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特殊な用法の薬一覧
公開. 更新. 投稿者: 8,960 ビュー. カテゴリ:調剤/調剤過誤. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約2分50秒で読めます.
漸増する薬の維持量

漸増する薬、つまり少ない量から始める薬というのがある。
急に高い血中濃度にいくと、副作用のリスクが高いような薬である。
代表的なのは抗認知症薬アリセプト。維持量まで増やさないと保険で査定されるような薬は注意が必要。
アルツハイマー病に対する用法用量は、以下のようになっている。
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
「用法及び用量に関連する注意」にも念を押して以下のような記載がある。
3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと。
このような薬は、医師の「うっかり前回Do」から、初回量が続けて処方されるケースもあり、疑義照会が必要となるので、注意が必要である。
また、初回から5㎎が処方されたりする場合もあるので、注意が必要である。
ただ、高尿酸血症治療薬フェブリクにも維持量が設定されているが、
通常、成人にはフェブキソスタットとして1日10mgより開始し、1日1回経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1日1回40mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回60mgとする。
維持量まで増やさないケースがほとんどである。10㎎で続けて投与されているからといって「40㎎まで増やさなくていいんですか?」などという疑義照会をする薬剤師はいないだろう。
初回から40㎎で処方されている場合は疑義照会が必要である。
「漸増する薬」を監査するポイントは、「少ない量から始まっているか」「指示通り増量しているか」の2つのポイントから見なければならない。アリセプトは両方とも注意する必要があるが、フェブリクは主に前者に注意すればよいと思っている。
以下の薬は、初期量に注意する薬。
| 医薬品名 | 規格 | 初期量 |
|---|---|---|
| アーテン錠 | 2mg | 第1日目1mg |
| アキネトン錠1mg | 1mg | 1回1mg1日2回よりはじめ |
| アグリリンカプセル0.5mg | 0.5mg | 1回0.5mgを1日2回経口投与より開始 |
| アマリール錠 | 0.5mg、1mg、3mg | 1日0.5〜1mgより開始 |
| アリセプト錠 | 3mg、5mg、10mg | 1日1回3mgから開始 |
| アンペック坐剤 | 10mg、20mg。30mg | 1回10mgより開始することが望ましい |
| イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ | 4.5mg、9mg、13.5mg、18mg | 1日1回4.5mgから開始 |
| イフェクサーSRカプセル | 37.5mg、75mg | 1日37.5mgを初期用量 |
| ウリアデック錠/トピロリック錠 | 20mg、40mg、60mg | 1回20mgより開始 |
| エクセグラン錠100mg | 100mg | 最初1日100〜200mgを1〜3回に分割経口投与する |
| エフピーOD錠2.5 | 2.5㎎ | 1 日1 回2.5mgを朝食後服用から始め |
| カーバグル分散錠200mg | 200mg | 1日に体重kgあたり100mg~250mgより開始 |
| カバサール錠 | 0.25mg、1.0mg | 1日量0.25mgから始め(パーキンソン病) |
| グリコラン錠250mg | 250mg | 1日量500mgより開始 |
| グリミクロン錠 | 20mg、40mg | 1日40mgより開始 |
| サインバルタカプセル | 20mg、30mg | 1日20mgより開始 |
| ジェイゾロフト錠 | 25mg、50mg、100mg | 1日25mgを初期用量 |
| ジプレキサ錠 | 2.5mg、5mg、10mg | 5~10mgを1日1回経口投与により開始 |
| ジベトス錠 | 50mg | 1日量100mgより開始 |
| シュアポスト錠 | 0.25mg、0.5mg | 1回0.25mgより開始 |
| ストラテラカプセル | 5mg、10mg、25mg、40mg | 1日0.5mg/kgより開始 |
| トピナ錠 | 25mg、50mg、100mg | 1回量50mgを1日1回又は1日2回の経口投与で開始 |
| ドプスOD錠 | 100mg、200mg | 1日量100mg、1日1回の経口投与より始め |
| ドミン錠0.4 | 0.4㎎ | 1日1回0.2mg又は0.4mgを夕食後に経口投与から始め |
| トレドミン錠 | 12.5mg、15mg、25mg、50mg | 1日25mgを初期用量 |
| パーロデル錠2.5mg | 2.5mg | 1日1回1.25mg又は2.5mgを朝食直後に経口投与から始め(パーキンソン症候群) |
| パキシル錠 | 5mg、10mg、20mg | 1回10~20mgより開始〈うつ病・うつ状態〉 |
| ビ・シフロール錠 | 0.125mg、0.5mg | 1日量0.25mgからはじめ |
| ピレスパ錠 | 200mg | 初期用量1回200mgを1日3回(1日600mg)食後に経口投与 |
| フェブリク錠 | 10mg、20mg、40mg | 1日10mgより開始 |
| ペルマックス錠 | 50μg、250μg | 1日1回50μgを夕食直後2日間投与 |
| マイスタン錠 | 5mg、10mg | 1日10mgの経口投与より開始 |
| ミラペックスLA錠 | 0.375mg、1.5mg | 1日量0.375mg1日1回食後経口投与からはじめ |
| メトグルコ錠 | 250mg、500mg | 1日500mgより開始 |
| メマリー錠 | 5mg、10mg、20mg | 1日1回5mgから開始 |
| ユリス錠 | 0.5mg、1m、2mg | 1日0.5mgより開始 |
| リーマス錠 | 100㎎、200㎎ | 通常1日400〜600mgより開始 |
| リスパダール錠 | 1mg、2mg、3mg | 1回1mg 1日2回より開始 |
| リリカカプセル | 25mg、75mg、150mg | 初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口投与 |
| レミニール錠 | 4mg、8mg、12mg | 1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始 |
この中で以下の薬は、維持量にも注意する薬。これらの薬は厳しく査定されがち。
| 医薬品名 | 規格 | 維持量 | 用法及び用量に関連する注意 |
|---|---|---|---|
| アリセプト錠 | 3mg、5mg、10mg | 1日1回5㎎(10㎎) | 3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと。 |
| イクセロンパッチ/リバスタッチパッチ | 4.5mg、9mg、13.5mg、18mg | 1日1回18mg | 1日18mg未満は有効用量ではなく、漸増又は一時的な減量を目的とした用量であるので、維持量である18mgまで増量すること。 |
| ペルマックス錠 | 50μg、250μg | 1日750〜1250μg | 本剤の投与は、少量から開始し、消化器症状(悪心、嘔吐等)、血圧等の観察を十分に行い、慎重に維持量まで増量すること。 |
| ミラペックスLA錠 | 0.375mg、1.5mg | 1日量1.5〜4.5mg | 本剤の投与は、少量から開始し、幻覚等の精神症状、消化器症状、血圧等の観察を十分に行い、慎重に維持量(標準1日量1.5〜4.5mg)まで増量すること。 |
| メマリー錠 | 5mg、10mg、20mg | 1日1回20mg | 1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を抑える目的であるので、維持量まで増量すること。 |
| レミニール錠 | 4mg、8mg、12mg | 1日16mg(1日24mg) | 1日8mg投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として4週間を超えて使用しないこと。 |
副作用も含めた医師の判断があるので、必ずしも漸増しなければならないというわけではないが、「保険請求上査定される可能性があるので念のため確認させていただきました」という形での疑義照会はすべきであろう。



