さんの皮疹タイプや刺激症状に合わせて使い分けていきます。ところが、「同じ部位に重ねて塗ったら黄色くなった」「服に色がついた気がする」といった、見た目の変化(変色)が話題になる組み合わせがあります。
この“変色”は、効き目そのものの議論とは別に、患者さんの不安や自己判断による中止につながりやすいポイントです。特に、添付文書で明示的に注意されている組み合わせは、現場でも知っておくと対応がスムーズになります。
・ゼビアックスローションと過酸化ベンゾイル製剤の重ね塗りによる黄変
・デュアック配合ゲルと外用スルホンアミド製剤の重ね塗りによる黄〜橙色変色
について、何が起こり得るのか、どう説明し、どう使い分ければよいかを整理します。
そもそも「変色」って何が問題?
「黄色くなった」「オレンジっぽくなった」という変化は、患者さんの目には強く残ります。薬の副作用としての発疹・刺激ではなくても、見た目の変化だけで「肌が悪化したのでは」「危険な反応では」と感じ、自己中断が起こることがあります。
さらに厄介なのが、変色が皮膚だけでなく衣服や寝具、タオルなどに及び得る点です。ニキビ外用薬は顔だけでなく胸背部に使うこともあるため、衣類への影響は生活上のストレスになりがちです。
したがって、変色自体が重篤な皮膚障害を直接意味しなくても、治療継続の妨げになる可能性があります。だからこそ、添付文書で注意されている内容は、事前に説明しておく価値があります。
ゼビアックスローション:過酸化ベンゾイル製剤との重ね塗りで「黄色に変色」
添付文書が言っていること(ポイント)
ゼビアックスローション(一般名:オゼノキサシン)の添付文書には、適用上の注意として、過酸化ベンゾイル製剤との重ね塗りで黄色に変色し得ること、そして皮膚や衣服等への着色に注意することが記載されています。
ここで重要なのは、「併用が禁忌」と書かれているわけではなく、“重ねて塗布すると変色することがある”という、使用方法に関する注意である点です。つまり、処方として同日に併用すること自体よりも、同一部位・同タイミングで薬剤が直接混ざる状況が問題になりやすい、と読み取れます。
どうして黄色くなるのか(考え方)
添付文書の表現は「黄色に変色することがある」という事実ベースです。一般論として、過酸化ベンゾイル(BPO)は酸化作用を持つ成分であり、他の物質を酸化させたり、色調変化を起こすことがあります。
ゼビアックス側が色変化を起こし得るのは、薬剤成分や添加物がBPOの作用の影響を受ける、あるいは基剤同士が混ざって光学的な見え方が変わるなど、複数の可能性が考えられます(ただし、ここは添付文書が機序を断定しているわけではないため、“可能性”として整理するのが安全です)。
大切なのは、患者さんに対して「黄色くなることがあるのは、薬が悪くなった/肌が腐った、という話ではない」と安心材料を示しつつ、実害として起こり得る着色に注意を促すことです。
現場での使い方:どう避ける?
添付文書上の注意点は「重ねて塗布すると黄色に変色」なので、対策はシンプルです。
・同一部位に同時刻で重ねない
・時間をずらす(朝と夜で分ける等)
・塗布後はよく乾かしてから衣類・寝具に触れる
・背中など衣類が当たりやすい部位では、白い衣類は避ける/黒や色物にするなど、生活上の工夫も有効
処方が「どちらも使う」設計でも、使い方の指導でトラブルは減らせます。患者さんが“混ぜて塗る”“二度塗りで効かせたい”と考えるケースもあるため、混ぜ塗りはしないことを一言添えるだけでも、説明の質が上がります。
デュアック配合ゲル:外用スルホンアミド製剤との重ね塗りで「黄色または橙色」の一過性変色
添付文書が言っていること(ポイント)
デュアック配合ゲル(クリンダマイシン+過酸化ベンゾイルの配合剤)の添付文書では、相互作用(併用注意)の項に、外用スルホンアミド製剤(例:スルファジアジン、スルフィソミジン等)を同一部位に重ねて塗布した場合、皮膚および顔毛に一過性の変色(黄色または橙色)を呈する可能性がある、と記載されています。
さらに、機序は不明としつつも、「過酸化ベンゾイルによる反応と考えられる」という趣旨の記載が示されます。
ここでの重要点は3つです。
・相互作用欄(併用注意)に明記されている
・変色部位が「皮膚」だけでなく顔毛にも及び得る
・変色は一過性(ずっと残る前提ではない)とされている
「顔毛」の記載は、特に男性患者や産毛を気にする患者さんには説明価値が高いポイントです。患者さんが先に気づくと不安になりやすいため、「起こり得ること」と「一過性であること」をセットで伝えると落ち着いてもらいやすいです。
そもそも「外用スルホンアミド製剤」って、どういう場面で出てくる?
