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使い過ぎると効かなくなる?
公開. 更新. 投稿者:花粉症/アレルギー.この記事は約3分8秒で読めます.
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ダウンレギュレーションと薬の関係

「前はよく効いたのに、最近この薬が効かない気がする」
そんな経験をしたことはありませんか?
薬が効かなくなる理由には様々なものがありますが、その一つに「ダウンレギュレーション」という現象があります。
ダウンレギュレーションとは?
ダウンレギュレーションとは、細胞表面にある「受容体(レセプター)」の数が減少する現象のことです。
薬の多くはこの受容体に結合して効果を発揮します。
しかし、同じ薬を何度も繰り返し使うことで、体は刺激に「慣れ」、受容体を減らすことで反応を鈍くすることがあります。
言い換えると、
「いつも叩かれると、次第に痛みに鈍くなる」ような生体の適応反応です。
なぜ受容体が減るのか?
体にとっては、薬の作用も「刺激」のひとつです。
特定の受容体が何度も刺激されると、細胞は
「これは刺激が強すぎる」
「過剰な反応を防がないと危険だ」
と判断し、受容体を細胞の表面から取り込み、数を減らします。
これがダウンレギュレーションのメカニズムです。
身近な例:点鼻薬による薬剤性鼻炎
最もわかりやすい例の一つが、血管収縮成分を含む点鼻薬です。
点鼻薬の仕組み
市販の点鼻薬には、ナファゾリンやテトラヒドロゾリンなどの交感神経刺激薬が含まれています。
これらは鼻の粘膜の血管を収縮させ、鼻づまりを即効的に改善する作用があります。
なぜ効かなくなるの?
連用すると、鼻の血管に存在するα受容体が刺激され続け、やがて減少してしまいます(ダウンレギュレーション)。
結果として…
・点鼻薬を使っても効かない
・さらに血管が広がって鼻づまりがひどくなる
・薬をやめられなくなる(薬剤性鼻炎)
こうした悪循環が生まれるのです。
他にもある!ダウンレギュレーションが関係する薬
●インスリンやGLP-1作動薬(糖尿病治療薬)
高血糖状態が長く続いた患者では、インスリン受容体の数が減少し、インスリンが効きにくくなることがあります。
また、GLP-1作動薬も過剰な刺激によって受容体の感受性が低下する可能性が報告されています。
●ベータ刺激薬(気管支拡張薬)
喘息などに使われる吸入型のβ2刺激薬(サルブタモールなど)も、過度な使用で効果が低下することがあります。
β2受容体が減少すると、薬に対する反応が鈍くなり、発作時に薬が効かないという深刻な問題につながります。
●オピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)
痛み止めとして使われるモルヒネなどのオピオイドも、継続使用でμオピオイド受容体が減少し、耐性(トレランス)が形成されます。
そのため、同じ量では効かず、より多くの薬が必要になるという問題が生じます。
アップレギュレーションとの違い
ダウンレギュレーションの逆に、受容体の数が増える現象もあります。これをアップレギュレーションと呼びます。
例えば…
β遮断薬(プロプラノロールなど)を急に中止すると、増えていた受容体が一気に刺激されてリバウンド現象を引き起こします。
薬の中止や変更時には、こうした反応も考慮する必要があります。
ダウンレギュレーションを防ぐには?
薬は「最小限・最短期間」で
慢性的な使用を避け、必要なときだけ適量を使うことが重要です。
医師・薬剤師と相談
効かなくなったと感じた場合は、むやみに薬の量を増やさず、医療者に相談を。
薬に頼らない対策も併用
例えば鼻づまりであれば、蒸気吸入、加湿、アレルゲンの除去など、生活環境の改善も大切です。
ダウンレギュレーションは「体の自己防衛反応」
薬の効きが悪くなると、「自分には効かない体質なんだ」と落ち込んだり、つい量を増やしたくなったりします。
しかし、実はそれは体が過剰な刺激から自分を守ろうとしている自然な反応です。
「効かない=もっと使う」ではなく、「効かない=見直す」という視点が必要です。
まとめ
・ダウンレギュレーションとは、薬の刺激に対して受容体の数が減る生体反応のこと
・点鼻薬、気管支拡張薬、鎮痛薬、糖尿病治療薬などに関係する
・使いすぎると効かなくなるだけでなく、副作用や依存のリスクも高まる
・予防には正しい使用法と医療者との連携が不可欠
薬は「使うこと」よりも「使い方」が大切です。
日々の服薬が効果的で安全なものであるために、自分の薬の使い方を見直してみませんか?