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ワクチンを接種してはいけない薬一覧
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約2分27秒で読めます.
4,953 ビュー. カテゴリ:ワクチンと免疫抑制薬

添付文書の禁忌に「生ワクチンを接種しないこと」と記載されている薬がある。禁忌ではなく「重要な基本的注意」の部分に書かれているものもあり、免疫抑制薬のほぼすべてに記載されている。
免疫抑制薬を使用している患者は、免疫反応を抑えられているため感染症にかかりやすい。そのため、ワクチンに病原性の残る生ワクチンを接種すると、そのウイルスに感染してしまう可能性がある。不活化ワクチンであれば、感染性を失っているため接種可能というわけだ。そのため「生ワクチン」の接種にのみ注意が促されている。
▶ワクチンを接種してはいけない主な薬一覧
医薬品名 | 添付文書の記載 |
---|---|
アクテムラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
アザニン錠/イムラン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
アドトラーザ皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
アフィニトール分散錠/錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
アラバ錠 | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。また、本剤の投与中止後に生ワクチンを接種する場合も、本剤の体内からの消失が遅いことを考慮すること。 |
イブグリース皮下注オートインジェクター /シリンジ | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
イムセラカプセル | 生ワクチンを接種しないこと。 |
イラリス皮下注射液 | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。本剤投与前に、必要なワクチンを接種しておくことが望ましい。 |
イルミア皮下注シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
エンブレル皮下注ペン/シリンジ/クリックワイズ用 | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
オルミエント錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
オレンシア皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中及び投与中止後3ヵ月間は,生ワクチン接種により感染する潜在的リスクがあるので,生ワクチン接種を行わないこと。また,一般に本剤を含む免疫系に影響を及ぼす薬剤は,予防接種の効果を低下させる可能性がある。 |
オンボー皮下注オートインジェクター/シリンジ | 生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、本剤投与中は生ワクチン接種を行わないこと。 |
グラセプターカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ケブザラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
コートリル錠 | 禁忌:免疫抑制が生じる量の本剤を投与中の患者には生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種しないこと |
コートン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
コセンティクス皮下注ペン/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
コレチメント錠 | 免疫抑制状態の患者では、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中の患者に生ワクチンを接種する場合、免疫機能を検査の上、十分な注意を払うこと。 |
サーティカン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
サイバインコ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチンの接種は行わないこと。 |
サンディミュン内用液 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ジセレカ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
シムジア皮下注シリンジ/シオートクリックス | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ジレニアカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
シンポニー皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
スキリージ皮下注シリンジ/オートドーザー | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ステラーラ皮下注シリンジ | 生ワクチン接種に起因する感染症発現の可能性を否定できないので、本剤による治療中は、生ワクチンを接種しないこと。 |
ステロネマ注腸 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
スマイラフ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
ゼポジアカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
セルセプトカプセル/懸濁用散 | 禁忌:本剤投与中は生ワクチンを接種しないこと |
ゼルヤンツ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
ソーティクツ錠 | 本剤投与中は生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種を行わないこと。 |
デカドロンエリキシル | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
デカドロン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
テゼスパイア皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
デュピクセント皮下注ペン/シリンジ | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
トルツ皮下注オートインジェクター/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
トレムフィア皮下注シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ナノゾラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ネオーラル内用液/カプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ヒュミラ皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ビンゼレックス皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ブレディニン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
プレドニン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
プレドネマ注腸 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
