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真性クループと仮性クループの違いは?
公開. 更新. 投稿者:喘息/COPD/喫煙.この記事は約3分55秒で読めます.
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クループ症候群とは?真性クループと仮性クループの違い

小児科でよくみられる「クループ症候群(Croup)」は、子どもに急性の呼吸困難や咳嗽を引き起こす疾患群です。典型的には、犬の吠えるような「ケンケン咳」や夜間の突然の呼吸困難などがあり、保護者にとっては非常に心配な症状です。しかし、クループ症候群には実は「真性クループ」と「仮性クループ」という2つの異なるタイプが存在し、それぞれ病因や治療方針が異なります。
クループ症候群とは何か?
クループ症候群とは、喉頭の炎症によって声門の狭窄が起こり、特徴的な咳嗽(ケンケンという咳)と吸気性呼吸困難を引き起こす疾患群です。多くはウイルス感染が原因で、生後6か月〜3歳の乳幼児に多く見られます。季節的には秋から冬にかけて発症しやすい傾向があります。
クループ症候群は以下のように分類されます:
・仮性クループ(ウイルス性クループ)
・真性クループ(ジフテリア性クループ)
仮性クループとは
◆原因
仮性クループの主な原因はウイルス感染で、特に以下のウイルスが関与します:
・パラインフルエンザウイルス(最も一般的)
・インフルエンザウイルス
・アデノウイルス
・RSウイルス
・ライノウイルス
これらのウイルスにより、喉頭から気管上部にかけて炎症が起き、声門周囲が狭くなります。
◆症状
・ケンケンという犬のような咳
・吸気時の喘鳴(ストライダー)
・軽度の発熱(高熱はまれ)
・夜間に悪化しやすい
・呼吸困難(重症例)
◆診断
・臨床症状(咳の音、発熱、夜間発症)から診断
・通常、喉頭鏡などの侵襲的検査は不要
◆治療
●軽症:加湿(蒸気吸入)、冷気にさらすと症状が緩和することも
●中等症〜重症:
・吸入ステロイド(ブデソニド吸入)
・デキサメタゾンなどの経口・注射ステロイド
・酸素投与
・必要に応じてアドレナリン吸入
◆予後
・多くは数日で自然回復します。
・重症例では入院管理が必要となることもありますが、適切な治療により予後は良好です。
真性クループとは
◆原因
真性クループは、かつて流行したジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)による細菌感染が原因です。
現在では予防接種(DPTワクチン)が普及したことにより、日本では非常にまれになっています。
◆症状
・発熱(38℃以上)
・咽頭痛、嚥下障害
・灰白色の偽膜形成(咽頭や喉頭に付着)
・喘鳴、呼吸困難
・声のかすれ
・意識障害(重症例)
偽膜が気道に広がると、窒息や突然死を招くことがあるため、緊急の対応が必要です。
◆診断
・咽頭の視診にて偽膜の確認
・咽頭ぬぐい液からの細菌培養
・ジフテリア毒素の同定
◆治療
・ジフテリア抗毒素の早期投与
・抗菌薬(ペニシリン、エリスロマイシン)
・気道確保(気管切開が必要な場合も)
・ICU管理を要する重症例もあり
◆予後
・抗毒素の投与が遅れると死亡率が高い
・ワクチン未接種者では重症化しやすい
真性クループと仮性クループの違いまとめ
比較項目 | 仮性クループ | 真性クループ |
---|---|---|
原因 | ウイルス感染(主にパラインフルエンザ) | ジフテリア菌(細菌感染) |
発症年齢 | 6か月〜3歳 | 小児〜成人(ワクチン未接種) |
発熱 | 軽度〜微熱 | 高熱あり(38℃以上) |
咳 | 犬のようなケンケン咳 | 咳はあるが偽膜が主徴 |
偽膜形成 | なし | あり(灰白色の膜が喉頭に付着) |
呼吸困難 | 多くは軽〜中等度 | 重度、窒息のリスクあり |
治療 | ステロイド、加湿、アドレナリン吸入 | 抗毒素、抗菌薬、気道管理 |
予後 | 良好、数日で回復 | 抗毒素遅延で死亡リスクあり |
ワクチンと予防の重要性
真性クループの原因であるジフテリアは、DPT(三種混合ワクチン)で予防可能です。定期接種のスケジュールを守ることで、ジフテリアの発症リスクを大幅に下げることができます。
一方、仮性クループの予防としては、
・手洗いやマスクなどの基本的な感染対策
・免疫力を高めるための十分な睡眠と栄養
が有効です。
まとめ
クループ症候群には、ウイルス性の仮性クループと、ジフテリア菌による真性クループという大きく異なる2つのタイプがあります。
仮性クループは一般的な小児ウイルス感染の一つとしてよく見られ、多くは軽症で済みます。一方、真性クループはワクチン未接種の場合に致命的な経過をたどる可能性があるため、正しい予防接種と早期対応が非常に重要です。
どちらのクループにおいても、「咳の音が普段と違う」「呼吸が苦しそう」「ぐったりしている」といった症状が見られた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。