2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ミグリトールとボグリボースとアカルボースの違いは?

αグルコシダーゼ阻害薬の酵素選択性

αグルコシダーゼ阻害薬のうちベイスン(ボグリボース)、グルコバイ(アカルボース)は、それ自体は体内に吸収されずに、腸内でαグルコシダーゼを阻害して作用を発揮します。
しかし、セイブル(ミグリトール)だけは体内に吸収されます。

セイブル(ミグリトール)は経口吸収されますが、グルコバイ(アカルポース)とベイスン(ポグリポース)は体内に吸収されませんので、重篤な副作用はみられません。

しかし、摂取した食品の糖質がこれらの阻害薬により単糖類にまで分解されないことにより、大腸に送出された未消化体が腸内細菌の増殖を促し、多くの場合、腹部膨満、鼓腸、下痢等の消化器症状を引き起こします。
これらの消化器症状は服用量を減らすことで軽減されます。

3薬のうち、ベイスンは消化器症状が比較的軽い傾向が報告されていますが、この理由として阻害薬の酵素選択性が推定されます。
グルコバイはα-グルコシダーゼのみならず、α-アミラーゼに対しても阻害活性を示すのに対し、ベイスン、セイブルはα-アミラーゼに対しては阻害活性を有しません。

アミラーゼは、デンプンなどの多糖類を少糖類にまで分解する酵素。
α-グルコシダーゼは、少糖類を単糖類にまで分解する酵素。

したがって、ベイスンはグルコバイに比較して未消化体の糖質が少なく、消化器症状も比較的軽減されることが考えられます。

セイブルの作用機序

食物として摂取された炭水化物が体内に吸収され血中へ移行するには、最終的に二糖類水解酵素(α-グルコシダーゼ)により単糖類にまで消化されることが必要です。

ミグリトール(セイブル)は小腸上部の粘膜上皮細胞の刷子縁に存在する二糖類水解酵素を競合的に阻害することにより、糖質の消化・吸収を遅延させ、食後血糖の上昇を抑制します。

さらにミグリトールは小腸上部でα-グルコシダーゼ阻害作用を発揮しながら、本剤自体が吸収され小腸下部へ移行する薬物量が少なくなります。

その結果、小腸下部におけるミグリトールのα-グルコシダーゼ阻害作用は減弱し、未消化の糖質が徐々に消化・吸収されていきます。

セイブルはおならが少ない?

αグルコシダーゼ阻害薬の副作用である「放屁」、「おなら」というのは、未消化の糖類が大腸まで到達し腸内細菌で発酵されることによってガスが発生するために起こるものです。

女性の場合は特に、放屁によりアドヒアランスの低下が問題となる場合がある。
通常は1~2か月で改善または消失することが多い。

つまり、小腸下部で糖質が吸収されるセイブルは、大腸まで到達する未消化の糖質が少なく、ガスの発生も少ないと。理論上は。

でも、セイブルでもおなら気になる人多いです。
糖質の吸収を妨げる力が強いほど、腹部症状は気になる。

セイブルは下痢が多い

αグルコシダーゼ阻害薬の中で、セイブル(ミグリトール)には「下痢」の副作用が多いという。

セイブルの下痢の頻度は、5%以上となっている。
しかし、ベイスンも5%以上だった。
ただし、グルコバイは0.1~5%未満とやや少なめ。

セイブルの下痢の副作用の発現頻度は、国内臨床試験(効能追加時)において、単剤またはSU薬との併用で14.6%、平均18.3%と、他のαGI製剤と比べて下痢をはじめとする消化器症状が多かった。

原因としては、セイブルが他のαGI製剤は阻害しないラクターゼを阻害するために、大腸まで達した乳糖が腸内の浸透圧を上昇させ、浸透圧性の下痢を起こすことなどが考えられる。

乳糖を腸内細菌が分解して腸内のpHが酸性に傾いた結果、腸の蠕動運動を促進するとの説もある。

この他、スクロース(ショ糖)を多く摂取すると浸透圧性の下痢を起こす可能性なども考えられている。セイブルはスクラーゼ阻害作用がグルコバイより強く、ベイスンとは同程度とされている。

糖類分解酵素

糖質を吸収するためには、多糖類(デンプン)を二糖類(マルトース、イソマルトース、スクロースなど)、単糖類(グルコース、フルクトース)に分解する必要がある。
この分解に関与する、糖質のαグリコシド結合を加水分解する酵素を総称して、αグルコシダーゼと呼ぶ。マルターゼ、イソマルターゼ、スクラーゼなどがあり、小腸粘膜上皮細胞表面の刷子縁に存在する。

αグルコシダーゼ阻害薬は、糖質または糖質に類似した構造を持ち、αグルコシダーゼに結合して競合的阻害作用を示す。
小腸内でαグルコシダーゼの活性を阻害し、多糖類などがグルコースに分解されるのを阻害して糖質の吸収を遅らせ、食後血糖値の上昇を抑制する。

グルコバイ(アカルボース)はαグルコシダーゼに加えて膵αアミラーゼも阻害する。

ベイスン(ボグリボース)とセイブル(ミグリトール)は、マルターゼ、イソマルターゼ、スクラーゼ阻害作用をそれぞれ有する。
さらにセイブルは、ラクトース(乳糖)をグルコースとガラクトースに分解するラクターゼ、トレハロースをグルコースに分解するトレハラーゼを阻害する作用も有する点が特徴である。

αGIの消化器症状はそのうち慣れる?

通常、炭水化物の消化吸収は小腸上部でほぼ100%されてしまうので、αグルコシダーゼの発現は小腸上部に限られています。

そのため、αGIを投与して小腸上部で二糖類の吸収を阻害すると、小腸中・下部ではこれらの糖類は吸収されず、特有の消化器症状を引き起こします。

しかし、しばらくαGIの投与を続けると、小腸上部で吸収されなかった二糖類がαグルコシダーゼを小腸中・下部に誘導し、全小腸を使ってゆっくりと炭水化物を吸収するようになります。
平均して12.8日で症状が消失したとの報告もあるので、2週間程度は様子をみてもらいます。

ジゴキシンとグルコバイの相互作用

ジゴキシンとグルコバイの併用は添付文書上、併用注意となっている。

グルコバイの処方は、ベイスンやセイブルと比べると処方頻度は少なく、問題となることは少なさそうではあるが、それゆえに気づかないことがあるので注意が必要である。

ジゴキシンとグルコバイを併用すると、ジゴキシンの血中濃度が低下します。
この相互作用の機序は完全には解明されていませんが、グルコバイ(アカルボース)が消化管運動を亢進させるため、消化管におけるジゴキシンの吸収が阻害されるという説が有力です。

ミグリトール(セイブル)も、ジゴキシンは併用注意の薬剤で、添付文書に「ジゴキシンの血漿中濃度が低下することがある」との記載があるが、ボグリボース(ベイスン)は併用注意ではありません。ボグリボースはアカルボースと異なりαアミラーゼの阻害作用を持たず、消化管運動の亢進作用も弱いからです。

ジゴキシンとアカルボースを併用している場合には、その相互作用を考慮して、アカルボースの投与を中止するか、ジゴキシンの体内動態に影響を与えないボグリボースに変更するといった対応も考えられる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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