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水溶性テトラサイクリンと脂溶性テトラサイクリンの違いは?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約6分6秒で読めます.
3,790 ビュー. カテゴリ:水溶性テトラサイクリンと脂溶性テトラサイクリンと金属カチオン
テトラサイクリン系ではミノマイシン以外あまり使われることはありませんが。
水溶性テトラサイクリンと脂溶性テトラサイクリンがあるようで。
その違い。
経口テトラサイクリン系薬には、水溶性のテトラサイクリン塩酸塩(アクロマイシンV)およびデメチルクロルテトラサイクリン塩酸塩(レダマイシン)、半減期の長い脂溶性のミノサイクリン塩酸塩(ミノマイシン)およびドキシサイクリン塩酸塩水和物(ビブラマイシン)がある。
いずれも、フェノール性水酸基やカルボニル基と金属カチオンとの結合によりキレートを形成すると考えられる。
ほぼすべての金属カチオンとキレート形成して難溶性となるため、消化管吸収が阻害される(薬効減弱)。
したがって、テトラサイクリン系と金属カチオン(Al、Mg、Fe、Ca、Zn)を含有している医薬品、健康食品、総合ビタミン剤などとの同時服用は禁忌である。
一般にテトラサイクリン系のキレート形成による相互作用は、テトラサイクリン系と金属含有製品との服用間隔を2~4時間以上空けることで回避できる。
これには、テトラサイクリン系のTmaxが2~4時間であることに起因すると考えられる。
また、金属含有製剤の変更が不可能で、投与間隔を空けることが患者のコンプライアンスの低下を招く場合には、投与回数が少ない脂溶性テトラサイクリンを選択したほうがよい。
牛乳とテトラサイクリン
飲食物の影響に関しては、水溶性と脂溶性テトラサイクリン系で大きな違いがある。
例えば牛乳は、わずかな量(1mmol=40mgのCa)でも、テトラサイクリンの生物学的利用率を50%にも低下させるが、脂溶性のミノサイクリンやドキシサイクリンでは、AUCをそれぞれ24%、21%低下させるのみで、臨床的な影響はほとんどないとされている。
また、牛乳と同様、食事はテトラサイクリンのAUCを59%も低下させるが、ミノサイクリンとドキシサイクリンではほとんど影響を受けないことが報告されている。
したがって、水溶性テトラサイクリン系(アクロマイシンV)では、牛乳、乳製品との同時服用を避け、空腹時(食事の1時間前または食事の2~3時間後)に服薬させるが、脂溶性テトラサイクリン系(ミノマイシン、ビブラマイシン)では、このような影響を受けにくい(ただし、脂溶性テトラサイクリン系は消化性潰瘍誘発のため、食中または食直後服用が推奨されている)。
しかしながら牛乳、乳製品の脂溶性テトラサイクリン系への影響は完全に無視できるわけではないため、Ca製剤と同様、同時服用は避けるよう指導しても問題ない。
また、ミネラルウォーターについては、ビスホスホネート系ほど注意する必要はないと思われるが、外国産などの特にCaを多く含むものは避けたほうがよいだろう。
水溶性と脂溶性
薬物の特性(水溶性抗菌薬、脂溶性抗菌薬)によって臓器への移行性は異なります。
水溶性抗菌薬は細胞外液に分布するのに対し、脂溶性抗菌薬では組織の細胞膜を通過して細胞内まで移行します。
マクロライドやクロラムフェニコール、テトラサイクリンなどは脂溶性が高いため好中球やマクロファージなどにも移行しやすく、細胞内寄生菌にも有効です。
逆に水溶性抗菌薬であるアミノグリコシド系やβラクタム系薬は細胞内寄生菌へは効果がありません。
また髄膜への移行に関しても、血液脳関門(BBB)は脂質膜としての挙動を示しますので、脂溶性抗菌薬の方が移行しやすいということになります。
テトラサイクリン系抗生物質
テトラサイクリン系薬は、1948年に米国の土壌から見つかった Streptomyces aureofaciens から発見されました。
当時治療法がなかった発疹チフスやロッキー山紅斑熱のようなリケッチア症に対して、試験管内で強力な殺菌作用が認められ、1950年代にテトラサイクリンが発売されました。
その後、炭疽菌、熱帯熱マラリア原虫などにも高い抗菌活性を有する第2世代のドキシサイクリンが、さらに幅広い抗菌活性を示すミノサイクリンが発売されました。
最近ではミノサイクリンを改良して、テトラサイクリン系薬耐性菌にも効果があるチゲサイクリンが発売されました。
