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高齢者に危険な睡眠薬
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約6分33秒で読めます.
7,998 ビュー. カテゴリ:高齢者と睡眠薬
高齢者に睡眠薬を使うのは危険?
高齢者に睡眠薬が処方されることは多いですが、ふらつき→転倒→骨折に注意しなければならない。
国立保健医療科学院では,「高齢者において疾患・病態によらず一般に使用を避けることが望ましい薬剤」のリストを公表しています。
ベンゾジアゼピン系の薬を抜粋すると、
医薬品名 | 問題点 |
---|---|
フルラゼパム [インスミン、ベノジール、ダルメート] | 高齢者における半減期がきわめて長く、長期間にわたり鎮静作用を示すため、転倒および骨折の頻度が高くなる。中~短期作用型ベンゾジアゼピンが望ましい |
フルニトラゼパム[サイレース、ロヒプノール] | 高齢者における半減期が極めて長く、長期間にわたり鎮静作用を示すため、転倒および骨折の頻度が高くなる。中~短期作用型ベンゾジアゼピンが望ましい |
短期作用型ベンゾジアゼピン系薬 (一日あたり用量が以下に示す値を超える場合) ロラゼパム[ワイパックス];3mg、アルプラゾラム[コンスタン、ソラナックス];2mg、トリアゾラム[ハルシオン];0.25mg、エチゾラム[デパス];3mg | これらの薬剤は、一日あたり用量が一定量を超えないことが望ましい。高齢者では、ベンゾジアゼピンに対する感受性が高くなっているため、比較的低用量でも有効性が得られ、かつ安全であると考えられる |
長期作用型ベンゾジアゼピン系薬 クロルジアゼポキシド[バランス、コントール]、ジアゼパム[セルシン、ホリゾン]、クアゼパム[ドラール]、クロラゼプ酸[メンドン] | 高齢者における半減期が長く、長期間にわたり鎮静作用を示すため、使用することで転倒および骨折の危険が高くなる。ベンゾジアゼピンが必要とされる場合には、中~短期作用型ベンゾジアゼピンが望ましい |
超長期作用型ベンゾジアゼピン系薬 ロフラゼプ酸エチル[メイラックス]、フルトプラゼパム[レスタス]、メキサゾラム[メレックス]、ハロキサゾラム[ソメリン]、クロキサゾラム[セパゾン] | これらの薬物は長期間にわたり鎮静作用を示すため、転倒および骨折の危険が高くなる。ベンゾジアゼピンが必要とされる場合には、中~短期作用型ベンゾジアゼピンが望ましい |
高齢者には、中~短期作用型ベンゾジアゼピンが望ましいと。
サイレースよりもハルシオンのほうが望ましいというわけだ。
高齢者に睡眠薬が処方されたとき、気を付けるべきはその投与量。
高齢者に対して用量制限がかけられている睡眠薬がある。
医薬品名 | 用量 |
---|---|
サイレース/ロヒプノール | 通常成人1回、フルニトラゼパムとして、0.5~2mgを就寝前又は手術前に経口投与する。 なお、年齢・症状により適宜増減するが、高齢者には1回1mgまでとする。 |
デパス | 神経症,うつ病の場合通常,成人にはエチゾラムとして1日3mgを3回に分けて経口投与する. なお,年齢,症状により適宜増減するが,高齢者には,エチゾラムとして1日1.5mgまでとする. 心身症,頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛の場合通常,成人にはエチゾラムとして1日1.5mgを3回に分けて経口投与する. なお,年齢,症状により適宜増減するが,高齢者には,エチゾラムとして1日1.5mgまでとする. 睡眠障害に用いる場合通常,成人にはエチゾラムとして1日1~3mgを就寝前に1回経口投与する. なお,年齢,症状により適宜増減するが,高齢者には,エチゾラムとして1日1.5mgまでとする. |
ハルシオン | 通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg~0.25mgまでとする。 |
