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抗菌薬の一覧
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症. タグ:薬の一覧. この記事は約8分50秒で読めます.
86 ビュー. カテゴリ:目次
抗菌薬の一覧
分類 | 商品名 | 一般名 | ||||
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細胞壁合成阻害薬 | βラクタム系 | ペニシリン系 | グラム陽性菌用 | ペニシリナーゼ感性 | バイシリンG | ベンジルペニシリンベンザチン水和物 |
広域ペニシリン | ビクシリン | アンピシリン | ||||
サワシリン/パセトシン/アモリン | アモキシシリン水和物 | |||||
ペングッド | バカンピシリン塩酸塩 | |||||
ユナシン | スルタミシリントシル酸塩水和物 | |||||
合剤 | オーグメンチン | アモキシシリン水和物+クラブラン酸カリウム | ||||
クラバモックス | アモキシシリン水和物+クラブラン酸カリウム | |||||
ビクシリンS | アンピシリン+クロキサシリン | |||||
セフェム系 | 第一世代 | ケフレックス | セファレキシン | |||
ケフラール | セファクロル | |||||
オラスポア | セフロキサジン水和物 | |||||
第二世代 | パンスポリン | セフォチアム塩酸塩 | ||||
オラセフ | セフロキシムアキセチル | |||||
第三世代 | エポセリン | セフチゾキシムナトリウム | ||||
セフスパン | セフィキシム | |||||
トミロン | セフテラムピボキシル | |||||
バナン | セフポドキシムプロキセチル | |||||
セフゾン | セフジニル | |||||
セフテム | セフチブテン水和物 | |||||
メイアクトMS | セフジトレンピボキシル | |||||
フロモックス | セフカペンピボキシル塩酸塩水和物 | |||||
カルバペネム系 | オラペネム | テビペネムピボキシル | ||||
ペネム系 | ファロム | ファロペネムナトリウム水和物 | ||||
グリコペプチド系 | 塩酸バンコマイシン | バンコマイシン塩酸塩 | ||||
ホスホマイシン系 | ホスミシン | ホスホマイシンカルシウム水和物 | ||||
蛋白合成阻害薬 | アミノグリコシド系 | Ⅰ群 | 抗結核菌作用 | カナマイシン | カナマイシン硫酸塩 | |
Ⅱ群 | 抗緑膿菌作用 | トービイ | トブラマイシン | |||
マクロライド系 | 14員環系 | エリスロシン | エリスロマイシンエチルコハク酸エステル | |||
エリスロマイシン「サワイ」 | エリスロマイシン | |||||
ルリッド | ロキシスロマイシン | |||||
クラリス/クラリシッド | クラリスロマイシン | |||||
15員環系 | ジスロマック | アジスロマイシン水和物 | ||||
16員環系 | ジョサマイシン | ジョサマイシン | ||||
アセチルスピラマイシン | スピラマイシン酢酸エステル | |||||
スピラマイシン「サノフィ」 | スピラマイシン | |||||
18員環系 | ダフクリア | フィダキソマイシン | ||||
テトラサイクリン系 | アクロマイシン | テトラサイクリン塩酸塩 | ||||
ミノマイシン | ミノサイクリン塩酸塩 | |||||
ビブラマイシン | ドキシサイクリン塩酸塩水和物 | |||||
レダマイシン | デメチルクロルテトラサイクリン塩酸塩 | |||||
クロラムフェニコール系 | クロロマイセチン | クロラムフェニコール | ||||
オキサゾリジノン系 | ザイボックス | リネゾリド | ||||
シベクトロ | テジゾリドリン酸エステル | |||||
リンコマイシン系 | リンコシン | リンコマイシン塩酸塩水和物 | ||||
ダラシン | クリンダマイシン | |||||
細胞質膜合成阻害 | ペプチド系 | 硫酸ポリミキシンB | ポリミキシンB硫酸塩 | |||
