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リケッチアに使う薬
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約3分51秒で読めます.
1,509 ビュー. カテゴリ:リケッチア
リケッチアってどういう微生物?
リケッチアって大学で習った記憶はあるけれど、薬局ではあまり聞かないよね。
そもそも「あなたはリケッチア感染症です」って言われる患者もいないんだろうけど。
「山に行ってダニに刺された」って言う患者がいたら、リケッチア感染を疑うかな。
ウイルス、細菌、クラミジア、マイコプラズマ、リケッチア。
病原微生物にもいろいろあります。
リケッチアの大きさは細菌とウイルスの中間、クラミジアに近い。昔はウイルスに近いものと考えられていました。
ダニというと、布団の中に潜むイエダニを想像しますが、イエダニは通常リケッチアを保菌していません。
イエダニの大きさは約0.2~0.4mmくらいなので、肉眼では見えにくいですが、マダニは未吸血時でも約2~3.2mm程あるので、肉眼で確認できます。吸血時にはさらに大きくなります。
山へ行く時には注意しましょう。
分類 | 大きさ | 形状 | 自己増殖 | 細胞壁 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
一般細菌 | およそ1.0μm | 単細胞 | 〇 | 〇 | ・DNAとRNA両方をあわせもち自己増殖可能な生物 ・細胞壁をもつ |
リケッチア | およそ0.3~1.0μm | 単細胞 | × | 〇 | ・宿主細胞内でのみ増殖可能 ・節足動物がベクター(媒介動物)となって感染する |
クラミジア | およそ0.3μm(基本小体) | 単細胞 | × | 〇 | ・宿主細胞内でのみ増殖可能 ・増殖過程において宿主細胞内に封入体を形成する |
マイコプラズマ | 0.1μm~数μm | 単細胞 | 〇 | × | ・細胞壁をもたないため、大きさも形も様々 ・人工培地で自己増殖可能な最小の微生物である |
ウイルス | およそ100nm | 粒子 | × | × | ・DNAまたはRNAのどちらか一方のみをもつ無生物(ウイルス粒子) ・宿主細胞内でのみ増殖可能 ・カプシドとよばれるタンパク質の殻をもつ |
「効能又は効果」に「リケッチア」と記載のある薬として、テトラサイクリン系のアクロマイシン、ビブラマイシン、ミノマイシン、レダマイシン、ニューキノロン系のクラビット。クロラムフェニコール系のクロロマイセチンがあります。
リケッチアならテトラサイクリン系使っておけば良いんじゃね、と思いますが、適応症は意外と細かく分けられています。
それぞれの適応症は以下のようになっています。
医薬品名 | 適応菌種 | 適応症 |
---|---|---|
アクロマイシン | リケッチア属 | つつが虫病、発疹熱、発疹チフス |
ビブラマイシン | Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ) | Q熱 |
ミノマイシン | リケッチア属(オリエンチア・ツツガムシ) | つつが虫病 |
レダマイシン | リケッチア属 | つつが虫病、発疹熱 |
クラビット | Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ) | Q熱 |
クロロマイセチン | リケッチア属 | つつが虫病、発疹熱、発疹チフス |
リケッチア科リケッチア属に属する菌種として、
Rickettsia. rickettsii(ロッキー山紅斑熱)
Rickettsia. prowazekii(発疹チフス)
Rickettsia. typhi(発疹熱)
Rickettsia. japonica(日本紅斑熱)
などがある。
つつが虫病の病原菌は以前、Rickettsia.tsutsugamushiというリケッチア属であったが、ペプチドグリカンを有しないためオリエンチア属へ移行したため、Orientia.tsutsugamushiになっているが、ミノマイシンの添付文書上は「リケッチア属(オリエンチア・ツツガムシ)」という風に記載されている。
Q熱も以前は、Rickettsia.burnetiiでしたが、最近の遺伝子学的な解析による分類で現在はレジオネラ目コクシエラ科コクシエラ属のCoxiella.burnetiiという分類になっている。
日本の添付文書の記載が古いのか、学名がコロコロ変わるのか、いずれにせよわかりにくい。
ちなみに、発疹チフスと腸チフス・パラチフスはいずれもチフスという名前がついているが、腸チフス・パラチフスはリケッチアが原因ではない。
疾患名 | 腸チフス | パラチフス | 発疹チフス |
病原体 | サルモネラ | 発疹チフスリケッチア | |
チフス菌 | パラチフスA菌 | ||
代表的症状 | 段階的発熱(〜40℃)、徐脈・バラ疹・脾腫、腸出血・腸穿孔 | 突発的発熱(〜40℃)、頻脈・発疹、精神神経症状 | |
感染経路(感染源) | 経口感染(飲食物) | ベクター感染(コロモジラミ) | |
感染症の分類(日本) | 三類感染症(二類より移行) | 四類感染症 | |
英語 | typhoid fever | paratyphoid fever | typhus |
ドイツ語 | Typhus | Paratyphus | Fleckfieber |
ツツガムシ病
ツツガムシはダニの一種で、幼虫に刺されることで感染する。
ツツガムシ病の死亡率は、治療を受けなければ30%程度という高い死亡率です。
治療が遅れると重症化しやすく、早期治療が肝要である。
βラクタム系など感染症によく使用される抗菌薬は無効であり、疑診例は確定診断がつくのを待たず、感受性のあるテトラサイクリン系抗菌薬を積極的に投与する。
効果は劇的であるが、解熱後も通常約1週間は投与を継続する。
ミノマイシンが使われる。
ビブラマイシンでもよいが、本症は適応症の記載外である。
腸チフスのメアリー
インフルエンザやノロウイルスにかかっても元気な人がいます。
感染しても元気な人、これを無症候性キャリアと言います。
症状が無いので、自覚もない。
手洗いうがいもおろそかに、ウイルスをばらまく。迷惑な話です。
昔、腸チフスのメアリーと呼ばれた住み込み料理人がいました。
腸チフスの無症候性キャリアで、47名の感染者と3名の死者を出して有名になりました。
腸チフスのような毒性の強い病原菌でも無症候性キャリアは存在するのですね。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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