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ARBは腎臓にやさしい?
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約5分58秒で読めます.
15,910 ビュー. カテゴリ:ARBで腎機能悪化?
腎不全の高血圧患者に、ACE阻害薬やARBなどのレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬が処方されているケースは多い。
これらの薬は、腎臓の糸球体の輸出細動脈を拡張させ、糸球体内圧を下げることで、腎保護効果をもたらすとされてきたためです。
また、高血圧は,CKDの進展および心血管疾患発症の危険因子である。
RAS抑制薬(ACE阻害薬,ARB)によりRASを抑制すると、降圧効果だけでなく、糸球体内圧の低下作用とそれに引き続く尿タンパク減少効果、糸球体硬化病変の進展抑制など腎保護作用を示し、CKD進展を抑制するとともに、心血管疾患の合併を予防する。
しかし、特に高齢者では、腎動脈狭窄や腎細動脈効果による虚血性腎症の合併頻度が高く、RA系阻害薬により腎血流量が減少することでかえって、高カリウム血症や、クレアチニン上昇などを来す恐れがあることが、近年、腎臓専門医の間で指摘されている。
「CKDステージG3b~5診療ガイドライン2017」には、75歳以上の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧療法の第一選択薬として、腎血流低下リスクの少ないカルシウム拮抗薬が望ましいと明記されている。
ARBの腎保護作用
腎臓の重要な機能である血液ろ過は糸球体で営まれていますが、その前後の輸入・輸出細動脈が糸球体内圧をコントロールしています。
アンジオテンシンⅡ(AⅡ)やノルエピネフリンは輸入・輸出細動脈ともに収縮させて、糸球体内圧を上昇させます。
CKDや糖尿病では、輸入細動脈の拡張が起こって、全身血圧が糸球体内に伝達される結果、糸球体内圧が上昇し、糸球体の過剰ろ過が起こり、蛋白などが漏出します。
ACE阻害薬やARBはAⅡの作用を抑制することによって、輸出細動脈を拡張して、糸球体内圧を低下させます。
また全身血圧を低下させることによっても糸球体内圧が低下し、結果として糸球体過剰ろ過が是正され、腎保護作用を示します。
糖尿病性腎症とアンジオテンシンⅡ
糖尿病性腎症では動脈硬化病変を来す例が増えており、これには輸入細動脈の血管が細くなり腎血流量(糸球体内圧、GFR)が低下しているケースも多く含まれていると推測される。
これに対してアンジオテンシンⅡは代償的に作用し、輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧及びGFRを上昇させて腎機能を維持していると考えられる。
そのため、RA系を強く阻害すると糸球体内圧とGFRが過度に低下する結果、血清クレアチニンが急激に上昇して急性腎障害(AKI)を起こしたり、腎症を悪化させる危険性が高くなる。また、腎障害にともなって高カリウム血症、低血圧などが発症すると推測される。
ARBは腎臓にやさしい?
ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)には、腎臓の輸入細動脈に比べ、輸出細動脈を強く拡張する作用があります。
これにより、糸球体内圧が低下し、長期的には糸球体の損傷を抑制します。
レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬が「腎保護作用」を持つといわれるのは、このためです。
一方、糸球体内圧が低下すると、糸球体濾過圧や腎血流量も低下します。
そのため、RA系阻害薬の投与開始直後は、一時的にSCrの上昇やGFRの低下が見られます。
ただし、高齢者に多い腎動脈狭窄症では、アンジオテンシンⅡは輸出細動脈を収縮させてGFRを維持する方向に働いています。
RA系阻害薬でこの作用を抑えてしまうと、腎虚血を招く恐れがあるので、高齢者にRA系阻害薬を用いる場合は、少量から開始することが推奨されます。
ラジレスで腎機能悪化?
レニン・アンジオテンシン系(RA系)を阻害する薬剤では全身血圧の低下及び腎の糸球体濾過圧が低下するため、腎機能が悪化するおそれがある。
アリスキレンフマル酸塩もRA系を抑制するため、同様の機序で腎機能障害を発現することが推測される。
RA系阻害薬は、以前は進行した腎機能障害患者には禁忌とされてきたが、今では腎機能保護作用が腎機能低下例で顕著であるとされている。
また、RA系阻害薬は心血管病の発症を抑制するが、その効果は特にCKD(慢性腎臓病)患者で大きいことが報告されている。
したがって心腎同時保護の観点からは、血清クレアチニン値が2.0mg/dL以上の場合であっても血清Cr値やK値に注意しながら少量から投与し、漸増する事が推奨されている。
このような考えから、RA系阻害薬が、一定以上の腎障害時にも投与される機会が多くなってきている。
一方、両側性の腎血管性高血圧症や、腎動脈狭窄がある症例では、血中或いは腎アンジオテンシンⅡが存在するために、輸出細動脈が収縮することにより糸球体濾過圧が保持されている。
このような場合にはRA系阻害薬を投与すると、輸出細動脈が弛緩して糸球体濾過圧が低下し、腎血流量の減少を招いてしまう。その為に、腎機能を更に悪化させる可能性がある。
アリスキレンフマル酸塩は、直接的レニン阻害薬である。
アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠへの変換を遮断し、PRA(血漿レニン活性)、アンジオテンシンⅠ及びアンジオテンシンⅡの濃度を低下させ、持続的な降圧効果を発揮する作用がある。
結果としてアンジオテンシンⅡの濃度を低下させることから、ACE阻害薬と同様に、腎障害を更に悪化させる可能性がある。
ミカルディスと腎排泄
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE阻害薬などのRA系抑制薬は、腎保護作用があり、基本的にどの薬剤も腎臓にはやさしい。
そのARBの中でも特に、ミカルディスは胆汁排泄型のARBとして有名だ。
ミカルディスの薬効分類名も「胆汁排泄型持続性AT1受容体ブロッカー」となっており、特徴的である。
ちなみに他のARBの薬効分類名は、
ディオバン:選択的AT1受容体ブロッカー
ブロプレス:持続性アンジオテンシンII受容体拮抗剤
アジルバ:持続性AT1レセプターブロッカー
アバプロ/イルベタン:長時間作用型ARB
ニューロタン:A-IIアンタゴニスト
オルメテック:高親和性AT1レセプターブロッカー
微妙にニュアンスは違えど同じような意味。
各薬剤の排泄経路と排泄率は以下のようになっている。
ニューロタン 糞65% 尿35%
オルメテック 糞65% 尿35%
ディオバン 糞80% 尿20%
ブロプレス 糞67% 尿33%
ミカルディス 糞98% 尿2%
アバプロ/イルベタン 糞80% 尿20%
アジルバ 糞64% 尿26%
基本的にはどの薬剤も肝代謝の割合が多い。
透析患者(重篤な腎機能障害のある患者)に対しての注意書きの程度は、ミカルディスも含めていずれも慎重投与となっており、差はない。
ミカルディスの腎機能に対するメリットよりも、肝機能に対するデメリットのほうが気になる。
ミカルディスの「用法・用量に関連する使用上の注意」には、
肝障害のある患者に投与する場合、最大投与量は1日1回40mgとする。
と、明確に用量制限に対する記載があり、ミカルディスを肝機能障害患者に投与する際は注意を要する。
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