コリマイシン | コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム | |||||
葉酸合成阻害薬 | サルファ剤 | サラゾピリン | サラゾスルファピリジン | |||
バクタ | スルファメトキサゾール+トリメトプリム | |||||
核酸合成阻害薬 | キノロン系 | ドルコール | ピペミド酸水和物 | |||
ニューキノロン系 | バクシダール | ノルフロキサシン | ||||
タリビッド | オフロキサシン | |||||
シプロキサン | シプロフロキサシン | |||||
バレオン | ロメフロキサシン塩酸塩 | |||||
レスピラトリーキノロン | クラビット | レボフロキサシン水和物 | ||||
スオード | プルリフロキサシン | |||||
オゼックス/トスキサシン | トスフロキサシントシル酸塩水和物 | |||||
アベロックス | モキシフロキサシン塩酸塩 | |||||
ジェニナック | メシル酸ガレノキサシン水和物 | |||||
グレースビット | シタフロキサシン水和物 | |||||
ラスビック | ラスクフロキサシン塩酸塩 |
抗菌薬の分類
抗菌薬には大きく分けて殺菌性の抗菌薬と静菌性の抗菌薬がある。
殺菌性とは菌を殺してしまう作用をもつこと、静菌性とは菌を殺してはいないが、分裂して増殖することを抑えます。
殺菌性抗菌薬 | 静菌性抗菌薬 |
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●細胞壁合成阻害薬 ・βラクタム系薬(ペニシリン系薬、セフェム系薬、カルバペネム系薬、モノバクタム系薬、ペネム系薬) ・グリコペプチド系薬 ・ホスホマイシン系薬 ●アミノグリコシド系薬 ●核酸合成阻害薬 ・キノロン系薬 ・ニューキノロン系薬 ●細胞膜機能障害薬 ・リポペプチド系薬 ・ポリペプチド系薬 | ●タンパク質合成阻害薬(アミノグリコシド系薬除く) ・マクロライド系薬 ・リンコマイシン系薬 ・オキサゾリジノン系薬 ・ストレプトグラミン系薬 ・クロラムフェニコール系薬 ・テトラサイクリン系薬 ●葉酸合成阻害薬 ・サルファ剤 ・ST合剤 |
菌は殺してしまったほうがいいと思われますが、増殖さえ抑えればあとは人間の免疫力で殺してしまうことができるので同じです。そのため現在では殺菌性か静菌性かはあまり重視されていません。
従来の抗菌薬の使用は、細菌は有害だからできるだけ早く除いてしまおうという考えに基づいています。しかし、第一に心配すべきは炎症で、細菌は二の次である。
また、強い抗菌薬で治療した場合、細菌構成成分が血流中に放出され、これを免疫系が認識し、致死的な転帰をたどることもあるとも言われる。それに比べ、静菌性抗菌薬は、細菌の蛋白質合成の場であるリボソームの機能を阻害し、速やかに細菌を破裂させるのではなく時間をかけて静菌作用を発揮することによって炎症反応を回避するため、穏やかに働く。
作用機序による分類としては、細胞壁合成阻害薬、蛋白合成阻害薬、DNA・RNA合成阻害薬、細胞膜障害薬などに分類される。
βラクタム系抗菌薬
ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬、カルバペネム系抗菌薬、ペネム系抗菌薬などは構造式に4員環であるβラクタム環を有しているため、まとめてβラクタム系抗菌薬ともよばれている。
βラクタム系抗菌薬は細胞壁合成阻害薬である。
細胞壁をもつ生物は植物、キノコやカビ等の真菌類、細菌類であり、動物細胞には存在しません。そのため、細胞壁合成阻害薬には選択毒性があります。細菌にも細胞壁をもたないもの(マイコプラズマ等)があります。
βラクタム環に隣接する環が5員環であるものをペニシリン系、6員環であるものをセフェム系という。さらにこの隣接5員環に二重結合のあるものをペネム系、ないものはペナム系と分類する。また、この隣接環のSの代わりにOが入るとオキサ、Cが入るとカルバという接頭語をつける。βラクタム環のみの構造で隣接する環のないものをモノバクタム系という。
これらの薬の作用機序は、細菌の細胞壁の合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)に作用し、細胞壁合成を阻害し、細菌を死滅させることである。ペニシリン結合蛋白という名前であるが、ペニシリン系だけが作用するわけではない。
