2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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飲むGLP-1受容体作動薬リベルサス

セマグルチド

2020年6月29日、初の経口GLP-1受容体作動薬であるリベルサス(セマグルチド)が承認された。

製造販売元はノボ ノルディスクファーマ。注射以外も作るのね。

同じセマグルチドを成分とする注射剤「オゼンピック皮下注」という薬も承認されている。

GLP-1受容体作動薬はペプチド構造のため、胃酸やペプシン等の消化酵素によって速やかに分解されてしまうことからこれまで経口剤の開発は困難とされていました。また比較的高分子(分子量4000前後)のため胃からの吸収も困難です。

リベルサスはサルカプロザートナトリウム(SNAC)という胃での吸収を促進する成分を配合することで新たな吸収メカニズムを有しています。
この成分が、胃でのタンパク質分解からセマグルチドを保護し、吸収を促進して、経口投与が実現したという。
そのため、この添加物の働きを守るため、用法用量、粉砕・分割不可、錠数の決まり、など気を付けることが色々ある。

リベルサスの飲み方

規格はリベルサス錠3mg/リベルサス錠7mg/リベルサス錠14mgと、中途半端な規格ラインナップである。

リベルサスの用法は以下の通り。

通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として1日1回7mgを維持用量とし経口投与する。ただし、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる。

3mgから開始し、4週以上投与した後、1日1回7mgに増量する。

3mgは有効用量ではないので、3mg継続処方は保険請求上切られる可能性がある。なお、3mgから始める理由は、胃腸障害の発現を軽減させる観点からとのこと。

「用法及び用量に関連する注意」に以下のように記載されている。

本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに3mg錠、7mg錠又は14mg錠を1錠服用すること。また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。分割・粉砕及びかみ砕いて服用してはならない。

つまり、用法は「食前」ということになる。「起床時」でもいいか。
「1日のうちの最初の食事又は飲水の前」というのがやっかいなところで、つまり、リベルサスを飲む前に何か食べちゃったら、その日の服薬はあきらめるということになる。「昼食前の空腹時に飲めばいいんじゃないか?」とも思うのだが、添付文書の用法的にはNGとなる。

噛み砕いて服用してはいけない、つまり粉砕不可。
そして、「本剤は吸湿性が強く、光に不安定なため、PTPシートの状態で保存すること。」となっており、一包化も不可。

服用時の水分量(コップ約半分の水(約120mL以下))についても、50mLと240mLで比較した海外での試験結果が報告されており、50mLの方が血中濃度時間曲線下面積(AUC)が明らかに大きく、服用する際の水の量によっても体内吸収率に差が出るとされている。40%程度下がるようだ。
つまり、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート系薬では、服薬後30分の間、水の服用だけは許されているが、リベルサルについては、水の飲用もNGということになる。

「本剤14mgを投与する際には、本剤の7mg錠を2錠投与することは避けること。 」という薬局にとっては不便な記載もある。
こういうのは大抵、効果の問題ではなく、薬価の問題だ。
と、思ったが、このインタビューフォームに以下のような記載があった。

本剤は胃で崩壊・吸収され、吸収は錠剤表面の周辺部に限定されることから、SNAC の投与量の差異、及び物理的に 2 つの錠剤が胃内に存在することが本剤の吸収に影響を及ぼす可能性がある。本剤の 1 回の投与で複数錠を患者に服用させるような処方は避けること。

胃で吸収されるということで、胃を切除した患者では効果が減弱する。

添付文書に「投与を忘れた場合はその日は投与せず、翌日投与すること。」という飲み忘れ時の対応も記載されているのは親切だ。

ハサミで切っちゃダメ?

「本剤は吸湿性が強く、PTPシートで防湿しているため、ミシン目以外の場所で切り離さないこと。」という変わった注意書きもある。
ハサミで切っちゃいそう。イヤ、真ん中にはミシン目が無いから奇数で処方された場合は、ハサミで切るしかないでしょう。疑義照会すべきなのか?

メーカーに確認したところ、錠剤部分から縁の部分までの距離が5mm無いとダメらしく、縦にハサミを入れると吸湿性に影響が出るとのこと。なんじゃそら。じゃあ縦にもミシン目入れろってばよ。
3か月程度は問題ないので、疑義照会すべきかどうかは、患者の服用状況にもよるので、必ずしも疑義照会すべきというわけではないとのこと。でも、3mg錠を縦に切ったらたぶん廃棄決定だよね。

こういうのって、発売から日数経てば安定性が保証されて縦に切ってもOKってことになるのかな。なるといいな。

「服用直前開封」「ミシン目以外で切らない」「1日1回1錠」「糖尿病用薬」など情報ぎっしりつまったシートになっています。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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