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抗菌薬の併用はアリか?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約3分58秒で読めます.
10,342 ビュー. カテゴリ:抗菌薬の併用
抗菌薬の併用処方はたまに見かける。
例えば、肺炎に対するエンピリックセラピーで、定型肺炎か非定型肺炎かわからない段階で治療を開始する場合、高用量ペニシリン系薬+マイロライド系薬orテトラサイクリン系薬の併用療法ということが行われます。
また、日本でのアモキシシリンの使用量が少ないので、アモキシシリン+クラブラン酸(オーグメンチン、クラバモックス)にアモキシシリンを追加して処方するケースもよくみられます。
抗菌薬を併用する理由として、下記4つの考えがあります。
1.原因菌不明もしくは複数菌感染が疑われている場合に抗菌スペクトルを広げる目的
2.併用療法によって相乗効果や相加効果が期待できる場合
3.耐性菌の出現防止を目的とする場合
4.副作用の軽減を目的とする場合
セフェム系とマクロライド系とかもよく見かける。
セフェム系とニューキノロン系とかだと、やり過ぎじゃないか、と個人的には思う。
肺炎に対する抗菌薬併用療法
成人が罹患する市中肺炎(CAP)は、細菌性肺炎(定型肺炎)と非定型肺炎に分類される。
両者は起炎菌が異なるため、治療に用いる抗菌薬も大きく異なる。
主な病原微生物 | |
---|---|
定型肺炎 | 肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ) インフルエンザ菌(ヘモフィルス・インフルエンザ) 黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス) モラキセラ・カタラーリス |
非定型肺炎 | 肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ) 肺炎クラミジア(クラミドフィラ・ニューモニエ) レジオネラ属 |
まず細菌性肺炎に関しては、肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスが主な起炎菌であり、日本化学療法学会の「JAID/JSC 感染症治療ガイドラインー呼吸器感染症-」では、グラム陽性球菌とグラム陰性桿菌の両方に有効な高用量ペニシリン系薬が推奨されている。
具体的には、アモキシシリン水和物(AMPC)とβラクタマーゼ阻害薬のクラブラン酸カリウム(CVA) を2:1 (250mg:125mg) で配合したオーグメンチン配合錠250RS、またはスルタミシリントシル酸塩水和物(SBTPC) 375mg(ユナシン錠375mg) を1回2錠、1日3~4回投与することが推奨されている。
βラクタマーゼ阻害薬は、細菌が産生する薬剤不活化酵素のβラクタマーゼを不可逆的に阻害し、生体内で抗菌薬の安定性を高める作用を持つ。
SBTPC はアンピシリン(ABPC) とβラクタマーゼ阻害薬のスルバクタムをエステル結合したmutual prodrugであり、配合比はオーグメンチンと同様、2:1である。
ガイドラインでの推奨量は、AMPCまたはABPCとして1500 ~2000mg/日に相当する。
しかし日本での承認最大用量は、オーグメンチン配合錠250RS は4錠/日(AMPCとして1000mg/ 日) 、ユナシンは最大3錠/日(ABPC として750mg/ 日) である。
そこで同ガイドラインでは、オーグメンチン配合錠250RS を1回1錠、1日3回に加え、AMPC(サワシリン) 250mgを1回1錠、1日3回投与する方法を例示している。
AMPC単剤を追加するのは、βラクタマーゼ阻害薬を増量すると下痢などの副作用リスクが上昇する恐れがあることから、副作用を抑えつつ十分な抗菌効果を得るためと考えられる。
一方、非定型肺炎に関しては、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラ菌が主な起炎菌であり、アジスロマイシン水和物(ジスロマック) などのマクロライド系薬やテトラサイクリン系薬が第一選択となる。
細菌性肺炎と非定型肺炎は、年齢、基礎疾患、頑固な咳や痰の有無、迅速診断による原因菌の特定、胸部聴診所見などで鑑別するが、どちらであるかが明らかでない場合は、高用量ペニシリン系薬とマクロライド系薬またはテトラサイクリン系薬が併用される。
抗菌薬の効果は、一般に3日目前後に判定される。
なお、教科書的にはマクロライド系薬は肺炎球菌に有効とされるが、日本ではほとんどの肺炎球菌が耐性化しており推奨されない。
また、ニユーキノロン系薬は細菌性肺炎と非定型肺炎の両者をカバーできるが、耐性菌抑制の観点から、高齢者や重症例などに限って積極的な使用が考慮される。
なお、政府は2016年4月、「薬剤耐性対策アクションプラン」を策定し、2020年の抗菌薬使用量を現在の3分の2に減らすことを掲げている。抗菌薬の適正使用において、薬剤師のさらなる貢献が求められている。
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