βラクタム環は、細胞壁の主成分ペプチドグリカン層を構成するペプチド鎖のD-アラニル-D-アラニン(D-Ala-D-Ala)に構造が似ているため、ペニシリン結合タンパク質(PBP)にβラクタム環が結合して架橋反応を阻害する。
βラクタマーゼ阻害薬
細菌もただただ抗菌薬にやられるわけではなく、抵抗しています。
細菌はβラクタマーゼというβラクタム環を加水分解して不活化する酵素を産生し、βラクタム系抗菌薬に耐性を示すことがあります。ペニシリンに主に耐性を示すためペニシリナーゼともよばれます。
このβラクタマーゼに抵抗するため、クラブラン酸やというβラクタマーゼの産生を阻害する物質がオーグメンチンやクラバモックスに配合されています。
人類と菌類のいたちごっこです。
グリコペプチド系薬
グリコペプチド系薬は細胞壁合成阻害薬である。バンコマイシンとテイコプラニンがある。
作用機序は、βラクタム系薬と同じ細胞壁のペプチドグリカン合成阻害であるが、作用点はβラクタム系薬と異なる。
βラクタム系薬が細胞壁合成酵素(PBP)そのものを不活化するのに対し、グリコペプチド系薬はPBPの基質(ムレイン)に結合することで酵素反応を阻害し細菌の細胞壁合成を障害する。
ホスホマイシン系薬
細胞壁合成阻害薬の一つであるが、細胞壁合成の初期段階を阻害するため、βラクタム系薬との交差耐性はみられない。
ホスホマイシン系の特徴として、低分子量、体内で安定、蛋白結合率が低い、分布容積が大きいなどがあり、特に抗原性が低いことにより薬剤アレルギーなどの副作用発現の頻度が低いことがあげられる。
アミノグリコシド系薬
アミノグリコシド系薬はタンパク質合成阻害薬である。
タンパク合成阻害薬は、細菌のリボソームにくっついてタンパク質の合成を妨げることで細菌を死滅させます。
リボソームのサブユニットは沈降速度をあらわすS(Svedberg)で分類されています。ヒトを含めた真核細胞のリボゾームと、細菌などの原核細胞のリボソームは、沈降係数がそれぞれ80Sと70Sで異なり、タンパク質合成阻害薬は70Sのリボソームに作用するため、選択毒性が高いといえます。
アミノグリコシド(アミノ配糖体)系薬は、構造上、糖にアミノ基が結合していることからその名がつけられた。
細菌の70Sリボソームの30S サブユニットの 16SrRNA にに結合しmRNAの誤翻訳を引き起こすことにより蛋白合成を阻害する。
抗結核作用のあるストレプトマイシン、カナマイシンと、抗緑膿菌作用があるもの(ゲンタマイシン、トブラマイシン、ジベカシン、アミカシン、イセパマイシン)、ないもの(フラジオマイシン)に大別される。
マクロライド系抗菌薬
マクロライド系薬はタンパク質合成阻害薬である。
マクロライド系薬とは環状ラクトン構造を持ち、リボソームに結合して蛋白質合成阻害を示す抗菌薬です。
その化学構造から14員環系、15員環系、16員環系、18員環系に大別されます。
マクロライド系薬は細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットの23SrRNAに結合することにより菌の蛋白合成を阻害する。
抗生物質としては比較的副作用が少なく、抗菌スペクトルも広い。リケッチア、クラミジアなどの細胞内寄生菌や、マイコプラズマに対しては第一選択薬となる。小児から老人まで広く処方される頻用薬の一つであるが、一方ではその汎用性が一因となってマクロライド耐性を示す微生物が増加しており、医療上の問題になっている。また、他の薬物との薬物相互作用が問題となる場合もある。
エリスロマイシン
初のマクロライド系薬であるエリスロマイシンは、現在でも十分な微生物学的効果がある一方で、腸管蠕動促進作用(モチリン様作用)による副作用である下痢を示すことがしばしばあります。
さらには、抗炎症効果、抗バイオフィルム形成効果、抗ウイルス効果など多彩な効果を示すことが報告されています。
特に、びまん性汎細気管支炎に対する少量長期投与は、予後を改善させることが明らかになっています。
現在のエリスロマイシンの使い方としては、このように、殺菌作用よりも、その他の作用を主に期待するものとなっています。
クラリスロマイシン
エリスロマイシンの持つ欠点を改善させたものが、クラリスロマイシンといえます。
