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臭いのしない湿布?セルタッチは無香性
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約4分46秒で読めます.
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臭いのしない湿布ってある?

「この湿布、臭くないやつにしてくれませんか?」
薬局で投薬していると、患者さんから時折こう言われることがあります。
「この湿布、臭いのしないやつに変えられませんか?」
一見、ささやかな希望のように思えますが、湿布の“におい”問題は、実は処方薬変更の相談件数でも上位に入るものの一つ。特にメントールやハッカの刺激臭が苦手な方にとっては、日常生活に支障が出るほど深刻なこともあります。
「それなら病院で言ってほしい…」という薬剤師側の本音もあるかもしれませんが、現場では患者の生活の質(QOL)を考慮して、無香性のパップ剤への変更を検討することになります。
湿布のにおい=メントール?なぜ湿布は臭うのか
● 湿布の成分構成と「冷感」
湿布(パップ剤やテープ剤)には、消炎鎮痛成分のほかに、使用感や吸収性を高めるための基剤や添加物が含まれています。その中でも、冷感刺激を与える目的でよく配合されるのがメントールやハッカ油(l-メントール)です。
メントールには以下のような作用があります:
・冷感刺激による疼痛緩和
・局所血管収縮による炎症軽減
・皮膚透過性向上(薬剤の吸収を助ける)
しかし、メントールの強烈な香りが苦手な方にとっては、湿布の使用自体がストレスになることも。特に高齢者、化学物質過敏症の患者、香りに敏感な子どもなどでは、においの問題が服薬アドヒアランスに影響することもあります。
「無香性湿布」として知られるセルタッチパップとは?
無香性の湿布としてまず挙がるのが、「セルタッチパップ」です。
● セルタッチパップ(成分:フェルビナク)
・薬効分類名:経皮鎮痛消炎パップ剤(無香性)
・メントールやハッカ油などの芳香成分は無配合
・基本的には無臭
・冷感刺激も少ない
患者満足度も高く、「湿布のにおいがイヤ」という要望に対応できる数少ない選択肢として重宝されています。
他にもある?無香性またはにおい控えめな湿布剤
セルタッチパップ/テープの他にも、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書検索で、「外皮用薬(鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤)」、「無香性」または「無臭性」で検索すると、以下の薬がヒットした。
・ナボールパップ
・フェルビナクパップ70mg「NP」
・フェルビナクパップ70mg「ユートク」
無香を標榜していても、敏感な人はわずかな臭いを感じるので、あまりそこをアピールしてもクレームにつながるので、あえて言うことは無い。
モーラステープやロキソニンテープは「香りあり」
ここでよく比較されるのが、使用頻度の高い湿布剤である以下の製品です。
● モーラステープ
・成分:ケトプロフェン
・メントール入り
・光線過敏症の注意が必要
● ロキソニンテープ
・成分:ロキソプロフェン
・メントール配合
・香りの強さは製品によって異なるが、冷シップ系でにおいが気になる患者も多い
● ボルタレンテープ
・成分:ジクロフェナクナトリウム
・メントール配合
・においも冷感も強めな傾向
このように、いわゆる「冷感湿布」は香料成分がしっかり入っており、においが気になる患者には不向きなケースもあります。
「病院で言ってほしい」は本音。でも…
患者から「臭いがイヤだから変えてほしい」と言われると、薬局側としては「それなら病院で言ってほしい」というのが本音です。
ただし、現実にはこうした要望は薬局で受けることが多く、以下のような対応が求められます:
・処方意図の確認(鎮痛効果を優先しているのか、冷感効果が必要なのか)
・疑義照会による変更可否の確認
・成分変更の影響(例:ケトプロフェン → フェルビナク)についての薬剤師の判断
・アレルギー歴や光過敏症の既往の確認
特に高齢者施設や在宅患者では、においが周囲に与える影響も考慮されるため、「無香性湿布をあえて選ぶ」という処方意図もあります。
薬剤師としてできるアプローチ
香りの問題は感覚的なものであり、客観的評価が難しいため、薬剤師としては患者と丁寧に対話することが重要です。
● ヒアリングすべきポイント
・どの程度のにおいで不快なのか
・どの部位に使用する予定なのか
・冷感刺激の有無も気になるのか
・過去に使用して問題なかった湿布はあるか
● 提案できる内容
・セルタッチなど無香性湿布の選択肢
・ゼポラスやナボールなど、においが控えめな製品の紹介
・テープ剤とパップ剤の使用感の違い(肌ざわり、剥がれやすさ)
湿布は「香り」も効能の一部?
・湿布のにおいは主にメントールやハッカ油によるもの
・薬剤師としては、においの問題も患者のQOLとアドヒアランスに影響すると捉える
・処方変更の判断が必要な場合は、疑義照会とリスク評価をセットで行う
冷感湿布では、メントールの香りが「効いている気がする」という心理的なプラセボ効果もあり、単純に無臭が良いとも言い切れません。しかし、香りによって使用を断念してしまうほどならば、それは立派な“副作用”とも言えるでしょう。
薬剤師は、成分や効果の知識だけでなく、「使う人の快適さ」や「生活への影響」までを考慮した対応が求められます。
「においのない湿布がいい」という小さな声の背景には、患者の日常の不便が隠れているかもしれません。