テトラサイクリン系薬は、グラム陰性菌の孔を通じて受動的拡散により細胞内に入りこみ、細菌のリボソームの30Sサブユニットに可逆的に結合し、蛋白合成を阻害することにより、静菌的な活性を示します。
グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広く作用し、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマなどの細胞内寄生病原体やマラリアなどの一部の原虫にも効果はありますが、緑膿菌、Proteus spp.、 Providencia spp.などには無効です。
抗菌薬としての作用以外にも抗炎症作用、免疫抑制作用、創の修復などの作用も報告されています。
ヒト細胞の80Sリボソームは結合性が弱いため、副作用は少ない薬剤です。
しかし、リボソーム保護蛋白の発現により容易に耐性となるため、多くの菌が耐性化しています。
そのため、他の抗菌薬に優先して選択することは少なく、Vibrio属の感染症や細胞壁を持たないリケッチア、クラミジア、マイコプラズマなどの病原微生物や原虫などで選択されます。
テトラサイクリン系薬の使用頻度が低いのは、そのような理由以外にも、悪心・嘔吐、下痢などの消化器障害や光線過敏症(ミノサイクリンはまれとの報告)などの副作用があるからです。
まれですが、高用量の使用で肝の脂肪変性を来したり、腎不全患者では蛋白合成の阻害により高窒素血症を悪化させたりもします。
また、神経系の副作用もあり、良性頭蓋内圧亢進症はまれな神経系の副作用の1つです。
8歳未満の小児や妊婦への投与は、歯牙の着色・エナメル質形成不全、一過性の骨発育不全を起こすことがあるため原則使用できません。
さらに、経静脈投与では血栓性静脈炎がよく見られるとの報告もあります。
薬物相互作用としてカルシウム、マグネシウムなど陽イオンを含む制酸剤、牛乳、マルチビタミンと同時に投与するとキレートを作り、吸収されないので注意が必要です。
また、テトラサイクリン系薬の投与により腸内細菌が減少し、ワルファリンやジゴキシンの血中濃度が上昇することがあります。
テトラサイクリン系は、非定型肺炎やオウム病に用いられます。
また、東日本大震災でも発症が見られたツツガムシ病や壊死性筋膜炎(Vibrio vulnficus感染症)などには、第1選択で用いられます。
ほかの抗菌薬との併用により骨盤内炎症性症候群の治療にも用いられます。
さらに、猫に引っかかれた時に感染するパルトネラ症(ねこひっかき病)やStenotrophomonas maltphilia が原因菌の感染症などの第2選択薬として用いられます。
ドキシサイクリンは、炭疽菌によるバイオテロリズムの際の暴露後予防薬として、ミノサイクリンはST合剤アレルギーの際のノカルジアの治療としても推奨されています。
近年では、マクロライド耐性のマイコプラズマ肺炎も出現しており、今後はテトラサイクリンが第1選択の可能性もあるかも知れません。
最近、抗EGFR抗体薬などの分子標的薬の皮膚障害予防に、保湿剤とともにミノサイクリン100mg~200mg分2を使用します。
これはミノサイクリンの抗炎症作用を期待して使用しています。
また、関節リウマチや悪性疾患などの胸膜癒着術もテトラサイクリンを用いることがあります。
このように、テトラサイクリンはさまざまな作用を持ち合わせていると考えられています。
ドキシサイクリン
ドキシサイクリンは、脂溶性が高く、多くの臓器に移行します。
特に副鼻腔には良好とされていますが、胸水、骨、皮膚、痰への移行は悪いといわれています。
投与方法は、半減期も長いため、1日1~2回投与でも問題ありません。
ミノサイクリン
ミノサイクリンも移行性には優れ、前立腺、尿道、卵管、皮膚などへの移行は特に良好ですが、中枢神経への移行は悪いです。
投与方法も1日2回投与が可能です。
ミノサイクリン特有の副作用として、めまい、不随意運動があり、車の運転や機械の操作には注意が必要です。
チゲサイクリン
チゲサイクリンは、他のテトラサイクリン系薬に耐性を示す菌や嫌気性菌にも活性があり、MRSA、バンコマイシン耐性腸球菌、多剤耐性アシネトバクター、カルバペネム耐性腸内細菌科最近にも効果があります。
しかし、緑膿菌や Proteus soo.には活性がありません。
広域なスペクトラムなため、乱用は避けるべきです。
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