クラリスロマイシンの抗菌活性はエリスロマイシンとは大きく変わるものではありませんが、下痢の頻度が低くなっているために、より使いやすくなっています。
薬物代謝酵素阻害は変わらず注意が必要です。
アジスロマイシン
アジスロマイシンの特徴は、半減期が長いために1~3日間服薬すれば1週間の持続した効果が期待できる点、および薬物代謝酵素阻害作用が弱いことから、エリスロマイシンやクラリスロマイシンで併用不可であった薬物も、併用できる点です。
QT延長は他の薬物同様注意が必要です。
テトラサイクリン系薬
テトラサイクリン系薬はタンパク質合成阻害薬である。
細菌の70Sリボソームの30S サブユニットの 16SrRNA にに結合しmRNAの誤翻訳を引き起こすことにより蛋白合成を阻害する。
テトラサイクリン系薬は、4つ(テトラ)の6員環(サイクル)が連なるナフタセンカルボキサミドを基本骨格とする抗菌薬である。
リンコマイシン系薬
リンコマイシン系薬はタンパク質合成阻害薬である。
リンコマイシンとクリンダマイシンがある。
広義のマクロライド系薬であり、作用機序・抗菌スペクトラム及び体内動態などはマクロライド系薬に類似する。
オキサゾリジノン系薬
オキサゾリジノン系薬はタンパク質合成阻害薬である。
細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットの23SrRNAに結合することにより菌の蛋白合成を阻害する。
リネゾリドとテジゾリドがある。
キノロン系薬
キノロン系薬は核酸合成阻害薬である。
キノロン系薬で初期(1960年代)に開発されたもの(オールドキノロン)に対し、1980年代以降に開発されたキノロン系薬には6位側鎖にフッ素がついており、ニューキノロン(フルオロキノロン)系薬といわれる。
DNAの複製過程で働く酵素の1つに、Ⅱ型トポイソメラーゼ(細菌ではDNAジャイレースやトポイソメラーゼⅣ)がある。DNAジャイレースを阻害することでグラム陰性菌の分裂を阻害し、トポイソメラーゼⅣを阻害することで陽性菌の分裂を阻害する。
人間のⅡ型トポイソメラーゼは細菌のものとは構造が異なるため、選択毒性が高い。
レスピラトリーキノロン
開発が進み肺炎球菌にも有効になり、肺組織移行性も改善され呼吸器感染症でも用いられるようになったものをレスピラトリーキノロンという。
サルファ剤
サルファ剤は葉酸合成阻害薬である。
葉酸はDNAの材料やアミノ酸を合成する際の補酵素として働くため、阻害することで細菌の増殖を抑えます。
ST合剤
サルファ剤のスルファメトキサゾールとトリメトプリムの5:1の配合剤で、ともに細菌の葉酸合成の異なる段階に作用するので相乗効果を示す。トリメトプリムは脂肪に溶けやすく分布容積が5倍といわれているため、この比率になっている。
以前はサルファ剤単剤で用いられることが多かったが、耐性菌の出現により現在は単剤で使用されることがほとんどなく、ST合剤が用いられる。
サルファ剤とトリメトプリムはどちらも葉酸合成阻害薬であるが、作用点は異なる。サルファ剤は葉酸の材料となるパラアミノ安息香酸(PABA)と類似構造をもつため、ジヒドロプテロイン合成酵素を阻害する。トリメトプリムは葉酸合成経路のジヒドロ葉酸と類似構造を持ち、ジヒドロ葉酸合成酵素を阻害する。
ポリペプチド系薬
ポリペプチド系薬は細胞膜機能障害薬である。
ポリミキシンB、コリスチン、バシトラシンがある。
組織移行性が悪く、内服薬はほぼ腸管から吸収されない。そのため院外処方で見かけることはほとんどない。
細菌の細胞質膜リン脂質に結合することにより膜障害作用を発揮する。
ポリペプチド系薬は陽性に荷電しており、陰性に荷電している外膜のリポ多糖や細胞膜のリン脂質に結合して膜へ侵入し、膜の架橋構造を破壊する。これにより膜の透過性が変化し、細菌の細胞内成分が漏出して細菌が溶解する。また、リポ多糖に結合することで細菌の内毒素としての作用を中和する。
また、グラム陽性菌のペプチドグリカン層は厚く、抗菌薬が細胞膜に達しにくいため無効と考えられている。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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