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胃切除患者は血糖値が低い?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分45秒で読めます.
4,157 ビュー. カテゴリ:胃切除術後の血糖値
胃を切除した患者は、あまり食事を摂取することができなくなり、血糖値は下がる。そう思っていました。
胃を切除した患者は、摂取した糖が小腸に急速に流入、吸収されて高血糖をきたします。
それに反応してインスリンの過分泌が引き起こされます。
インスリン過分泌が食事のたびに繰り返されることで、膵β細胞の疲弊をもたらし、耐糖能の悪化の懸念もあります。
そのため、短期的にみると、術後の血糖値は大きく変動します。
しかし、胃切除術後、体重は減少するためにインスリン感受性は改善し、食事の摂食量自体も減少するため、長期的にみると血糖は改善していきます。
肥満外科手術という、胃の容量を小さくしたり、栄養素を吸収する小腸をバイパスさせることによって減量を得る手術があります。
高度肥満症患者の確実な減量方法として、世界中で年間約34万件以上も行われています。日本でも2014年にスリーブ状胃切除術が保険収載され、徐々に施行数が増加しています。肥満外科手術は、減量効果だけでなく、合併する糖尿病を劇的に改善させることが注目されています。
耐糖能が改善する機序については様々な仮説が唱えられていますが、その中の有力な説として。インクレチン(glucagon-like peptide-1:GLP-1)の関与があります。
バイパス術後は、食物は下部小腸に流れ込みます。
下部小腸にはGLP-1分泌細胞が豊富に存在しており、GLP-1分泌が刺激され、そのためにインスリン分泌が刺激され、耐糖能が改善するというものです。
実際に、肥満外科手術後にGLP-1分泌が上昇することが多数報告されています。同様に、胃癌術後にもGLP-1が上昇することが報告されています。Roux-en-Y法再建術では、食物は上部小腸をバイパスし、下部小腸に流れ込み、GLP-1分泌が刺激されます。このような機序も胃切除術後の血糖コントロール改善に寄与している可能性があると考えられます。
このような胃切除術後の患者において、食後に急峻な血糖上昇とそれに続いて急激に血糖降下する血糖変動のことをoxyhyperglycemiaと呼びます。
ダンピング症候群に含まれる。
ダンピング症候群
ダンピング症候群とは、胃の切除手術を受けた患者に現れる、食後のさまざまな全身症状と腹部症状のことです。
全身症状としては冷感、動悸、めまいなど、腹部症状としては腹鳴、腹痛、下痢などが発現します。
切除によって胃が小さくなり、食物が急速に小腸に排出されるようになることが原因で起こります。
症状が食後30分以内に現れるものを早期ダンピング、食事の2~3時間後に起こるものを後期ダンピングと呼びます。
早期ダンピングでは、胃から腸管に急激に食物が排出されることで、セロトニンやヒスタミンの過剰分泌が起こります。
患者の早期ダンピングの主な症状が、冷感・動悸・めまいといった全身症状の場合には、セロトニンやヒスタミンが原因であることが多いので、これらの遊離を少なくしたり、作用させないようにすることで改善が期待できます。
そこで抗ヒスタミン、抗セロトニン作用を持つシプロヘプタジン(ペリアクチン)などが投与されます。
ダンピング症候群2つのタイプ
ダンピング症候群は、症状が表れるタイミングによって大きく2つに分かれる。
一つは、食事中から食後30分にかけて症状が表れる「早期ダンピング症候群」である。
これは、未消化で濃度の高い食物が十二指腸や小腸に急速に流入することが原因で起きる。
高濃度の食物が浸透圧で体液を奪い、神経性・体液性の過敏反応を引き起こすほか、循環血液量の減少や腸管運動の冗進、血管作動性の体液因子(セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、カテコールアミンなど)の過剰産生といった適応不全を生じ、前述のような症状が表れる。
胃切除患者の20~45%に見られる。
もう一つは、食後2~3時間後に症状が表れるもので、「後期ダンピング症候群」と呼ばれる。
これは大量の糖分が急速に上部小腸に流れることに対して、インスリンが過剰に分泌される結果引き起こされる低血糖症状である。
発汗や脱力感、めまいなどが生じる。
ダンピング症候群の予防
ダンピング症候群の症状を改善するには、食事指導が重要である。
食事の量を小分けにして回数を増やし、時間を掛けて取ることが望ましい。
また、味の濃い物や炭水化物の量を減らし、高蛋白質・高脂質のメニューにする。
食物繊維には、急激な血糖上昇を防いだり、食物の移動時間を遅延させるなどの働きがある。
また、十二指腸以降への食物の急激な流入を避けるため、食事中の水分摂取は控え、胃部に滞留しやすい固形食を取るのが望ましい。
食後30分程度は上体を起こさず、横になるのも有効である。
食事指導でコントロールが難しい場合には、薬物療法が追加される。
早期ダンピング症候群には、抗ヒスタミン・抗ブラジキニン作用を持つホモクロルシクリジン塩酸塩(商品名ホモクロミン他)や抗ヒスタミン・抗セロトニン作用を持つシプロヘプタジン塩酸塩(ペリアクチン他)など、体液因子を遮断する薬剤が用いられる。
後期ダンピング症候群には、ボグリボース(ベイスン他)などのαグルコシダーゼ阻害薬などが処方される。
いずれも保険適用外である。
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