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サメ肌の正体は毛孔性苔癬?
公開. 更新. 投稿者:皮膚科.この記事は約4分42秒で読めます.
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サメ肌と毛孔性苔癬

「二の腕や太ももがざらざらする」「なんだか肌がぶつぶつしている」。
そんなお悩みを持って皮膚科を受診すると、『毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)』という診断を受けることがあります。
この毛孔性苔癬、いわゆる「サメ肌」や「二の腕ぶつぶつ」とも呼ばれ、女性を中心に思春期から目立ちやすくなる皮膚の状態です。
毛孔性苔癬とは?
毛孔性苔癬とは、毛穴に一致した小さなぶつぶつ(角化性丘疹)が多数できる皮膚の病変です。皮膚表面がザラザラとしており、見た目には鳥肌やサメ肌のようにも見えるため、俗に「サメ肌」とも呼ばれます。
主に次のような特徴があります:
・発症年齢:思春期に多く、10代~20代に目立つ
・好発部位:二の腕、太もも、背中、臀部など
・性別傾向:女性に多い(ホルモンバランスとの関連?)
・症状:毛穴に一致した小さな赤いまたは白っぽいぶつぶつ、乾燥、ザラザラした肌触り
・自然経過:加齢とともに軽快し、30代~50代には目立たなくなることが多い
健康に深刻な影響を及ぼすことはない良性の疾患ですが、見た目の問題から美容的な悩みとして訴える人は多く、とくに肌の露出が増える季節には気になる方も多いはずです。
なぜ起こるの?毛孔性苔癬の原因
毛孔性苔癬の原因は完全には解明されていませんが、毛穴に古い角質(ケラチン)が詰まることによる“毛孔の角化異常”が中心と考えられています。
角質がうまくはがれ落ちずに毛穴に詰まり、それが盛り上がってブツブツした見た目になるのです。
また、以下のような因子が関係していると考えられています。
・遺伝的素因(家族に同様の症状をもつ人が多い)
・乾燥肌やアトピー素因のある人に多い
・ホルモン変化(思春期や妊娠など)
治療は必要?そのまま放っておいても大丈夫?
毛孔性苔癬はあくまで良性の皮膚疾患であり、必ずしも治療が必要というわけではありません。
実際、多くの人は30代から50代にかけて自然に症状が改善する傾向があります。
しかしながら、以下のような理由で治療を希望する方も多く見られます:
・見た目の悩み(特に夏場に肌を露出する機会が増える)
・触った感触が気になる(ザラザラ・ごわごわ)
・化粧のりが悪い(顔に出る場合)
・子どもや思春期の本人がコンプレックスに感じている
そのため、「生活に支障はないけど美容的に気になる」という声に応える形で、対症療法を中心にした治療が行われています。
毛孔性苔癬の治療法まとめ
① 角質溶解剤(ケラチン除去)
毛穴に詰まった角質を溶かす目的で使われる塗り薬です。
・サリチル酸[サリチル酸ワセリン]:角質溶解作用が強いが、刺激も強め
・尿素(10~20%)[ウレパール、ケラチナミン]:保湿+角質軟化作用
・AHA(フルーツ酸)[一部化粧品・クリーム]:マイルドな角質ケアに使われる
サリチル酸や尿素は市販薬でも手に入りますが、刺激が強くかぶれや赤みを起こすことがあるため、使用前に必ずパッチテストを行うのが望ましいです。
② 保湿剤の使用(角質の柔軟化)
乾燥があると症状が悪化するため、保湿は基本中の基本です。
・ヘパリン類似物質[ヒルドイド]:保湿・血流改善効果あり
・グリセリン[多くの市販保湿剤]:安価で刺激が少ない
お風呂あがりすぐに塗ると効果的です。長期間の継続が大切です。
③ ラップ療法(ラップパック)
保湿剤や角質溶解剤を塗った後に、食品用ラップフィルムで覆って寝るという方法もあります。湿潤環境を保つことで薬剤の浸透を高め、翌朝にぬるま湯とスポンジで軽くこすると角質が落ちやすくなります。
ただし、かぶれや湿疹がある場合は中止しましょう。
④ 民間療法:塩もみやスクラブ
粗塩やスクラブで肌表面をこする方法は一部で行われていますが、炎症を悪化させるリスクが高いため医療者としては推奨されません。
使用する場合も、週1回程度・優しく行う・保湿を徹底するなど、注意が必要です。
患者指導の注意点とよくある誤解
「すぐにツルツルにはなりません」
毛孔性苔癬は即効性のある治療が難しい皮膚疾患です。角質のターンオーバーには時間がかかるため、最低でも2〜3ヶ月以上の継続治療が必要です。
「治らないわけではないが、“完治”はしづらい」
対症療法で目立たなくすることは可能ですが、「完全になくなる」ことを期待しすぎないように説明しましょう。
「触りすぎ・こすりすぎは悪化要因」
気になって触ったり、スクラブを使いすぎたりすると、かえって炎症や色素沈着を引き起こすことがあります。
まとめ:毛孔性苔癬は肌の個性。焦らず、丁寧にケアを
・毛孔性苔癬(サメ肌)は思春期から見られる良性皮膚疾患
・健康上の問題はないが、美容的に悩む人は多い
・治療は主に角質除去+保湿の継続が中心
・自然に目立たなくなるケースもある
・焦らず気長に、スキンケア感覚で治療に取り組むことが大切
「そのうち治る」と言われても、いまこの瞬間の肌に悩んでいる人は多いはず。
薬剤師や医療者としては、“治らないもの”ではなく“コントロールできるもの”として、安心感を与えられる対応を心がけたいですね。