2025年8月1日更新.2,555記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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薬局とドラッグストアの違いは?

薬局とドラッグストアの違い

私たちの暮らしに欠かせない存在となっている「薬局」と「ドラッグストア」。これらは日常的によく見かけるものの、違いを明確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。この記事では、両者の違いを制度的・実務的観点から解説し、薬局とドラッグストアの役割、進化の歴史、そして今後の展望について詳しく述べていきます。

薬局とドラッグストアの基本的な違い

一言で言えば、

・薬局は「医師の処方箋に基づく調剤ができる場所」
・ドラッグストアは「医薬品に加えて、日用品・化粧品・食品などを販売する店舗」

というイメージです。

昔ながらの薬局は、いわば「八百屋」に相当し、薬のみを専門に扱うイメージです。一方、ドラッグストアは「スーパーマーケット」に近く、薬以外にも様々な商品を取り扱っています。

法律上の定義と許可の違い

薬局とドラッグストアの違いは、単に「売っているものの種類」だけではありません。実は、規定する法律や行政上の扱いが異なるのです。

● 薬局とは?
・薬機法(旧:薬事法)に基づいて、都道府県知事の許可を受けて開設される。
・処方箋に基づく調剤が可能(=調剤薬局)。
・保険薬局として機能するためには、加えて健康保険法に基づき厚生労働大臣の指定が必要。

● ドラッグストアとは?
・明確な法律上の定義は存在しません。
・「店舗販売業」または「薬局」として営業している店舗のうち、医薬品以外の商品も広く扱っているもの。
・調剤を行うには薬局としての許可が必要。

ドラッグストアと薬局の融合:調剤併設型ドラッグストア

かつてドラッグストアは、OTC(一般用医薬品)の販売が中心であり、調剤を行わない店舗が多くを占めていました。しかし、近年は調剤を併設するドラッグストアが急増しています。

● 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の報告
・会員企業の調剤取扱い比率は26~27%まで増加。
・あるチェーンの経営者は、「調剤のないドラッグストアはバラエティショップと同じ」と述べるほど、調剤の重要性が高まってきています。

この流れにより、現在では多くのドラッグストアが薬局機能を併せ持つようになっており、店舗の看板は「〇〇薬局」や「〇〇ファーマシー」となっていることも多く見られます。

用語の混乱:薬局・薬店・保険薬局の違い

● 薬局 vs 保険薬局
・薬局:都道府県の許可で開設される医薬品調剤所。
・保険薬局:薬局のうち、健康保険法に基づき厚生労働大臣の指定を受けたもの。保険診療に基づく処方箋を調剤できる。

つまり、「薬局」であっても保険指定がなければ、保険診療の処方箋には対応できません。外見は同じでも、法律上の管轄が異なります。

● 薬剤師 vs 保険薬剤師
・薬剤師:薬剤師免許を有する者。
・保険薬剤師:保険薬局で保険診療に基づく調剤業務に従事する薬剤師として、厚生労働大臣の登録を受けた者。

保険外処方せんなら誰でも調剤できますが、保険診療に関わるには「保険薬剤師」である必要があります。

● 薬店とは?
・「店舗販売業」として登録された事業者。
・一般用医薬品(OTC薬)のみを販売できるが、調剤は不可。

「薬店」は主に医薬品販売に特化したドラッグストアの旧称で、現在ではドラッグストアに吸収された形で使われなくなりつつあります。

その他の販売形態:「配置販売業」とは

「配置販売業」とは、いわゆる富山の薬売りで知られる業態です。
・定期的に家庭を訪問し、薬箱に薬を配置。
・使用した薬の分だけ、次回訪問時に精算。

この形態もOTC薬のみを扱い、調剤は行えません。

調剤薬局という呼び方の誤解

「調剤薬局」という名称をよく耳にしますが、これは法律上の正式名称ではありません。薬局は本来、

・処方箋調剤
・一般用医薬品販売
・健康相談
・在宅医療
など幅広い業務を担っており、「調剤しかしない薬局」というのは本来の姿ではありません。

日本では医療保険制度のもと、調剤中心の薬局が増えたことで「調剤薬局」という呼称が一般化しましたが、本来薬局とは「健康支援拠点」として、もっと広い機能を持っているのです。

今後の展望:薬局とドラッグストアの関係性はどうなる?

現在、ドラッグストアの薬局化が急速に進んでおり、今後は「ドラッグストア」という呼び方そのものが変化する可能性があります。

・調剤のないドラッグストア=バラエティショップ
・調剤のあるドラッグストア=実質薬局

このように線引きが明確化される中で、消費者側にも「どこで何ができるのか」を正しく理解することが求められます。

また、薬剤師の職能も「調剤するだけ」から「健康サポート」「セルフメディケーション支援」などへと広がっており、薬局・ドラッグストアともにそのあり方を問い直す時代に来ているといえるでしょう。

まとめ

区分薬局ドラッグストア
法的定義あり(薬機法に基づく)なし(営業形態により異なる)
調剤の可否可能(保険薬局なら保険処方も対応)薬局であれば可能(薬店型は不可)
OTC薬の販売可能可能
食品・雑貨の販売一部可能(店舗により異なる)積極的に取り扱い
所管行政都道府県(+厚労省)店舗販売業なら都道府県

薬局とドラッグストアは、外見だけでは区別がつかない場合が多くあります。しかし、その根本には制度の違い、許可の違い、機能の違いがあります。正しく理解し、自分にとって適切な場所を選ぶことが、健康を守る第一歩です。

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