2025年7月22日更新.2,537記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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最適な睡眠時間は何時間?

最適な睡眠時間は?

「睡眠時間は8時間が理想」とよく耳にしますが、本当に誰にとってもそれが最適なのでしょうか?実際には、必要な睡眠時間には個人差があり、一概に○時間が正しいとは言えません。

平均的な睡眠時間とは?

日本人の平均睡眠時間はおよそ7時間程度とされており、NHKの調査によると以下の通りです:
・平日:7時間26分
・土曜日:7時間41分
・日曜日:8時間13分

また、加齢に伴って必要な睡眠時間は減っていきます:
・子ども(12歳頃まで):約9時間
・成人(30歳前後):約7時間
・高齢者(60歳以降):約6時間

これは、年齢とともに生理的な睡眠欲求が低下していくためです。

7時間睡眠がベスト?死亡リスクとの関係

ある大規模な調査では、110万人を対象にした疫学研究で「7時間睡眠」が男女ともに最も死亡リスクが低いと報告されました。

・6時間以下でもリスク増加
・9時間以上でもリスク増加

つまり、睡眠は多すぎても少なすぎても健康に良くないのです。睡眠時間が短いと、心疾患や脳卒中、糖尿病のリスクが高まり、逆に長すぎる睡眠は抑うつ傾向や運動不足、社会的活動の低下と関係する可能性があります。

眠りの質とレム・ノンレム睡眠のリズム

私たちの睡眠は、約90分間隔で「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返しています。

・ノンレム睡眠:脳と体がしっかり休んでいる状態
・レム睡眠:脳は活動しているが体は休んでいる状態(夢を見ることが多い)

この周期を意識して、90分の倍数(例:4時間半、6時間、7時間半、9時間)で目覚めると、比較的すっきり起きられるという説があります。

体内時計と1日のリズム

人間の体内時計は、外部刺激(太陽光や食事など)と関係なく24時間をやや超える周期(約25時間)を持っていることが知られています。

このリズムが崩れると睡眠障害が起こることがあり、以下のような病態が知られています:

・非24時間睡眠覚醒症候群:体内時計が外界の明暗サイクルと同調できず、毎日少しずつ寝る時間が遅れていく
・睡眠相後退症候群(DSPS):極端な夜型で、深夜まで眠れず朝起きられない

これらは、生活指導・光療法・薬物療法(超短時間作用型睡眠薬、ビタミンB12、メラトニン)などで改善を図ることができます。

「長く寝ればいい」は誤解?

睡眠に悩む人の中には、「眠れないからとにかく長く布団にいよう」と考える人がいますが、これは逆効果です。

・長時間寝床にいると睡眠密度が低くなる
・熟眠感が減少する
・寝床=眠れない場所という誤学習が起こる

「睡眠障害対処の12の指針」にもあるように、眠りが浅いと感じるときほど、“遅寝・早起き”が推奨されます。

睡眠時間を短くする方が良いこともある?

眠れないと訴える人には、以下のような工夫が有効です:

・眠くなるまで布団に入らない
・朝は決まった時間に起きる
・睡眠日誌をつけて客観的に評価する

これにより、自然と睡眠効率(=寝床にいる時間に対する実睡眠時間)が改善され、睡眠の質も上がっていきます。

あなたにとっての最適な睡眠時間とは

最適な睡眠時間は個人差がありますが、以下のような状態であれば適切であると考えられます:

・日中に眠気がなく、活動的に過ごせている
・朝、自然に目覚められる
・夜にスムーズに眠りにつける

無理に8時間眠ろうとする必要はありません。6時間半で元気に過ごせているなら、それがその人にとっての“適正”なのです。

終わりに

睡眠は「量」も大切ですが、「質」や「生活リズム」との関係も非常に大きいです。自分にとってちょうどいい睡眠時間を知り、寝すぎや寝不足の悪循環から抜け出しましょう。

睡眠で悩んだときには、自己判断せず医師や薬剤師に相談を。あなたの健康的な毎日は、質の良い睡眠から始まります。

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