記事
抗生物質の長期処方はいいのか?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約3分51秒で読めます.
22,877 ビュー. カテゴリ:抗菌薬の長期処方
例えば、フロモックスやセフゾンが30日分とか処方されていたらどう思うだろう。
「3日分の間違いじゃないかな?」
通常これらの抗生物質が長期処方されることはない。
添付文書にも「本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」と記載されている。
抗生物質を何ヶ月も飲んでいる患者さん、と言って思い浮かぶのは、マクロライド系の少量長期療法でしょう。
副鼻腔炎や滲出性中耳炎、びまん性汎細気管支炎とか慢性気管支炎、気管支拡張症などに使われます。
しかし、クラリスやエリスロシンにしても上記の「本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」という記載があり、やはり種類を問わず抗生物質の長期処方は疑義照会の対象となりうる。
処方期間の定められている抗菌薬
ジスロマックは基本的に3日間という処方期間が定められている。
アベロックス錠の処方期間については、7日あるいは、10日以内と投与期間が定められている。
本剤の使用にあたっては,耐性菌の発現等を防ぐため,原則として感受性を確認し,疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること.更に,本剤の投与期間は,原則として皮膚科領域感染症,咽頭・喉頭炎,扁桃炎,急性気管支炎及び慢性呼吸器病変の二次感染に対しては7日間以内,肺炎及び副鼻腔炎に対しては10日間以内とすること.
オラペネム小児用細粒は、7日以内となっている。
本剤の投与期間は、7日間以内を目安とすること。なお、本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
クラビットを腸チフス、パラチフスに使う場合には、14日間となっている。
腸チフス、パラチフスについては、レボフロキサシンとして(注射剤より本剤に切り替えた場合には注射剤の投与期間も含め)14日間投与すること。
ビブラマイシンをクラミジアに使う場合には、原則14日間となっている。
クラミジア感染症に対する本剤の投与期間は原則として14日間とし、必要に応じ更に投与期間を延長する。
また、炭そ菌に対しては、テトラサイクリン系やニューキノロン系で、60日間の投与が推奨されている。
「炭疽の発症及び進展抑制には、米国疾病管理センター(CDC)が、60日間の投与を推奨している。」
炭そ菌なんてテロでしか見ませんが。
尿路感染症と抗生物質の長期処方
セフェムやニューキノロン、ホスホマイシンなどの抗生物質も、慢性膀胱炎、反復性尿路感染症などに長期投与が行われます。
小児の膀胱尿管逆流症でセフェムやST合剤の少量長期療法も行われるようです。
慢性前立腺炎でも抗菌剤が長期に処方されるようです。
長期処方での腸内細菌叢への悪影響
長期に飲むことで腸内細菌叢に対する影響はありそうです。
抗菌剤の長期投与を受けている患者が、サルモネラ菌などに感染した場合、しかもそれが薬剤耐性菌であった場合、すでにライバルの細菌が一掃された領地にそれが侵入することになります。
腸内細菌により産生されるビタミンKの不足により、ワーファリンの作用が増強、といったことも考えられます。
抗菌剤でビタミン欠乏症?
抗菌剤の腸内細菌に対する抑制作用により、腸内細菌によるビタミンB群、ビタミンK群の産生が抑制され、欠乏症状が引き起こされる可能性があるといわれています。
いずれの薬剤でも、長期投与で食事などの摂取が不十分な場合には、発現する危険性が高くなりますが、特に広域性で抗菌力の強いペニシリン系、セフェム系薬剤については、注意が必要とされています。
テトラサイクリン系抗生物質も広域の抗菌スペクトルを持ち、胆汁への排泄率も高いため、これらのビタミン欠乏症には留意すべきといわれています。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。