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ニキビ治療薬の処方日数制限
公開. 更新. 投稿者:皮膚感染症/水虫/ヘルペス.この記事は約2分26秒で読めます.
125 ビュー. カテゴリ:ニキビ治療薬の処方日数

ニキビが気になる時期というのは、多くの人にとって思春期の象徴でもあります。中高年の薬剤師の皆さんの中にも、学生時代に鏡とにらめっこしながら、ビフナイトやクレアラシルを顔に塗りたくった思い出がある方も多いのではないでしょうか。私も当時は、むしろニキビそのものよりも塗り薬の白さが目立ってしまい、恥ずかしい思いをした記憶があります。
ただ、当時は皮膚科を受診するという選択肢自体があまり一般的ではなく、自己流ケアが主流でした。しかし今の時代、ネットで調べれば情報は山ほど出てきますし、「皮膚科に行きたい」と親に相談して処方薬を求める中高生も珍しくありません。
分類 | 商品名 | 一般名 |
---|---|---|
抗菌薬(リンコマイシン系) | ダラシンT | クリンダマイシンリン酸エステル |
抗菌薬(ニューキノロン系) | アクアチム | ナジフロキサシン |
抗菌薬(キノロン系) | ゼビアックス | オゼノキサシン |
レチノイド | ディフェリン | アダパレン |
酸化剤 | ベピオゲル | 過酸化ベンゾイル |
レチノイド+抗菌薬 | エピデュオ | アダパレン+過酸化ベンゾイル |
抗菌薬合剤 | デュアック | クリンダマイシンリン酸エステル+過酸化ベンゾイル |
ニキビ治療の外用薬にはさまざまな種類があり、目的や重症度に応じて選ばれます。特に、近年はディフェリンゲル(アダパレン)やベピオゲル(過酸化ベンゾイル)などの、いわゆる「コメド対策薬」や抗菌成分の入ったダラシンTゲルやアクアチムクリームといった外用抗菌薬が中心となっています。
抗菌薬は、内服薬にしろ外用薬にしろ耐性菌の問題があるので、長期間の使用は避けるべきである。そのため、ダラシンやアクアチムなどの抗菌外用薬は「4週間で効果が認められなければ使用を中止すること」となっている。
商品名 | 投与期間の制限 |
---|---|
ダラシンT | 本剤の使用にあたっては、4週間で効果が認められない場合には使用を中止すること。 |
アクアチムクリーム・ローション | 4週間で効果の認められない場合は使用を中止すること。 |
ゼビアックス | 4週間で効果が認められない場合は使用を中止すること。 |
ディフェリン | 治療開始3ヵ月以内に症状の改善が認められない場合には使用を中止すること。 |
ベピオゲル | なし |
エピデュオ | 治療開始3ヵ月以内に症状の改善が認められない場合には使用を中止すること。 |
デュアック | 本剤の使用にあたっては、12週間で効果が認められない場合には使用を中止すること。 |
一方で、ベピオゲルやエピデュオゲルのような過酸化ベンゾイル(BPO)を含む薬剤は、酸化作用によりアクネ菌を物理的に破壊するため、耐性菌のリスクが低く、長期使用に対する日数制限は設けられていません。
興味深いのは、デュアック配合ゲル(クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル)だけは、抗菌薬成分を含んでいるにもかかわらず12週間(約3カ月)まで使用可能とされています。これは、BPOとの併用によって耐性菌のリスクが相対的に低下していること、さらに臨床試験データが12週間で取得されていることが根拠となっています。
皮膚科の門前薬局であれば、これらの外用薬の処方も日常的に取り扱う機会があるかもしれませんが、そうでない一般的な調剤薬局では、たまに処方が流れてきて在庫を揃えたのに、1~2回処方されたきりで治療が終わってしまい、そのままデッドストックというケースも珍しくないでしょう。
ニキビは「慢性疾患」のように長く付き合うこともありますが、多くの外用抗菌薬は「治る病気に使う薬」であり、使わなくなることがゴールです。つまり、ある日「もう使わなくてよくなった」というのは、薬が不要になったというより、「治って卒業できた」というポジティブな結果です。
薬剤師としては、処方された薬剤の日数制限や治療目標を踏まえて服薬指導を行うことが求められます。とくに、「効果が出なければ漫然と使い続けるのではなく再受診を」という指導や、「処方日数を超えて使い続けないように」という注意喚起は非常に重要です。
また、保管方法にも注意が必要です。過酸化ベンゾイル配合製剤は安定性にやや難があり、開封後は冷暗所保存・早期使用が推奨されていることも見逃せません。
ニキビ治療は薬を塗るだけではなく、生活習慣の見直しやスキンケアの指導といったトータルなアプローチが欠かせません。だからこそ、薬剤師としての視点で「どう使うか」「いつまで使うか」「どう変化があれば医師に相談すべきか」を伝えることが、治療の成功と再発予防につながるのです。