ここでいう外用スルホンアミド製剤は、創傷・熱傷などで用いられることがある薬剤群が例示されています(具体例としてスルファジアジン銀:ゲーベンクリーム)。
ニキビ治療の文脈だけで見ると「そんな薬、普段一緒に使わないのでは?」と感じるかもしれません。しかし患者さんは、皮膚科の薬だけでなく、他科や救急、あるいは以前の処方を自己判断で併用することがあります。
だからこそ、“いつものニキビ薬同士”だけの注意ではなく、別の理由で塗っている外用薬との重なりも想定しておくと安全です。
ゲーベンクリームの添付文書には、「他剤と混合して使用しないこと。」という記載はあります。しかし「重ね塗り」に関する記載は無いので、重ねて塗ってしまう可能性はあります。
なぜ黄色〜橙色?(添付文書の範囲での説明)
デュアックはBPOを含むため、添付文書の通り、変色はBPOによる反応が関与している可能性が示唆されています。
ただし「機序は不明」ともされているため、患者説明では断定を避け、「薬の成分同士が反応して色が変わることがある」程度に留めるのが無難です。
ポイントは、“危険なアレルギー反応”のように誤解されない言い方です。変色そのものより、「重ね塗りを避ける」「もし起きたらどうするか」を具体化する方が安心につながります。
現場での使い方:どう避ける?
添付文書の条件は「同一部位に重ねて塗布」。対策はゼビアックスのケースと同様に、同じ場所に同時に塗らないことが中心です。
・併用が必要なら、時間帯を分ける(例:片方は朝、片方は夜)
・どうしても同じ時間帯に使う必要があるなら、片方が乾いてから/洗浄後になど、薬剤同士が混ざらない工夫
・顔毛への変色が気になる場合は、塗布量を薄く、毛の生え際を避ける、乾燥を待つなども現実的
また、変色が「一過性」とされている点は、患者さんへの安心材料になります。
「もし色がついても、慌ててこすらない」「刺激がなければ経過を見る」「不安なら受診・相談」という流れをあらかじめ伝えると、自己中断を減らせます。
患者説明に使える、短い言い回し例
ゼビアックスローションの説明例
「これ、過酸化ベンゾイル系(ベピオなど)と同じ場所に重ねると黄色くなることがあります。薬が危険というより、成分の関係で色が変わることがあるので、重ね塗りは避けて、時間を分けて使いましょう。」
「服や枕に色がつくことがあるので、塗ったらよく乾かしてください。」
デュアック配合ゲルの説明例
「デュアックは、ある種の外用薬(スルホンアミド系)と同じ場所に重ねると、黄色〜橙色に一時的に変色することがあります。同じ部位に重ねないのがコツです。」
「顔毛に色がつくことがあるので、塗った後は乾かして、必要なら塗る範囲を調整しましょう。」
よくあるQ&A
Q1. 黄色くなったら、薬が使えなくなった(効果が落ちた)という意味?
添付文書で注意されているのは主に変色と着色であり、少なくとも記載上は「薬効が落ちる」と断定して注意しているわけではありません。
ただし、見た目の変化が気になって厚塗りや擦り取りをしてしまうと刺激につながることがあるため、まずは重ね塗りを避ける使い方に戻すのが現実的です。
Q2. 変色したらすぐ洗い流すべき?
刺激や違和感が強い場合は洗浄を検討しますが、変色だけで慌てて強くこするのは避けたいところです。添付文書の注意点は「重ね塗りで変色の可能性」なので、次回からの使い方を調整し、必要に応じて医療者へ相談するのが安全です。
Q3. どうしても同じ場所に両方必要なときは?
原則は「同一部位への重ね塗りを避ける」なので、時間帯を分けるのが第一選択です。
具体的なスケジュールは皮膚状態や刺激症状で変わるため、医師・薬剤師の指示に沿って調整します。
まとめ
・ゼビアックスローション:過酸化ベンゾイル製剤と重ね塗りで黄色に変色し、皮膚や衣服等への着色に注意。
・デュアック配合ゲル:外用スルホンアミド製剤と同一部位に重ね塗りで黄色または橙色の一過性変色(皮膚・顔毛)を呈する可能性。
対策はどちらも共通で、「同一部位に重ねない」「時間をずらす」「乾かしてから衣類・寝具へ」。
この一言を事前に伝えるだけで、患者さんの不安や自己中断をかなり減らせます。
デュアック配合ゲルの添付文書には以下のような注意も記載されています。
「過酸化ベンゾイルとトレチノインを混合すると、トレチノインが分解されるとの報告があるため、本剤とトレチノインを同一部位に塗布した場合、トレチノインの効果が減弱する可能性がある。」
過酸化ベンゾイルは、変色だけでなく薬効にも影響を及ぼす可能性があるので、極力他薬との重ね塗りは避けるように指導した方が良いのだろう。




