記事
オーグメンチンの期限は1ヶ月?―吸湿性と服薬指導の注意点
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約3分23秒で読めます.
15,323 ビュー. カテゴリ:オーグメンチンの使用期限は1ヶ月?

オーグメンチン®(アモキシシリン水和物/クラブラン酸カリウム配合剤)は、広域ペニシリンにβラクタマーゼ阻害薬を組み合わせた抗菌薬です。耐性菌対策として重要な薬剤ですが、その一方で「保存条件」や「服薬期間」に独特の注意点があります。特に「開封後1ヶ月以内に使用」といった記載に現場で戸惑うことも多いでしょう。
オーグメンチンの基本情報
・有効成分:アモキシシリン水和物(ペニシリン系抗菌薬)+クラブラン酸カリウム(βラクタマーゼ阻害薬)
・配合比:2:1(アモキシシリン:クラブラン酸)
・剤形:錠剤・ドライシロップ
・適応症:呼吸器感染症、尿路感染症、皮膚感染症など幅広い細菌感染症
オーグメンチンは、細菌が産生するβラクタマーゼにより分解されやすいペニシリン系抗菌薬を「守る」ためにクラブラン酸を配合しています。そのため、単剤のアモキシシリン(パセトシン、アモリン、サワシリン)よりも耐性菌に強く、臨床での使用価値があります。
オーグメンチンの吸湿性と保存期限
「吸湿注意」との記載
オーグメンチンのPTPシートには「吸湿注意」の表記があります。これはクラブラン酸カリウムが極めて吸湿性が高い成分であるためです。吸湿により分解が進行し、力価低下を招くことが知られています。
添付文書・インタビューフォームの記載
インタビューフォームには以下のように明記されています。
・保存条件:室温保存
・使用期限:アルミ袋開封後は1ヶ月以内に使用すること
錠剤は6錠(2日分)ごとにアルミ袋で包装されています。開封後に湿気へ暴露されると、安定性が損なわれるため、この「1ヶ月」という制限が設けられています。
実務上の問題
例えば3日分、5日分の処方の場合、端数の2錠や4錠が余ります。添付文書通りなら開封から1ヶ月を超えた分は廃棄対象となります。薬局としても「患者が自己判断で残薬を後日使用する」ことを避けるよう指導が必要です。
服薬指導ポイント
・アルミ袋は必要な分だけ開封する
・開封後は1ヶ月以内に服用する
・余った場合は自己保管せず、薬局に相談する
- 小児用製剤との違い:クラバモックス
同じくクラブラン酸を含む製剤に「クラバモックス小児用配合ドライシロップ」があります。こちらは瓶や分包での調剤が基本で、患者宅での吸湿による品質低下リスクは低く、処方日数に応じて使い切ることが多いです。
つまり、錠剤のオーグメンチンに特有の問題として「端数」「残薬」が強調されます。
オーグメンチンとアモキシシリン単剤の併用
併用の意図
オーグメンチンは配合比が2:1であるため、アモキシシリンを高用量投与しようとするとクラブラン酸の量も同時に増えます。クラブラン酸の代表的な副作用は下痢であり、増量すると副作用リスクが高まります。
そのため、臨床では「オーグメンチン+アモキシシリン単剤」という併用が行われます。これによりクラブラン酸の用量を抑えつつ、アモキシシリンを十分量投与できるのです。
ガイドラインでの推奨
日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン」では、肺炎球菌性肺炎が疑われる場合にβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬を高用量で使用することが推奨されています。具体的には、アモキシシリン1.5〜2.0g/日が望ましいとされます。
オーグメンチン単独でこの用量を確保するとクラブラン酸過量になるため、パセトシンやアモリンを組み合わせる臨床判断が合理的といえます。
服薬指導の実際
患者への説明例
・「残った薬は1ヶ月以上保存せず、次に感染症が出たときに自己使用しないように」
・「下痢が出た場合、クラブラン酸の副作用かもしれないため医師に相談を」
・「併用薬(アモキシシリン単剤)が出ている理由は、菌をより確実に叩くためで、飲み合わせの問題ではない」
薬局での工夫
・半端処方が発生した場合、開封済み残薬を渡すリスク管理を徹底する
・服薬期間中の保存方法を強調する(高温多湿を避ける)
・他の抗菌薬との違いを意識して説明する
まとめ
・オーグメンチンはクラブラン酸の強い吸湿性のため、アルミ袋開封後は1ヶ月以内の使用が必須。
・半端処方では余剰薬が廃棄対象となることもあり、残薬自己使用を避けるよう指導が必要。
・アモキシシリン単剤との併用は、クラブラン酸による副作用を抑えながら有効用量を確保するための臨床的工夫。
・服薬指導では「保存期限」「副作用」「併用の意図」をしっかり伝えることが重要。
オーグメンチンは「単なる抗菌薬」ではなく、成分特性や保存条件を理解したうえで正しく扱う必要がある薬剤です。薬剤師としての知識を活かし、患者に適切な情報を届けることで、安全かつ有効な治療に貢献できます。