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モニラックとポルトラックの違いは?
公開. 更新. 投稿者:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約3分10秒で読めます.
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ラクツロースとラクチトール

モニラック(ラクツロース)とポルトラック(ラクチトール)はどちらも高アンモニア血症の治療薬として使用されますが、それぞれ異なる特徴があります。両薬剤の違いを勉強していきます。
モニラック(ラクツロース)とは?
モニラックの有効成分であるラクツロースは、乳糖を原料として製造される合成二糖類です。化学構造としては、ガラクトースとフルクトースが結合しています。ラクツロースは体内でほとんど消化吸収されずに大腸に達します。
大腸に到達したラクツロースは、腸内細菌によって発酵され乳酸や酢酸を生成します。これにより腸管内のpHが酸性側に傾き、アンモニア産生菌(プロテウス属、クロストリジウム属など)の増殖が抑制されると同時に、アンモニアがイオン化され腸管からの吸収が低下します。
モニラックの作用機序
・腸内細菌により乳酸や酢酸へ変換される
・腸管内のpHを酸性に変化させる
・アンモニア産生菌の増殖を抑える
・アンモニアの腸管からの吸収を抑える
この作用により、ラクツロースは肝硬変患者や肝性脳症の患者のアンモニア値を効果的に低下させる目的で使用されます。
ポルトラック(ラクチトール)とは?
ポルトラックの有効成分であるラクチトールもまた、乳糖から合成された物質ですが、こちらはガラクトースとソルビトールが結合した糖アルコール系の合成二糖類です。ラクツロースと同様に消化吸収されにくく、大腸まで到達して腸内細菌により分解されます。
ラクチトールの大きな特徴は、その甘味がラクツロースよりも弱いため、服用時の甘みによる嫌悪感や嘔気の副作用が少ないことです。また、ラクツロースに比べて下痢の発生頻度も低いと報告されています。
ポルトラックの作用機序
・腸内細菌により有機酸へと分解される
・腸管内のpHを酸性に保つ
・アンモニア産生・吸収を抑制
・ビフィズス菌の増殖を促す
このため、ラクチトールは肝性脳症の患者においてアンモニアの蓄積を抑えるだけでなく、腸内環境を整えるという面でも有効です。
モニラックとポルトラックの比較
①構造と由来
モニラック(ラクツロース):ガラクトース+フルクトース
ポルトラック(ラクチトール):ガラクトース+ソルビトール
ラクツロースは糖類同士の結合体であり、ラクチトールは糖類と糖アルコールの結合体である点が異なります。
②副作用の比較
ラクツロースは甘味が強く、服用時に嘔気や甘みに対する嫌悪感を感じる患者がいます。また、下痢を起こしやすいというデメリットがあります。一方でラクチトールは甘味が弱く、副作用としての下痢の発生もラクツロースに比べて少ないため、長期間の服用が必要な患者にはラクチトールの方がより適していることがあります。
③腸内環境への影響
ポルトラック(ラクチトール)は特に腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増殖させる効果があります。これにより腸内細菌叢が改善されるため、慢性的な腸内環境の乱れがある患者には特に有効です。
臨床での使い分け
モニラック(ラクツロース)が推奨されるケース
・迅速にアンモニア値を下げる必要がある急性肝性脳症の患者
・便秘傾向が強く、排便促進が望ましい患者
ポルトラック(ラクチトール)が推奨されるケース
・甘味や嘔気の副作用を避けたい患者
・長期的に服用が必要で下痢を避けたい患者
・腸内環境を改善したい患者
注意点と副作用
両薬剤ともに共通して起こりやすい副作用は下痢や腹部膨満感です。特にモニラックではこれらの症状が顕著になることがあります。
一方、ポルトラックは副作用の頻度や重症度が比較的低いため、副作用の管理が難しい患者にはポルトラックの使用を考慮する価値があります。
患者への指導ポイント
両薬剤の服用時には以下のポイントを患者に指導することが重要です。
・腹痛や下痢が強い場合は服用量の調整が必要であることを伝える。
・十分な水分摂取を促す。
・服用中は定期的にアンモニア値や腸内環境を評価する。
まとめ
モニラック(ラクツロース)とポルトラック(ラクチトール)は、構造的にも副作用のプロファイルにも異なる特徴を持っています。モニラックは急性期の迅速なアンモニア低下に適しており、ポルトラックは長期的に服用しやすく、副作用が少なく腸内環境を整える効果に優れています。患者の状態や副作用への耐性を考慮し、適切な薬剤を選択することが臨床上非常に重要です。