2025年2月9日更新.2,490記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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抗コリン薬の分類

抗コリン薬一覧

薬効分類薬効分類薬効分類一般名商品名
抗ムスカリン薬ベラドンナアルカロイドアトロピン硫酸塩水和物アトロピン硫酸塩水和物原末
アトロピン代用薬鎮痙薬ブチルスコポラミンブスコパン
チメピジウムセスデン
メペンゾラートトランコロン
ピペリドレートダクチル
プロパンテリンプロ・バンサイン
ブトロピウムコリオパン
チキジウムチアトン
消化性潰瘍治療薬ピレンゼピンピレンゼピン塩酸塩錠25mg
気管支拡張薬チオトロピウムスピリーバ
イプラトロピウムアトロベント
グリコピロニウムシーブリ
ウメクリジニウムエンクラッセ
過活動膀胱治療薬トルテロジンデトルシトール
ソリフェナシンベシケア
イミダフェナシンウリトス/ステーブラ
オキシブチニンポラキス、ネオキシテープ
プロピベリンバップフォー
フェソテロジントビエース
パーキンソン病治療薬トリヘキシフェニジルアーテン
ビペリデンアキネトン
ピロヘプチントリモール
散瞳薬トロピカミドミドリンM
シクロペントラートサイプレジン
多汗症治療薬ソフピロニウムエクロックゲル
オキシブチニンアポハイドローション

抗コリン薬

抗コリン薬は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)を遮断する抗ムスカリン薬と、ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)を遮断するニコチン受容体遮断薬(抗ニコチン薬)に分類されます。

ニコチン受容体に作用する薬には筋弛緩薬として使われる注射剤はあるが、調剤薬局で扱う抗コリン薬は全て抗ムスカリン薬である。

抗ムスカリン薬は、天然のベラドンナアルカロイドであるアトロピン、スコポラミンと、合成物質であるアトロピン代用薬に大きく分けられる。
とはいえ、アトロピンやスコポラミンが現在臨床利用されることはほぼなく、ロートエキスが稀に使われるくらいだろう。

アトロピン代用薬は主な臨床適応で分類しているが、各疾患治療薬の中の分類では、いずれも抗コリン薬として分類されることが多い。
様々な疾患で使われるため、併用による副作用には注意する必要がある。

また、三環系抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など、抗コリン薬以外にも抗コリン作用を持つ薬物も多く、注意が必要である。

第三級アミンと第四級アンモニウム

抗コリン薬を第三級アミンと第四級アンモニウム塩などの構造式で分類しているものもみられる。

第三級アミンの薬は脂溶性が高いため、血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)を通過しやすく、第四級アンモニウム化合物の薬は脂溶性が低いためBBBを通過しにくい。

パーキンソン病治療薬などの中枢神経に働く必要のある薬はBBBを通過する必要があるので第三級アミンで、気管支拡張薬といった末梢組織の疾患に使う薬は第四級といった違いはあるが、覚えておく必要はないだろう。

ムスカリン受容体

ムスカリン受容体には、M₁受容体、M₂受容体、M₃受容体、M₄受容体、M₅受容体の5つのサブタイプがある。

各薬物が目的とする疾患に応じて作用する受容体が異なる。

各受容体の特徴は、
M₁受容体:胃や脳、自律神経系、線条体、大脳皮質、海馬に存在。大脳皮質や海馬に多く存在し、記憶や学習に関与している。
M₂受容体:心臓、自律神経系、腸管平滑筋、後脳、小脳に存在。主に心臓に分布し、心臓機能を抑制的に調節している。
M₃受容体:平滑筋や腺に存在し、アセチルコリンによる気道平滑筋の収縮に関与している。

消化性潰瘍治療薬

消化性潰瘍治療薬のメインはPPIで、その次にH2ブロッカーが使われており、抗コリン薬が胃酸分泌抑制を目的に使われることは今や無い。

胃の副交感神経節のM₁受容体を選択的に遮断するピレンゼピンは選択的ムスカリン受容体拮抗薬として分類されている。
M₁受容体を遮断することで、プロトンポンプへの刺激を抑制し、胃酸分泌を抑制する。M₁受容体を選択的に遮断するため、M₂受容体遮断による心悸亢進作用などは少ない。

選択性が低く主に鎮痙薬として使用される抗コリン薬は、鎮痙作用を示す用量よりも高用量で酸分泌抑制作用を示す(胃に存在するM₁受容体、M₃受容体遮断作用による)。しかし、非選択的抗ムスカリン薬であるため、多臓器にわたって存在するM₂、M₃受容体も遮断し、副作用が各臓器に発現しやすく、消化性潰瘍に使われることは少ない。
鎮痙薬は多くが血液脳関門(BBB)を通過しにくい第四級アンモニウム化合物であるため、中枢性の副作用は少ない。チキジウムは、副交感神経末端のムスカリン受容体に選択的に作用し、神経節にはほとんど作用しないため、その他の鎮痙薬と比較して副作用が少ない。

気管支拡張薬

気管支拡張薬として用いられる抗コリン薬は、M₃受容体を遮断して気管支平滑筋の収縮を抑制する。
作用時間から短時間作用型(SAMA)と長時間作用型(LAMA)に分類される。
SAMA:イプラトロピウム
LAMA:チオトロピウム、グリコピロニウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム

一般に抗コリン薬は作用の発現が遅いため、長期管理薬としてLAMAを用いることが多い。

第四級アンモニウム化合物であり、呼吸器粘膜から吸収されにくい。そのため、呼吸器に局所的に作用し、全身性の副作用が少ないが、全身への作用が小さいため、気道の粘液分泌抑制作用は弱い。

過活動膀胱治療薬

ムスカリン受容体のうち、主に膀胱の収縮に関与しているのは、膀胱括約筋に存在するM3受容体と副交感神経後膜に存在し膀胱の神経終末からのアセチルコリン遊離に関与しているM1受容体である。

膀胱平滑筋のM3受容体は、アセチルコリンに刺激されることで膀胱収縮を誘発する。

イミダフェナシン(ウリトス、ステーブラ)、コハク酸ソリフェナシン(ベシケア)、プロピベリン塩酸塩(バップフォー)、オキシブチニン塩酸塩(ポラキス)にM3受容体選択性が認められている。
酒石酸トルテロジン(デトルシトール)は、M3受容体への親和性よりもM1、M2、M5受容体への親和性のほうが強い。

膀胱収縮だけでなく唾液成分や腸管収縮などの作用にもM3受容体は関与しており、M3受容体への作用が口渇や便秘といった副作用の発現に影響を与えている。

散瞳薬

散瞳薬は検査で用いられることが多いが、仮性近視や眼精疲労などでトロピカミドが処方されることもある。

散瞳薬がターゲットとする部位は瞳孔で、瞳孔括約筋を弛緩する。
瞳孔括約筋は、虹彩の中心にある瞳孔を輪状に取り巻く平滑筋で、M₃受容体が分布しており、散瞳薬はそこに作用する。

原発性腋窩多汗症治療薬

多汗症にも抗コリン薬が用いられる。

多汗症に用いられる抗コリン薬は、エクリン汗腺に発現するM3受容体に結合し、発汗シグナル伝達を阻害することで、発汗を抑制する。

エクロックゲルの適応症は「原発性腋窩多汗症」であり、アポハイドローションの適応症は「原発性手掌多汗症」である。
また、多汗症に適応のある内服薬に、プロ・バンサイン(プロパンテリン臭化物)がある。

多汗症に適応のない抗コリン薬でも、発汗を抑制してしまうことで体温調節を阻害し、熱中症などのリスクが高まるため、注意が必要である。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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