メレックス | 通常、成人にはメキサゾラムとして1日1.5~3mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、高齢者には1日1.5mgまでとする。 |
リスミー | 通常,成人にはリルマザホン塩酸塩水和物として1回1~2mgを就寝前に経口投与する。 なお,年齢,疾患,症状により適宜増減するが,高齢者には1回2mgまでとする |
ルネスタ | 通常、成人にはエスゾピクロンとして1回2mgを、高齢者には1回1mgを就寝前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないこととする。 |
ベルソムラ | 通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。 |
何歳以上からが高齢者なのか、保険請求上はあいまいな点もありますが、世界保健機関 (WHO) の定義では、65歳以上の人のことを高齢者としている。
65歳以上の患者に睡眠薬が処方されている場合、用量に注意も必要。
ハルシオンの特徴
夜間覚醒時の追加投与においても比較的安全なので、旅行時などの一過性不眠に適する。
特に作用時間の短い薬剤では夜間覚醒時のことを翌朝想起できない前向性健忘や服薬後のもうろう状態、また中断による反跳性不眠で中止が困難となる場合もあり、注意が必要である。
超短時間作用型の睡眠薬は、服薬とともに血中濃度が上昇し、すぐれた入眠効果をもたらす。
また、残薬感を残さず、目覚めのよさを自覚させる。
高齢者に適した睡眠薬は?
多くの同種同効薬がある中で、代謝機能が低下している高齢者では、半減期および作用時間がなるべく短い薬剤が望ましいとされる。
高齢者に使いやすいのは、非BZ系のゾピクロン (アモバン)、エスゾピクロン(ルネスタ)、ゾルピデム酒石酸塩(マイスリー)だろう。
睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会による「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版」(2012)では、非BZ系の薬 に加え、BZ系でも代謝経路が単純で翌朝に残りにくいとされるロルメタゼパム(エバミール、ロラメット)を推奨している。
ただし、臨床現場では様々な睡眠薬が処方されている。
例えば、医師の専門によっても選択する睡眠薬は異なる傾向がある。
精神科専門医はあまり用いないが、内科などの非専門医はエチゾラム(デパス)をしばしば処方している。
また、投与期間制限のない睡眠薬も使われやすい。
慢性疾患を抱えている高齢者では、他の薬と同じ日数を処方できる睡眠薬が求められるためだ。
これらに加え、ここ数年の間に登場 した新機序の睡眠薬は、より高齢者の状況に合わせた選択を可能にしてい る。
例えば、ラメルテオンは夜間せん妄がある高齢者には適している薬と考えられる。
この薬は、脳内で睡眠-覚醒のリズムを制御するメラトニン受容 体を介して睡眠を誘発するため、概日リズムの乱れにより生じる高齢者の不眠に適する。
またスボレキサントも、高齢者に使いやすい特徴を示している。
ベルソムラの特徴
既存の睡眠薬の作用機序と異なるベルソムラ(スボレキサント)が世界に先駆けて14年11月に発売された。
スボレキサントは、初めて不眠治療を受ける高齢者に適している。
スボレキサントは、脳において覚醒状態の維持を担っているペプチドであるオレキシンが受容体に結合するのを阻害する、世界初のオレキシン受容体桔抗薬だ。
この薬の特徴として、(1)単剤で使用でき、増量の必要がない、(2)中止しやすい、(3)健忘・筋弛緩・転倒 などのリスクが低い-の3つがある。
スボレキサントには、入眠障害と中途覚醒の両方を改善する作用が確認されている。
投与第1日夜から、主観的睡眠時間の延長や入眠時間の短縮などの効果を示しており、不眠症患者が希 望する睡眠効果が、比較的すぐに得られる薬といえる。
通常、成人には1日20mg,高齢者では15mgと用量が決まっている。
多くの睡眠薬とは異なり、患者の状態に合わせて量を調整する必要がないため、非専門医でも使いやすいと思われる。