プログラフカプセル/顆粒 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ベンリスタ皮下注オートインジェクター/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
メーゼント錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
メドロール錠 | 禁忌:免疫抑制が生じる量の本剤を投与中の患者には生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種しないこと |
ラパリムス錠/顆粒 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
リウマトレックスカプセル | 免疫機能が抑制された患者への生ワクチン接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中に生ワクチンを接種しないこと。 |
リットフーロカプセル | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチンの接種は行わないこと。 |
リンヴォック錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
リンデロン坐剤 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
リンデロン錠/散/シロップ | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
ルプキネスカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
ルミセフ皮下注シリンジ | 本剤投与中は生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種を行わないこと。 |
レダコート錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
レナデックス錠 | 本剤投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
ロイケリン散 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ワクチンの種類
ワクチンは主に生ワクチン、不活性化ワクチン、トキソイドに分類されます。
①生ワクチン
免疫のない人に病原性を弱めたウイルスや細菌を接種して、人工的に感染を起こします。
接種後に得られる免疫は強固で、自然感染後に得られる免疫と同等の強さです。
麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、おたふくかぜ、水痘、黄熱、BCG
②不活性化ワクチン
ウイルスや最近を精製・処理し、病原性・毒性を消失させ、無毒化させたものです。
日本脳炎、インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、A型肝炎、三種混合DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)、コレラ、肺炎球菌、ワイル病、秋やみ、新型コロナ、ポリオ(2012年9月から)
③トキソイド
ジフテリア菌や破傷風菌などの毒素産生能力が高い菌の毒素を精製し、無毒化したものです。
ジフテリア、破傷風、DT(ジフテリア・破傷風)混合
▶ワクチンの種類
ワクチン | 例 | 説明 |
---|---|---|
生ワクチン | BCG、麻しん・風しん(MR)混合ワクチン、水疱瘡ワクチン、おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチン | 生ワクチンは生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたもので、これを接種することによってその病気にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)ができます。 |
不活化ワクチン | ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン四種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日せき・破傷風三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア・破傷風二種混合ワクチン(DT)、日本脳炎ワクチン、インフルエンザHAワクチン、ヒブワクチン(インフルエンザ桿菌b型ワクチン)、小児用13価肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、不活化ポリオワクチン | 不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺し抵抗力(免疫)をつくるのに必要な成分を取り出して毒性をなくして作ったものです。 |
トキソイド | ジフテリア、破傷風 | 細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫を作る能力は持っているが毒性は無いようにしたものです。 |
サブユニットワクチン | シングリックス(帯状疱疹ワクチン) | ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンで、生ワクチンではない |
ベクターワクチン | エボラウイルスワクチン、新型コロナワクチン(アストラゼネカ、ジョンソンアンドジョンソン) | ヒトに対して病原性のない、または弱毒性のウイルスベクター(運び手)に抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだ、組み換えウイルスを投与するワクチン |
DNAワクチン | 新型コロナワクチン(アンジェス) | 病原体を構成する成分の設計図であるDNAをワクチンにしたもの。 |
mRNAワクチン | 新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ) | 抗原たんぱく質の塩基配列を作る情報を持ったmRNAのワクチン。 |
予防接種に用いられるワクチンは「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に大別される。
生ワクチンは、生きた細菌やウイルスの毒性や発病力を弱めてつくったもので、これを接種することでその病気にかかったときと同じような免疫が獲得できる。生ワクチンを接種すると体内で細菌やウイルスが増殖するので、接種後しばらくしてから発疹や発熱など、その病気の症状が軽く出てくることはあるが、免疫獲得力は強い。
日本で使われている生ワクチンには、結核(BCG)ワクチン、麻疹・風疹混合ワクチン、水痘(みずぼうそう)ワクチン、おたふくかぜワクチンなどがある。
不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺して毒性をなくし、免疫をつくるために必要な成分だけを取り出したものである。不活化ワクチンは生ワクチンのように細菌やウイルスが体内で増殖しないので、1回接種しただけでは必要な免疫を獲得・維持できない。そのため、複数回の接種が必要となる。日本でよく使用される不活化ワクチンには、ジフテリア・百日咳・破傷風三種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザHAワクチン、インフルエンザ菌B型(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん(HPV)ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなどがある。
免疫抑制薬を服用していて、不活化ワクチンを接種しても感染する恐れはないが、ワクチンの効果が薄れる可能性はある。免疫抑制薬を服用していることにより、ワクチンにより抗体を産生する働きが抑えられてしまうためである。一時的な服薬であれば、接種タイミングをずらすこともできるが、長期的に服用していることが多いので、このデメリットについては事前に説明しておく必要がある。