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春もしもやけになりやすい?
公開. 更新. 投稿者:褥瘡.この記事は約4分7秒で読めます.
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春もしもやけに要注意?

「しもやけ」と聞くと、冬の寒い時期に子どもが手足を赤く腫らしている様子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
しかし実は、しもやけ(凍瘡)は“春先”にも起こりやすい皮膚のトラブルです。
「えっ?春にも?」と思われるかもしれませんが、春先の気温差や末梢の血流障害が原因となって、意外と多くの人がしもやけに悩まされています。この記事では、「春のしもやけ」の原因と対策、治療薬や生活上の注意点などをわかりやすく解説します。
しもやけ(凍瘡)とは?
しもやけは、医学的には「凍瘡(とうそう)」と呼ばれます。
寒冷にさらされた手足の末端(指先・耳・鼻・足先など)に起こる炎症性の皮膚病変で、赤く腫れたり、かゆみや痛みを伴ったりするのが特徴です。
しもやけは、寒さだけでなく、寒暖差によって血流が乱れることでも発生します。
春もしもやけの季節?
しもやけといえば「冬の寒さ」が原因だと思われがちですが、実は春先にも注意が必要です。
なぜ春先にしもやけが起こるのか?
・日中と朝晩の寒暖差が大きい(10℃以上の気温差がある日が多い)
・急な冷え込みや寒の戻りがある
・外出や運動が増える時期で、急に冷たい空気にさらされやすい
・春の服装が油断しがち(薄着で手足の防寒が不十分)
しもやけは単に「気温が低いからできる」のではなく、気温差によって血管の収縮と拡張が繰り返されることによって、血流が悪くなり、組織が炎症を起こすと考えられています。
そのため、気温差が激しい春や秋のはじまりも“しもやけシーズン”のひとつなのです。
どんな人がなりやすい?
●小児(特に5歳前後の男児):
・外で活発に遊ぶ時間が長い
・防寒が不十分なことが多い
・指先の血流が不安定で、凍瘡が起きやすい
●中高年の女性:
・更年期や加齢によって末梢循環が低下してくる
・家事や屋外作業などで冷水や冷風にさらされる機会が多い
●高齢者・糖尿病患者・動脈硬化のある人:
・血流障害が背景にある(糖尿病性神経障害、末梢動脈疾患)
・足先や手指などの先端部に血が通いにくくなり、炎症が起こりやすい
◆どこにできる?春のしもやけの好発部位:
しもやけができやすいのは以下のような部分です。
・手指(とくに指の関節の周り)
・足指、足先、かかと
・耳たぶや耳の縁
・鼻先
春先はまだマフラーや手袋を使わなくなる時期であり、耳や指先が無防備になるため、耳のしもやけが再発する方も多くみられます。
春のしもやけを防ぐために
「春だからもう防寒はいらない」と油断するのは禁物です。以下のような対策が有効です。
●防寒対策を続ける:
・朝晩はまだ冷える日があるため、手袋・靴下・帽子で冷えから守る
・冷たい風が直接当たる耳や顔は、マフラーやフードで覆う
●急激な温度変化を避ける:
・暖房の効いた室内から急に外に出ない
・入浴後、急に冷たい床を裸足で歩かないようにする
●血流を良くする生活習慣:
・軽い運動で末梢循環を促す(ウォーキングや足のマッサージなど)
・お風呂でしっかり温まり、保湿ケアも忘れずに
しもやけの治療薬
しもやけの治療は、主に外用薬が中心です。市販薬や処方薬には以下のようなものがあります。
●ユベラE軟膏(トコフェロール酢酸エステル)
・ビタミンEを主成分とする血行改善軟膏
・血行促進作用により、炎症やかゆみを抑える
・凍瘡による赤みや腫れ、乾燥に効果が期待される
注意点:
ユベラE軟膏は期限が短めのため、次の冬まで持ち越せないケースもある。使い切れる量を処方してもらうのがベターです。
●ステロイド外用薬(かゆみが強いとき)
・皮膚の炎症が強い、かゆみや痛みがひどい場合に使われる
・長期使用は避ける必要があるため、医師の指示のもとで使用すること
●血管拡張薬の内服(重症例)
・末梢循環障害が強い場合は、医師が内服薬を処方することもある
・ニコチン酸誘導体などが使われることがある
「冷たい」の語源は「爪が痛い」?
ところで、「冷たい」という言葉の語源が「爪が痛い」=「爪痛し(つめいたし)」から来ているという説をご存じでしょうか?
これは故・金田一春彦氏(国語学者)や「角川古語大辞典」にも見られる説で、「冷たい」の古語「つめたし」は、「指先が痛む感覚」=寒冷の感覚から来ていると言われています。
確かに、冬の寒さや春の冷たい風が肌に触れたとき、最初に“痛い”と感じるのは指先や耳たぶなど、まさにしもやけができやすい部分ですよね。
こうした語源からも、寒さと皮膚感覚の深い関係性を感じ取ることができます。
春の皮膚トラブルとしてしもやけを認識する
春というと「花粉症」や「紫外線」などが注目されがちですが、「しもやけ」もこの時期の意外な落とし穴です。
・季節の変わり目に体調が揺らぎやすい
・末梢血管の調節機能が乱れやすい
・高齢者や糖尿病の方では軽視できない皮膚症状となる
そのため、「たかがしもやけ」と放置せず、違和感を覚えたら早めに皮膚科や薬剤師に相談することが大切です。
まとめ:春もしもやけに気をつけて、やさしくケアを
しもやけは冬だけのトラブルではありません。春先の気温差や冷え込み、末梢の血流の乱れによっても十分に発症します。
「もう春だから大丈夫」と油断せず、手足や耳など冷えやすい部分をやさしく守りながら、生活習慣やスキンケアを見直してみましょう。
そして、もし「赤くなってかゆい」「じんじんと痛む」といった症状が出たら、早めの対処を心がけましょう。
しもやけは放っておいても治ることが多い一方で、長引くと色素沈着や慢性的な皮膚炎に進行することもあります。
この春も、あなたの肌をやさしく守ってあげてください。