2024年4月29日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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CRPが高ければ抗菌薬を使う?

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CRPが高ければ抗菌薬?

抗菌薬はいつまで続ければいいのだろうか。
CRPが陰性化するまで治療を継続するという医師もいるようです。

しかし、抗菌薬は抗炎症薬ではありません。
症状や身体所見から回復がみられるのであれば、抗菌薬は中止してもよい。

CRPとは?

C反応性タンパク質の略。
肺炎球菌の細胞壁に存在するC多糖体と反応(結合)するタンパク質で、炎症や組織破壊が起きると血中濃度が増加するため、炎症マーカーとして利用されています。

CRPの基準値は?

0.3mg/dl:基準値
0.4~0.9mg/dl:軽い炎症などが検討される範囲
1.0~2.0mg/dl:中程度の炎症などが検討される範囲
2.0~15.0mg/dl:中程度以上の炎症などが検討される範囲
15.0~20.0mg/dl:重体な疾患の発症の可能性が検討される範囲

リウマチ患者でも、この数値を教えてくれることがあるので覚えとこう。

抗菌薬は飲み切らないとダメ?

抗生物質は症状が治まっても、飲みきるようにと指示することが多いです。

菌が残った状態で服用を止めると、「耐性菌ができるから」とか「自己判断で服薬を止めても症状がぶり返すことがあるから」とか言われます。

しかし、基本的には症状が治まれば薬は止めてもいいと思います。
元気になれば、体の免疫力で病原菌はやっつけられるし、元気な体に不必要な抗生剤を続けるほうが、常在菌が耐性化してしまいます。

溶連菌の場合は抗菌薬は飲み切らないとダメ

でも、溶連菌は別です。合併症が怖いから。
処方どおりお飲みください。

溶連菌感染症にはペニシリン系で10日間が基本です。
ペニシリン系抗菌薬を10日間と、比較的長期間投与する理由は、①症状の緩和、②続発症としてのリウマチ熱や急性糸球体腎炎の発症の予防、③周囲への感染拡大の防止、があげられる。

一般に、内服を開始して24〜48時間以内には解熱を認め、咽頭痛などの臨床症状も緩和される。

しかし、その時点では十分に除菌されておらず、内服をやめた時点で再燃しやすいことが、多くの研究で明らかにされている。

溶連菌感染症は、セフェム系、マクロライド系、リンコマイシン系も有効とされている。

S.pyogenesにはペニシリン耐性株はほとんどないとされているが、ペニシリン系抗菌薬を投与して解熱しない場合は、βラクタマーゼ産生菌の共存を考慮し、セフェム系やペニシリン系とβラクタマーゼ阻害薬の合剤に変更する場合もある。

溶連菌感染症に対する抗菌薬の選択や内服期間に関しては、小児科医や感染症専門医の間でも議論がある。

実際、10日間も内服を続けるのは小児にとっては負担が大きいため、セフェム系を5日間内服するという、半分の服用期間で済む投与法が提案されている。

アジスロマイシン水和物のように長期間作用型のマクロライド系なら短期間(1日1回、3日間)の内服でもよく、より理想的ともいえる。

だが、ペニシリン系以外の抗菌薬は、リウマチ熱などの続発症の発症予防に対するエビデンスが十分に確立されておらず、日本ではマクロライド耐性の溶連菌が15%以上見られるとの報告もあり、第一選択とするのには迷う。

無事に軽快した後は、2〜3週間後に尿検査を実施し、急性糸球体腎炎の合併をチェックすることが多い。

溶連菌感染症後糸球体腎炎は抗菌薬で予防できない

溶連菌感染症後糸球体腎炎については、抗菌薬治療による発症予防の根拠はないとされている。

中途半端に抗菌薬を使うと耐性菌が増える?

MSWというのをご存知でしょうか。

メディカル・ソーシャル・ワーカーではありません。
ミュータント・セレクション・ウインドウ。

MPCとMICの間の濃度領域で、耐性菌選択濃度域といいます。
MICはよく聞きますね。最小発育阻止濃度。
菌の発育を阻止する抗菌薬の最小濃度です。

MPCは変異株出現阻止濃度です。
この濃度以上の抗菌薬を投与すれば、耐性菌の出現を抑えることができます。

このMICとMPCの間の中途半端な用量で抗菌薬を投与すると、通常の菌は死滅するけれど、耐性菌だけが選択されて生き残るという危険な領域ともいえます。

耐性化に使うエネルギー

耐性菌は耐性化に使うエネルギーが必要なため、耐性を持たない菌よりも弱いという話。

抗生物質を使うと、菌はその抗生物質に対抗するために耐性を獲得し、耐性菌が生まれます。
薬剤耐性のメカニズムは、薬を分解する酵素を作り出したり、薬をポンプで細胞の外に追い出したり、薬の標的になっている菌の構造を変化したりと様々です。

しかし、薬が無い状態のとき、その耐性化は無駄なエネルギーであり、必要ありません。
そのため、耐性を持たない菌のほうがエネルギー的に有利なため、抗生物質が無い状態が続けば、耐性菌は減っていきます。

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薬剤師

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先生

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4 件のコメント

  • くり のコメント
         

    はじめまして。ドラッグストアでアルバイトをしているものです。楽しく読ませてもらっています。記事がたくさんで、すごいですね!
    浅学でお恥ずかしいのですが、溶連菌以外であれば、症状が治れば薬は止めてもいいというソース(論文など)はございますか?

    もしよろしければ、ご教示いただけましたら幸いです。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    症状が治れば抗生剤の服用をやめてもいいのではないか?というのは個人的な見解であり、これといった論文ソースはございません。
    抗生剤の勉強会でちらりと聞いたような記憶がありますが。

  • くり のコメント
         

    ご回答くださりありがとうございます。以前、抗生剤で気になる使い方をしている患者さんがいたので、上記の記事内容と関連があるのかと思い質問させていただきました。ありがとうございます!勉強になりました。

  • 田中太郎 のコメント
         

    急性膀胱炎における抗菌剤の臨床的検討の方法
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1928/69/1/69_1_15/_pdf
    膀胱炎に対してですが、やや親しい論文を発見しました

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2023年09月14日発売

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座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
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