2026年1月7日更新.2,712記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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睡眠薬はクセになる?反跳性不眠を起こしにくい薬

睡眠薬はクセになる?

「睡眠薬はクセになる」
「一度飲んだら一生やめられない」

患者さんから、あるいは家族から、非常によく聞かれる言葉です。

確かに、睡眠薬には依存や反跳性不眠が問題となる薬剤が存在するのは事実です。
しかし一方で、現在の睡眠薬治療の考え方や処方の主流は、以前とは大きく変わってきています。

特に近年は、
・反跳性不眠を起こしにくい
・身体依存を形成しにくい
・長期使用を前提に設計された
オレキシン受容体拮抗薬が広く使われるようになってきました。

「睡眠薬はすべてクセになる」という理解は、もはや正確ではありません。

依存・反跳性不眠が問題になりやすかった睡眠薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは

従来、睡眠薬の中心だったのがベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZD)や、 それに類似した非ベンゾジアゼピン系(Z薬)です。

これらは、
・GABAという「脳のブレーキ役」の神経伝達を強める
・神経全体の興奮を抑えて眠気を起こす
という作用機序を持ちます。

依存・耐性・反跳性不眠

BZD系睡眠薬は、短期間・常用量であれば安全性が高いとされています。
しかし、

・長期間の連用
・半減期の短い薬剤の使用
・自己判断での中断

などが重なると、

・耐性(効きが弱くなる)
・依存
・反跳性不眠(やめた後に以前より強い不眠が出る)

が問題になることがあります。

特に超短時間型・短時間型では、
急な中止後 2~3日以内に反跳性不眠が出やすいことが知られています。

「やめたら前より眠れなくなった」の正体

睡眠薬を飲んでいた人が、自己判断で急に中止した後、
「前よりひどくなった」
「余計に眠れなくなった」
と感じることがあります。

これは多くの場合、
病気が悪化したのではなく
反跳性不眠(リバウンド)によるもの
です。

この体験が、
「睡眠薬はやめられない」
「一度飲んだら終わり」
という誤解を強めてきました。

現在の処方の主流は「反跳性不眠を起こしにくい薬」へ

こうした問題を背景に、
近年、睡眠薬治療の中心は作用機序の異なる薬へと移行しています。

その代表がオレキシン受容体拮抗薬です。

オレキシン受容体拮抗薬とは

オレキシンの役割
オレキシンは、
「覚醒状態を維持する」
「目を覚まし続ける」
ために重要な神経伝達物質です。

オレキシンが活発に働いている間、人は眠りに入りにくくなります。

オレキシン受容体拮抗薬の作用
オレキシン受容体拮抗薬は、
無理に脳を鎮静させるのではなく
「起き続けようとする仕組み」を静かに弱める
ことで、自然に近い眠りを促します。

この点が、
神経全体を抑え込むBZD系睡眠薬との決定的な違いです。

反跳性不眠が起こりにくい理由

オレキシン受容体拮抗薬は、
・GABA系に直接作用しない
・神経の抑制と興奮のバランスを大きく変えない
という特徴があります。

そのため、
・急に中止しても
・血中濃度が下がっても
・反跳性不眠や離脱症状が起こりにくいとされています。
「やめたら前より眠れなくなる」という経験が起こりにくい薬剤群です。

ベルソムラ(スボレキサント)はクセにならない?

ベルソムラ(スボレキサント)は、日本で世界に先駆けて発売された
最初のオレキシン受容体拮抗薬です。

特徴
・身体依存・精神依存を形成しにくい
・反跳性不眠が起こりにくい
・入眠障害・中途覚醒の両方に使える
という点から、

「依存性の少ない睡眠薬」として広く使われています。

ただし、
・効果の立ち上がりが穏やか
・「効いた感じ」が分かりにくい

と感じる患者さんもおり、
即効性を期待しすぎない説明が重要です。

「睡眠薬を飲み続けてはいけない」は本当か

不要な薬は、飲まないに越したことはありません。

しかし、
・不眠が慢性化している
・生活の質が著しく低下している

場合には、
「飲み続ける」という選択肢が必ずしも悪ではありません。

特にオレキシン受容体拮抗薬は、
・長期使用を想定して設計されている
・「やめること」自体が治療のゴールではない
という考え方の薬です。

睡眠薬はやめられる?

答えは 「やめられる」 です。

ただし、
・自己判断で急にやめない
・医師と相談しながら減量する
ことが前提になります。

オレキシン受容体拮抗薬では、
・用量調整
・服用間隔をあける
といった方法で、比較的スムーズに中止できるケースも多く見られます。

服薬指導のポイント

・自己判断で急に中止しない
・「眠れる自信」をつけることが減薬につながる
・効かないからと勝手に増量しない
・オレキシン受容体拮抗薬は反跳性不眠が起こりにくい
・睡眠薬の不安は医師・薬剤師に相談する

まとめ

・「睡眠薬はクセになる」というイメージは一部正しいが、すべてではない
・問題になりやすかったのは主にBZD系睡眠薬
・現在は反跳性不眠を起こしにくいオレキシン受容体拮抗薬が主流
・睡眠薬は「一生やめられない薬」ではない
・正しい使い方と、正しいやめ方が大切

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