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食後すぐの歯磨きはNG?歯を守る正しいタイミングと磨き方
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約4分35秒で読めます.
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食後の歯磨き、いつが正解?

「食べたらすぐ歯を磨きなさい」
これは子どもの頃から言われてきた習慣かもしれません。確かに、虫歯予防という観点からは、食べかすや糖質を口の中に残さないために早めの歯磨きは有効です。
しかし近年、「食後すぐの歯磨きは、かえって歯を傷つけてしまう」という説が広まりつつあります。その背景には、「酸蝕歯(さんしょくし)」と呼ばれる新しいタイプの歯のダメージが関係しています。
歯の構造や口内のpHバランス、唾液の働きなどを踏まえて、「いつ歯を磨くべきか?」「酸蝕歯とは何か?」「朝や昼の歯磨き、どうすればよいか?」といったことを勉強します。
そもそも「酸蝕歯」とは?
虫歯とは違う歯のダメージ
酸蝕歯とは、飲食物に含まれる「酸」によって歯の表面のエナメル質が溶ける現象のことです。虫歯(う蝕)は細菌が作る酸によって歯が溶けるのに対し、酸蝕歯は外から入ってくる酸そのものが原因となります。
酸を含む食品の例
日常的に私たちが摂取している食品や飲料には、思っている以上に多くの酸性物質が含まれています:
・炭酸飲料(コーラやサイダー)
・スポーツドリンク
・ワイン、ビール
・柑橘系の果物(レモン、オレンジなど)
・お酢、梅干し
・ヨーグルトや乳酸菌飲料
これらの摂取後、口腔内は一時的にpHが5.5以下の「脱灰しやすい状態」に傾きます。エナメル質は本来とても硬い組織ですが、酸には弱く、pHが下がると徐々に表面が軟化していきます。
食後すぐの歯磨きがよくない理由
酸によるエナメル質の軟化
食後は口の中のpHが酸性になっており、歯の表面がわずかに溶けて柔らかくなっている状態です。このときに強く歯をこすってしまうと、軟化したエナメル質を物理的に削ってしまう恐れがあります。
これはまさに「酸蝕歯の助長」につながります。
唾液の自然な回復力を生かす
人間の口の中には「唾液による自浄作用と再石灰化の力」があります。
・唾液は酸性になった口内を中和して中性(pH7.0前後)に戻す
・エナメル質から失われたカルシウムやリンを補うことで再石灰化を促す
しかし、再石灰化には最低でも20〜30分、長ければ1時間程度の時間がかかります。つまり、この間に歯を磨いてしまうと、歯の修復が不完全なままダメージを与えることになるのです。
正しい歯磨きのタイミングとは?
原則:食後30分ほど待つのが理想
酸性食品を摂取した後や、スポーツドリンク・果物・炭酸飲料などを飲食した直後は、最低でも30分は歯磨きを控えるのが望ましいとされています。
この時間は、口の中のpHが唾液の力によって回復し、歯の表面の再石灰化が始まる大切な時間帯です。
例外:すぐにケアしたいときは「うがい」がおすすめ
ただし、学校や職場では30分待ってから磨くのが難しいこともあります。そんな時は、以下の対応が推奨されます:
・食後すぐに水でうがいする
・砂糖不使用のキシリトールガムを噛む(唾液の分泌を促進)
・やわらかめの歯ブラシで軽く磨く(力は入れすぎない)
特に注意すべきシチュエーション
朝食後すぐの歯磨き
朝の時間は特に忙しく、「食べてすぐ磨いて出発!」という生活スタイルが一般的です。しかし、朝食にフルーツやヨーグルト、ジュースなどの酸性食品が含まれている場合、やはり歯の軟化が懸念されます。
そのため、次のような工夫ができます:
朝食前に一度歯磨きを済ませる(就寝中の口内の汚れを除去)
食後はうがいだけで済ませるか、軽いブラッシングにとどめる
昼食後の歯磨き
「30分待つと休憩時間が終わる」という悩みもよく聞かれます。確かに現実的には難しいですが、以下のような簡便なケア方法もあります:
・食後すぐに口をすすぐ
・外出先では歯磨きティッシュやマウスウォッシュを活用
・歯間ブラシやデンタルフロスで歯間の清掃だけでも実施
酸蝕歯を防ぐ生活習慣のコツ
●酸性食品の摂取頻度を減らす
毎日ジュースを飲む、酢の物を頻繁に食べるなど、習慣的な酸の摂取は控えめに。
●水分で中和をサポート
酸性飲料を飲んだ後は、水を飲んだりうがいしたりして口内のpHを中和。
●ガムで唾液を増やす
唾液分泌を促すキシリトールガムの活用。
●研磨剤入り歯磨き粉の使い過ぎに注意
軟化した歯に強い研磨剤を使うと削れてしまう可能性が。
おわりに:大切なのは「歯の自然な回復力を待つこと」
歯を守るためには、こまめなケアも大切ですが、「タイミング」や「力加減」もそれ以上に重要です。
食後すぐに歯磨きをするのではなく、まずは水でうがいし、唾液の働きを信じて30分ほど待つ。そのうえで、やさしく丁寧な歯磨きを行う――それが、酸蝕歯を予防し、健やかな歯を保つための秘訣です。
忙しい現代人にとっては難しい場面もありますが、「毎日歯を削ってしまうかもしれない」というリスクを避けるためにも、ぜひ今日から少しだけ工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。
1 件のコメント
私は酸性の強いものを飲食したときに、歯の表面が軟らかくなる感覚があったので、その感覚がなくなるまで、歯磨きを控えていました。あの判断は正しかったのですね。
因みに私は、
・夜の歯磨きはデンタルケア用
・朝や昼の歯磨きは美容用
と割り切って、美容用は頑張り過ぎないようにしています。