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ピロリ菌を除菌しても再感染する?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約5分14秒で読めます.
2,645 ビュー. カテゴリ:ピロリ菌の復活
ピロリ菌を除菌しても、数年後に再感染するんじゃないか?という話を患者から聞いた。
どうなんだろう?
確かに感染する可能性はありそうだ。
ピロリ菌除菌後の再感染の確率は2%以下という報告もある。
まず、ピロリ菌の感染者数は高齢者を中心に国内で約3500万人が感染しているとみられます。
ピロリ菌の保有率は、70代以上の人は半数以上がピロリ菌を保有していますが、20~30代のピロリ菌保有者は2、3割。
感染経路は、基本的に食べ物飲み物を介して口から入る経路と思われています。
衛生環境が悪ければ悪いほど感染率は上昇するということになります。
また人から人への経口感染もあるので、離乳食が発達しておらず子供の小さいころに母親が硬いものを噛んでそのまま子供の口へあげるなどの行為があったとすると、それが家族内感染となった可能性もあります。
世代の高い方々の高い感染率にはこのような背景もあることが言われています。
つまり、衛生環境や除菌後の年数によっては、再感染している可能性も考えられる。
そもそも除菌が完了していなかったということも大いにあり得る。
検査で陰性になったとしても偽陰性の可能性もある。
再感染を心配する患者に対しては、ピロリ菌保持者と同じコップを使用しての回し飲みや、キスなどを避けるようにアドバイスしようか。
衛生環境のよい日本で、免疫力が完成している成人が、ピロリ菌に再感染することは基本的にはないと思われます。
ヘリコバクター・ピロリ除菌薬まとめ
NSAIDs服用歴のないH.pylori陽性潰瘍では、まず抗菌薬2剤(アモキシシリン・クラリスロマイシン)とPPIの3剤併用による除菌治療を行う。
PPI自体にも静菌作用があるが、主に強酸によって抗菌薬の作用が低下するのを防ぐために併用する。
服薬コンプライアンスが悪い場合、除菌が不完全になるばかりでなく耐性菌出現につながるおそれがあるため、3剤の1日服用分を1シートにまとめた組み合わせ製剤(ランサップ400・同800)が発売されている。
クラリスロマイシンの用量400mgと800mgでは、除菌率に差はみられないため、低用量の400mgを選択する場合が多い。
一次除菌の除菌率は約80~90%である。
除菌不成功の原因はクラリスロマイシン耐性であることが多いため、不成功例に対してはクラリスロマイシンをメトロニダゾールに替えた3剤併用療法(二次除菌治療)を行う。
一次除菌不成功例を対象に、PPI+アモキシシリン+メトロニダゾールを1週間投与するH.pylori二次除菌治療が2007年8月から保険適用となった。
除菌に成功すると胃粘膜の炎症が改善し、良好な潰瘍治療が得られるため、従来の薬物療法でみられたような再発は少なく、消化性潰瘍症からの離脱が可能となる。
・H.pylori二次除菌治療に関するメタアナリシスでは、最も効果的なのはビスマス製剤を用いた4剤併用療法とラニチジンビスマス3剤併用療法とされているが、わが国ではビスマス製剤のほとんどとラニチジンビスマスが使用できない。
このため、このレジメンはわが国では保険では実施できない。
・ピロリ菌を除菌する薬は、1週間毎日飲み続けなければ十分な効果が得られない可能性があるので、1日2回きちんと時間通り、3つの薬を確実に服用するように指導する。
・抗菌薬を大量に服用するので、除菌治療の際に乳酸菌製剤を補充すると、下痢などの副作用が低減するので、勧めてもよい。
・除菌薬による重篤な副作用(出血性腸炎など)について周知し、それが出現したらただちに服薬を中止するように指導する。
・二次除菌に用いるメトロニダゾール服用中は禁酒を守らせる。
胃潰瘍の60~80%、十二指腸潰瘍の90~95%がヘリコバクター・ピロリの除菌により胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発が大幅に減少することから、除菌は消化性潰瘍に対する標準的な治療となってきた。
また、2010年6月より胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃も除菌療法の保険適用となった。
現在、クラリスロマイシン耐性菌が増えており、ランソプラゾール(LPZ)60mg、アモキシシリン(AMPC)1500mg、クラリスロマイシン(CAM)400mg、または800mgを用いた除菌率は80%程度である。
現在PPIについてはオメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)が承認されている。
さらに、除菌不成功例に対してCAMをメトロニダゾール250mg(フラジール、アスゾール)に変えた3剤併用療法(PPI+AMPC+メトロニダゾール)が保険適用されている。
感染の診断検査は保険適用上、胃・十二指腸潰瘍の確定診断のついた患者に限定されており、診断方法は制限はあるが同時に2つまで認められる。
内視鏡検査を施行する場合は迅速ウレアーゼ試験が、内視鏡検査を施行しない場合は尿素呼気試験が勧められる。
胃潰瘍を治療中の患者に対しても感染診断検査は適用できるが、PPIには静菌作用があるため投与の中止後2週間以上をあけてから検査をする。
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療に際しては、逆に消化器症状が出現することをあらかじめ説明しておく。
ピロリ菌の三次除菌
ピロリ菌の除菌は、まず、プロトンポンプ阻害薬とアモキシシリン水和物(サワシリン、パセトシン他)、クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド他)の3剤を併用する一次除菌を行います。
除菌できなかった場合は、一次除菌のレジメンのうち、クラリスロマイシンをメトロニダゾール(フラジール他)に代えて二次除菌を行います。
クラリスロマイシンの耐性菌が増加していることから、一次除菌の成功率は60~70%にとどまりますが、一次除菌失敗例の90~98%で二次除菌が成功します。
つまり、二次除菌まで行っても失敗するのは100人中2~3人程度と多くはありません。
二次除菌失敗例には、保険適用外ですが、三次除菌が行われます。
ヘリコバクターピロリ菌の三次除菌療法について
三次除菌療法として、耐性菌率の低いニューキノロン系の抗生剤やミノサイクリン(MINO)などを用いた除菌療法がいくつか試みられている。
PPI + AMPC +レボフロキサシン(LVFX)で80%の除菌率、PPI + MINO + MNZ で85%の除菌率との報告がある。
一方、本邦で唯一使用可能なビスマス製剤である次硝酸ビスマスを用いたAMPC+MNZ+次硝酸ビスマス(AMPC 1,500mg+ MNZ 1,200mg,最初の2週間+次硝酸ビスマス4週間)でも74%の除菌率との報告がある。
PPI+AMPC+LVFX(ラベプラゾール 20mg+AMPC 1,500mg+LVFX 600mg,1 ~ 2 週間) で除菌率66.7 %、PPI + MNZ +LVFX(ラベプラゾール 20mg + MNZ 500mg +LVFX 600mg,1週間)で除菌率66.7%であった。
これらのプロトコールは二次除菌療法失敗例のみならず、一部はペニシリンアレルギー症例にも用いることのできる除菌療法として考案されたものである。また、薬剤の投与期間を長くし、除菌率を向上させようとする工夫もなされている。
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