高齢者の用量が非高齢者よりも少ないのは、薬物動態試験において、非高齢者と比較して血漿中濃度が高くなる傾向が認められたため。
臨床試験において、3か月ないし6か月間スポレキサントを投与した後で、退薬初日に反跳性不眠が見られた患者の割合を調べると、プラセボ群は16.4%、 スボレキサント群では18.3%だった。
患者が感じた主観的な退薬症候の調査で は、3か月、6ヶ月あるいは12か月の治療期間を終了した後、スボレキサント投与を中止した群(中止群)とそのまま投与を継続した群(継続群)とで比較しても、顕著な差は出ていなかった。
また、高齢者で問題となる認知機能についても、第3相試験において、投与9時間後の認知機能テストはスボレキサント群とプラセボ群で有意差が無かった。
承認用量では副作用として平衡障害と転倒の報告例は少ないことから、転倒のリスクも小さいと考えられる。
第3相試験では日本人を含む254例 のうち20.9%に副作用が認められ、主な副作用は傾眠4.7%、頭痛3.9%、疲労2.4%だった。
1%未満ではあるが、睡眠時麻痺や入眠時幻覚の副作用も報告さ れている。
服用時の注意としては、食事の影響で血中濃度の上昇が遅れ、入眠効果の発現が遅れる可能性があるため、 食事と同時あるいは直後の服用は避ける。
ベルソムラは反跳性不眠が少ない
ベルソムラ(スポレキサント)は総睡眠時間を延長するほか、入眠までの時間および中途覚醒時間をプラセボに比べて有意に短縮させることが臨床試験で判明しており、入眠障害および中途覚醒に有効である。
ベルソムラの特徴として反跳性不眠の恐れが少ないというのがある。
反跳性不眠とは、睡眠薬の長期連用後に、睡眠薬を使用する前よりも症状がさらにひどくなることをいう。
入眠障害の患者には、作用時間が短い(超短時間型、短時間型)ベンゾジアゼピン系睡眠薬が用いられることがあるが、これらのベンゾジアゼピン系睡眠薬は長期に連用することで依存状態が形成されやすく、服用を急に中止すると退薬症候および反跳性不眠が生じやすい。
一方、GABA受容体ω1サブタイプへの選択性が高い非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やラメルテオンでは、反跳性不眠は生じにくい。
ワイパックスは高齢者に使いやすい?
一般的にベンゾジアゼピン系薬剤を高齢者に投与する場合には注意を要する。
身体依存や持ち越し効果による認知機能への影響、筋弛緩作用による転倒や骨折が問題となっている。
2013年に日本睡眠学会などが発表した「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」において、原発性不眠症の高齢患者に対しては、ベンゾジアゼピン系ではなく、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が推奨されている。
ベンゾジアゼピン系の中でも、ワイパックスやエバミール、ロラメットは高齢者に使いやすいと言われる。
それはなぜか?
加齢に伴い、落ちてくる能力の一つに肝機能がある。
ロルメタゼパム(エバミール/ロラメット)、ロラゼパム(ワイパックス)はグルクロン酸抱合で代謝されるので、肝臓への影響が少ない。
一般的にCYPの活性は加齢に伴って低下するのに対し、抱合反応は加齢による代謝をあまり受けない。
逆に、マイスリー(ゾルピデム)は、高齢者と肝硬変の患者においてAUCが大きく上昇する薬剤である。
高齢者で健常人の5.1倍、肝硬変で5.3倍にもなる。
肝障害とCYP
一般的に、CYP2C19やCYP1A2による肝代謝は、肝硬変の比較的早期の段階(チャイルドピュー分類クラスA、B)から低下する。
一方で、多くの肝代謝型抗不整脈薬の主要代謝経路となるCYP2D6による肝代謝は、重度の肝硬変(チャイルドピュー分類クラスC)から低下が見られる。
CYP3A4による肝代謝は、チャイルドピュー分類クラスBの肝硬変から低下する。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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