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コラーゲンは飲んでも効かない?
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約4分21秒で読めます.
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コラーゲンは飲んでも効かない?

「コラーゲンを摂れば、お肌がプルプルになる」
「コラーゲンドリンクを飲み続ければ、ハリのある若々しい肌が手に入る」
そんなキャッチコピーを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
健康食品や美容業界で根強い人気を誇る“コラーゲン”。
ゼリーやグミ、ドリンク、サプリメントとして市場にあふれています。
しかし――
「飲んでも意味がない」
「結局は分解されてしまうだけでしょ?」
という懐疑的な声も多く存在します。
果たして、コラーゲンを飲むことにどれほどの効果があるのでしょうか?
コラーゲンとは何か?
まず、コラーゲンとは何者なのでしょうか。
・コラーゲンは、たんぱく質の一種
・皮膚・軟骨・骨・血管・腱・角膜などに広く分布
・体内の全たんぱく質の約30%を占める構造たんぱく質
・細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きを持ち、組織の弾力や強度を保つ
とくに真皮(肌の内部層)や関節軟骨では、コラーゲンの量が美しさ・柔軟性・耐久性を大きく左右します。
しかし、加齢とともにコラーゲンは減少・変性します。
40代以降では合成量が著しく低下し、シワ・たるみ・関節のこわばりなどが現れやすくなるのです。
コラーゲンを「飲めば補える」という誤解
ここで出てくるのが、「だからこそ、飲んで補えばいい!」という発想です。
確かに理屈はわかります。
コラーゲンが足りないなら、外から入れればいい。
でも、私たちの体はそんなに単純ではありません。
コラーゲンを飲んでも、そのまま“肌”にはならない
飲んだコラーゲンは、体内でそのまま吸収されて肌に届くわけではありません。
この点が最大の誤解であり、よくある「飲んでも意味ない」論の根拠でもあります。
消化の仕組みから考える
食事やサプリメントで摂取したコラーゲン(たんぱく質)は、胃や腸で以下のように分解されます。
・消化酵素(ペプシン、トリプシンなど)により分解
・ペプチド → ジペプチド → アミノ酸 にまでバラバラにされる
・小腸の絨毛から吸収されて血中へ移行
・必要に応じて肝臓などで再利用(再合成)
つまり、飲んだコラーゲンは“一度アミノ酸に分解された上で”体に利用されるのです。
「皮膚のコラーゲンが減ったからコラーゲンを飲んで補充」
というのは、「崩れた家にレンガを投げれば家が建つ」と言っているようなものです。
ではコラーゲン摂取に意味はないのか?
ここからが重要なポイントです。
「コラーゲンがアミノ酸に分解されるなら、意味ないんじゃないの?」
たしかに一理あります。
ですが、分解された後にどう再構成されるかという点に着目すれば、話は変わってきます。
コラーゲン特有のアミノ酸構成
コラーゲンは、以下のようなアミノ酸を多く含みます。
・グリシン
・プロリン
・ヒドロキシプロリン
これらは体内で他のたんぱく質にはあまり含まれず、コラーゲン特有の構造に関与しています。
そのため、体が「今、コラーゲンを作りたい」という状態であれば、
材料として供給されることが有利に働く可能性があるのです。
最近では、コラーゲンを酵素分解して小さなペプチドにした「コラーゲンペプチド」が利用されています。
・ジペプチドやトリペプチドの形で吸収される
・一部はそのまま血中に移行し、標的組織(皮膚や関節)に届く可能性
・生理活性(細胞刺激、コラーゲン産生促進など)も示唆される
実験報告例:
・ヒト試験で皮膚の水分量の増加や弾力性の改善
・骨密度の維持に有効というデータもあり
もちろん、これらはまだ限られた研究でありエビデンスは発展途上です。
しかし、「飲んでもまったく意味がない」と断言するには早計といえます。
ヒアルロン酸、グルコサミンとの共通点と違い
コラーゲンに似たサプリメントとして、
・ヒアルロン酸
・グルコサミン
・コンドロイチン
なども有名です。
これらもすべて、体内で一度分解されてから吸収されるため、
「飲んでも効かない」と言われがちです。
しかし、これらには共通する事実があります。
・それでも効果が報告された臨床試験が存在する
・単独ではなく、他の成分との相乗効果もありうる
・吸収後に直接作用するのではなく、“材料”として貢献する可能性がある
つまり、「効く・効かない」ではなく、「どう効く可能性があるか」という視点が大切です。
食事からの摂取との違い
コラーゲンは、ゼラチン質を多く含む食品にも含まれています。
・手羽先
・鶏皮
・豚足
・フカヒレ
・牛すじ
・魚の皮や骨つき魚の煮こごり
しかし、これらはあくまで一般的なたんぱく質源であり、
「コラーゲンペプチド」のような精製・分解された形ではありません。
一方で、日常的にこれらを摂る人と、全く摂らない菜食主義者とを比較すると、
肌の状態や骨の強度に差が出るかといえば、明確なデータは乏しいのが実情です。
つまり、食品から摂取する程度では過度な期待は禁物ですが、
健康的な食生活の一環としては問題ありません。
「飲むコラーゲン」との付き合い方
サプリメント売場や相談窓口では、
「飲むコラーゲンってどうなんですか?」という質問を受けることがあります。
そのとき、私たち薬剤師が心がけたいのは、
・「効かない」と頭ごなしに否定しない
・「コラーゲンはあくまで“素材”であり、再構築には栄養・ホルモン・生活習慣も関与する」と説明する
・価格や継続性とのバランスを重視する
・期待しすぎない現実的なスタンスを持つ
といったことです。
美容サプリは「気持ちの問題」「自己満足」と言われがちですが、
それでも本人が納得して継続できるものであれば、それは価値ある選択とも言えます。
・コラーゲンはたんぱく質であり、消化吸収されてアミノ酸になる
・そのまま皮膚のコラーゲンになるわけではない
・ただし、ペプチドの形で摂取すれば再構築に有利な可能性あり
・ヒアルロン酸やグルコサミンと同様、“素材”としての価値をどう活かすかがカギ
・適度な期待と継続が、サプリ活用の現実的な姿勢