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子供の睡眠不足の原因はアデノイド?
公開. 更新. 投稿者: 42 ビュー. カテゴリ:睡眠障害.この記事は約4分56秒で読めます.
目次
子どもの睡眠不足の原因はアデノイド?― いびき・口呼吸・集中力低下の裏に潜む「見えない原因」

「夜はちゃんと寝ているはずなのに、朝は機嫌が悪い」
「授業中にぼーっとしていることが多い」
「よく風邪をひくし、中耳炎を何度も繰り返している」
このような子どもの様子に、単なる睡眠不足や生活習慣の問題を疑う保護者は多いでしょう。
しかし実は、睡眠時間は足りていても“眠れていない”子どもが少なくありません。
その原因の一つとして、近年注目されているのが
アデノイド(咽頭扁桃)の肥大による睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は「中年男性の病気」ではない
睡眠時無呼吸症候群と聞くと、
・太り気味の中年男性
・大きないびきをかく
・日中に強い眠気がある
といったイメージを持つ人が多いかもしれません。
確かに成人ではそのようなケースが多いのですが、
小児でも睡眠時無呼吸症候群は起こります。
しかも小児の場合、
原因・症状・影響は大人と大きく異なる
という点が重要です。
小児期の睡眠は「休息」以上の意味を持つ
小児期は、心身の成長・発達が最も活発な時期です。
睡眠中には
・成長ホルモンの分泌
・脳の発達・記憶の定着
・自律神経の調整
・免疫機能の維持
といった、成長に不可欠な働きが行われています。
この時期に睡眠の質が低下すると、
・身長・体重の伸びが悪い
・学習面の遅れ
・情緒の不安定さ
・将来的な生活習慣病リスク
など、後々まで影響が及ぶ可能性があります。
つまり、
子どもの睡眠不足は「その日の眠気」だけの問題ではない
ということです。
小児の睡眠時無呼吸とアデノイドの関係
アデノイドとは?
アデノイドとは、鼻の奥(上咽頭)にあるリンパ組織で、正式には「咽頭扁桃」と呼ばれます。
外からは見えませんが、
・鼻から入るウイルス・細菌をキャッチ
・免疫の最前線として働く
という役割を持っています。
成長とともに大きくなる?
アデノイドと口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)には、成長に伴う特徴があります。
・咽頭扁桃(アデノイド):3~6歳で最大
・口蓋扁桃:5~7歳で最大
その後、学童期後半から徐々に小さくなる(退縮)のが一般的です。
なぜアデノイドが睡眠を邪魔するのか
アデノイドが肥大すると、鼻の奥の空気の通り道が狭くなります。
起きている間は何とか呼吸できていても、
寝ている間は筋肉が緩むため、
・空気の通りがさらに悪化
・いびきが出やすくなる
・呼吸が一時的に止まる
といった状態が起こります。
これが、小児の睡眠時無呼吸症候群です。
小児の睡眠時無呼吸症候群の症状
小児の症状は、大人と違って分かりにくいのが特徴です。
睡眠中のサイン
・寝ている間の異常ないびき
・呼吸が止まる・苦しそうに息をする
・寝相が極端に悪い、体動が多い
・口を開けて寝ている
日中のサイン
・寝起きが悪い
・昼間すぐに眠くなる
・疲れやすい
・イライラしやすく不機嫌
・注意力散漫、落ち着きがない
・無気力、やる気がない
身体・成長面のサイン
・発育や学力の遅れ
・夜尿を繰り返す
・よく気管支炎を起こす
・中耳炎を繰り返す
・口呼吸が習慣化している
特に重要なのは、
「眠い」と訴えるより、行動の問題として現れることが多い点です。
「睡眠時間は足りている」のに眠い理由
保護者からよく聞くのが、
「夜はちゃんと寝ています」
という言葉です。
しかし、睡眠時無呼吸があると、
・呼吸が止まる
・脳が覚醒する
・深い睡眠に入れない
という状態を一晩中繰り返します。
その結果、
睡眠時間は足りていても、睡眠の質が著しく低下
してしまうのです。
小児の睡眠時無呼吸症候群の治療
保存的治療
・鼻炎・アレルギーの治療
・生活環境の改善
・経過観察(成長による改善を期待)
軽症の場合は、経過を見ることも少なくありません。
外科的治療
・一般的な治療法として
・扁桃腺摘出
・アデノイド切除
があります。
全身麻酔で行われ、
入院期間はおおよそ1週間~10日程度。
「子どもの体にメスを入れるのは心配」
という保護者の気持ちは、当然のものです。
手術をするかどうかの判断は難しい
実際に、
「アデノイドは取ったほうがいいのでしょうか?」
と相談されることもあります。
しかしこの判断は、
・症状の重さ
・日常生活への影響
・成長への影響
・他の治療で改善する可能性
などを総合的に考える必要があり、
一概に「取ったほうがいい」「取らなくていい」とは言えません。
重要なのは、
専門医(耳鼻咽喉科)で評価を受けること
です。
薬局・現場でできる大切な役割
薬剤師や医療従事者ができることは、
「いびきや口呼吸は体質ではないかもしれない」
「睡眠の質が原因で、日中の不調が出ている可能性がある」
「耳鼻科で相談する選択肢がある」
といった気づきを与えることです。
アデノイドは外から見えないため、
気づかれにくい原因でもあります。
まとめ:子どもの睡眠不足、原因は一つではない
・子どもの睡眠不足は「夜更かし」だけが原因ではない
・アデノイド肥大は、小児の睡眠時無呼吸症候群の重要な原因
・睡眠の質の低下は、成長・学習・情緒に影響する
・気になる症状があれば、耳鼻科での評価が大切
「よく寝ているのに元気がない」
そんな子どものサインを見逃さないことが、
健やかな成長を守る第一歩になります。




