記事
睡眠薬が効かないときはどうする?
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約4分33秒で読めます.
619 ビュー. カテゴリ:目次
薬に頼らない対処法と睡眠衛生の基本

「睡眠薬を飲んでいるのに眠れない」「効果が感じられない」──そんな悩みを抱える方は少なくありません。処方どおりに服用していても、思ったような睡眠が得られないとき、どうすれば良いのでしょうか?
睡眠薬が「効かない」とはどういうことか?
まず前提として、「睡眠薬が効かない」という言葉が何を意味しているのか、整理しておくことが重要です。
● 実際には効果があるが、期待とズレている:
入眠は早くなっているが、本人が「もっと自然に深く眠りたい」と思っている
途中覚醒は改善されているが、夢が多くて熟眠感がない
● 薬が本当に効いていない:
入眠までに1時間以上かかる
夜中に何度も目が覚める
朝の寝起きが悪く日中もぼんやりする
睡眠は主観的な感覚に大きく左右されるため、「効いていない」と感じる理由は薬以外の要因にあることも多いのです。
睡眠薬が効かないときにまず見直すこと
〇薬の種類とタイミング
睡眠薬には以下のようにさまざまなタイプがあります。
種類 | 主な目的 | 作用時間の目安 |
---|---|---|
超短時間型(ゾルピデムなど) | 入眠困難 | 2〜3時間 |
短時間型(ブロチゾラムなど) | 中途覚醒 | 4〜6時間 |
中間型(フルニトラゼパムなど) | 熟眠障害 | 6〜8時間 |
長時間型(クアゼパムなど) | 早朝覚醒 | 12時間以上 |
睡眠障害のタイプと薬の選択が合っていないと、「効かない」と感じやすくなります。また、食後すぐの服用や飲酒との併用によって効果が減弱することもあります。
〇薬剤耐性や依存のリスク
長期使用により耐性(効きにくくなる)が生じることがあります。また、依存が進むと薬がないと眠れないという不安自体が不眠を悪化させる要因になります。
睡眠衛生を見直す|「薬以外」でできること
薬に頼りすぎず、まず取り入れるべきなのが「睡眠衛生(sleep hygiene)」です。これは睡眠の質を高める生活習慣や環境づくりのこと。以下に代表的な項目を紹介します。
「眠くなってから寝床に入る」:
布団の中でスマホを見ながら「そのうち眠くなるかな」と待つのはNG。眠気を感じてから寝床に向かうことで、ベッドと「眠る行為」の結びつきが強化されます。
「日中の活動量を増やす」:
運動不足は睡眠の質を下げます。朝の光を浴びて、午前中に軽く散歩や体操をするだけでも、夜の眠気が自然に訪れやすくなります。特に高齢者では、「昼間にぼーっとしている時間」を減らすだけでも効果的です。
「午後のカフェインを控える」:
コーヒーや紅茶だけでなく、緑茶やチョコレートにもカフェインは含まれます。午後2時以降はカフェインを避けるのがベターです。
「就寝前のルーティンを決める」:
毎晩同じ行動を繰り返すことで、体が「これから眠る時間だ」と学習します。
例:
お風呂 → ストレッチ → 歯磨き → 読書(スマホ以外)
リラックス音楽 → 深呼吸 → アロマ
「寝る直前のスマホやテレビをやめる」
ブルーライトはメラトニンの分泌を妨げ、脳を覚醒状態にします。就寝1時間前にはスマホを手放し、間接照明の落ち着いた空間で過ごしましょう。
不眠症の背景には「認知の歪み」もある
睡眠薬が効かないと悩む人の中には、「〇時間眠らなきゃダメ」という思い込みが強いケースがあります。これを「睡眠に対する認知のゆがみ」といいます。
・「寝つけないとまた明日も辛い」と考えるほど緊張して眠れなくなる
・「絶対に8時間眠らないと病気になる」という誤解
実際には、睡眠時間が短くても日中元気に過ごせていれば問題ない場合も多く、心理的な不安が不眠を悪化させていることもあります。
睡眠薬を使わない治療法もある|CBT-Iとは?
認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)は、不眠症治療の第一選択とされる非薬物療法です。
・認知のゆがみを修正
・睡眠日誌をつけて習慣を可視化
・睡眠制限法や刺激制御法などのテクニック
日本でも医療機関やアプリで受けられるようになってきています。薬に頼らず眠れるようになりたい人には特におすすめです。
それでも眠れない場合はどうする?
以下のような症状がある場合、自己判断で薬を増やさず、主治医に相談することが必要です。
・数週間たっても入眠困難が続く
・睡眠薬の量を増やしても効果がない
・眠れても日中の眠気が強い(睡眠時無呼吸症候群の可能性も)
他の薬剤(抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など)との相互作用や、睡眠障害以外の疾患(うつ病、認知症、甲状腺機能異常など)が隠れていることもあります。
「眠れない」は生活全体の見直しから
睡眠薬が効かないと感じるとき、まずは薬の量や種類ではなく、生活習慣や環境の見直しから始めてみましょう。
・睡眠薬の「効かない」は生活要因が関与することが多い
・「眠いときだけ寝床に入る」「日中に活動する」などの習慣が大切
・認知行動療法(CBT-I)は非薬物療法として有効
・睡眠に対する「思い込み」が不眠を悪化させることもある
薬に頼るだけでなく、「眠る力を自分で取り戻す」ことを意識した対処が、質の高い睡眠への第一歩です。