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睡眠薬は怖い?睡眠薬に対する誤解
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約3分21秒で読めます.
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睡眠薬は怖い?

「睡眠薬は怖いもの」といったイメージを持つ人は少なくありません。芥川龍之介やマリリン・モンローなど、歴史上の著名人が睡眠薬で命を落としたという事実が、睡眠薬に対する恐怖感を強く根付かせています。しかし、彼らが服用したのは現在主流の睡眠薬とは異なる「バルビツール酸系」の薬であり、安全性は大きく異なります。
現代の睡眠薬:安全性は飛躍的に向上
現在、広く使われている睡眠薬は「ベンゾジアゼピン系」や「非ベンゾジアゼピン系」など、安全性を高めた薬剤です。適正な用法・用量を守れば、依存性や耐性、副作用のリスクも極めて少なく、長期服用にも比較的安全とされています。
とはいえ、「睡眠薬はクセになる」「一生やめられない」「ボケる」など、根拠に乏しい不安を抱く患者が後を絶たないのも現実です。
アルコールより睡眠薬の方が安全?
「薬は怖いから…」といって、眠れない夜にアルコールに頼る人がいます。しかし、睡眠導入の観点ではアルコールよりも睡眠薬の方が遥かに安全です。アルコールは入眠を早めるものの、代謝後は睡眠が浅くなり中途覚醒が増えることが知られています。また、利尿作用により夜中の排尿で目が覚めることも。
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」でも、アルコールは睡眠薬代わりには「推奨されない」と明言されています。適量であっても、アルコールによる睡眠は質が悪く、継続的に飲むことで依存や健康被害のリスクが高まります。
ただし、「たしなむ程度」ならば問題ないとする現実的な指導もあります。完全禁酒が難しい人には、寝酒を控え、夕食時に少量にとどめることが望ましいとされています。
アルコール依存症と睡眠薬のリスク
アルコール依存症と不眠症は密接に関連しています。不眠がきっかけでアルコールに依存し、さらに不眠が悪化するという悪循環も存在します。また、アルコールと睡眠薬には交差耐性があり、アルコール依存の患者に睡眠薬を処方すると「処方薬依存」に移行する危険性も。
そのため、アルコール依存症患者には基本的に睡眠薬は避けるべきです。やむを得ず処方する場合でも、依存性の高い短時間型薬剤は避け、投与期間を制限するなど慎重な対応が求められます。
睡眠薬をやめたいと思ったら
「薬をやめたい」と思うのは、健全な考えです。その意志を医師や薬剤師に伝えた上で、急な中止は避け、計画的な減薬を行うことが重要です。
ガイドラインでは、不眠症の寛解の条件として「夜間の症状改善」「日中の生活への支障がなくなる」の2点が挙げられています。この状態が1~2カ月継続すれば、減薬のタイミングとされます。
減薬は通常、1~2週間に4分の1錠ずつ減らすなどの方法が推奨されます。服薬期間が長い場合や多剤併用している場合は、さらに慎重な対応が必要です。
また、新しいタイプの睡眠薬(ラメルテオン、スボレキサントなど)は離脱症状が少なく、比較的減薬しやすいというデータもあります。
睡眠薬にまつわる誤解の数々
・安定剤は安全、睡眠薬は危険 → 両者の成分は共通していることが多い。
・睡眠薬=強い眠気 → 適量なら自然な入眠を助けるのみ。
・一度始めたら一生続く → 寛解すれば減薬・中止は可能。
・どんどん量が増える → 適切な処方管理があれば増量不要。
・ぼける、痴呆になる → 高齢者では注意が必要だが、一般にはリスクは低い。
・大量服用で死ぬ → 現在の薬では生命リスクは低い。
・アルコールの方が安全 → 科学的にはむしろ逆である。
クロロホルムで気絶?都市伝説のような話
ハンカチに染みこませたクロロホルムを吸わせて一瞬で気絶、というシーンが昔の映画や漫画ではよく見られました。しかし現実には、クロロホルムを吸った程度では咳や吐き気、頭痛が起きるだけで、意識を失うことは稀です。
大量に吸入した場合には腎機能障害を起こして命に関わることもあり、むしろ極めて危険な薬物といえます。このような演出は現実性に乏しく、現在ではあまり見かけなくなりました。
終わりに:睡眠薬と上手に付き合う
睡眠薬は、正しく使えば安全で効果的な薬です。無用に怖がることも、逆に安易に頼りすぎることも避けるべきです。
大切なのは、「不眠」という症状にどう向き合うかという視点。薬の有無にかかわらず、生活習慣の改善や睡眠衛生指導などの非薬物療法を並行して取り入れることも忘れてはなりません。
薬剤師としては、患者が正しい知識を持ち、安心して治療に取り組めるよう支援していくことが求められます。「怖いから使わない」ではなく、「安全だから使う」のではなく、「必要なときに必要な量を、正しく使う」姿勢が重要です。