2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

鏡像異性体一覧

エナンチオマーとは?

薬剤師

鏡像異性体と光学異性体って違うの?

鏡像異性体とか光学異性体とか、分子式は同じだけど性質の異なる物質の話。
鏡像異性体と光学異性体は同義語。

エナンチオマー(鏡像異性体、光学異性体、対掌体)とは、右手と左手のように互いに重なり合わない鏡像である一対の立方異性体の一方のことで、この性質をキラル(ギリシャ語で「手」)という。
エナンチオマーが等量ずつふくまれる混合物をラセミ体と呼ぶ。

通常の化学合成ではラセミ体ができる。
光学異性体同士は合成に必要なエネルギーが同じなので1:1の混合物となる。
従って、天然物由来の薬剤を除き、化学合成で作られる通常の薬はラセミ体だ。

ただし、有機合成化学の発展により、必要とする光学異性体だけを合成する手法が確立された。工業的にもラセミ体を2種の光学異性体に分離(光学分割)したり、特殊な方法で作り分けることができるようになった。

生体内で働く機能分子(酵素や受容体など)は選択性がありR体とS体を認識するため、これらのエナンチオマーは、生体内では互いに異なる生理活性をもつ場合が多い。

光学異性体には以下のような薬品がある。
ちなみに、クラリチン(ロラタジン)とデザレックス(デスロラタジン)は光学異性体ではない。デスロラタジンはロラタジンの活性代謝物である。
また、リンデロン(ベタメタゾン)とデカドロン(デキサメタゾン)も光学異性体ではなく、ただの立体異性体である。

医薬品名旋光性光学異性体旋光性
タリビッド(オフロキサシン)R+Sクラビット(レボフロキサシン)
オメプラール(オメプラゾール)R+Sネキシウム(エソメプラゾール)
アモバン(ゾピクロン)R+Sルネスタ(エスゾピクロン)
ジルテック(セチリジン)R+Sザイザル(レボセチリジン)
アレルギン(dl -クロルフェニラミンマレイン酸塩)d+lポララミン(d -クロルフェニラミンマレイン酸塩)d

ちょっと気になるのが、それぞれの用量。
アレルギンは1日4~24mg。ポララミンは2~8mg。
アモバンは1日7.5~10mg。ルネスタは1~3mg。
オメプラールは1日10~20mg。ネキシウムも同じ。
ジルテックは1日10~20mg。ザイザルは5~10mg。
タリビッドは1日300~600mg。クラビットは1日500mg(以前は違いましたが)。

用量は1/2になる、という単純なことではないわけで。
光学異性体の効くほうをチョイスしても、効かないほうが全く効かないというわけではないのかな。
オメプラールとネキシウムの用量が同じなのはよくわかんないけど。

ネキシウムとオメプラール

ネキシウム(エソメプラゾール)は、総代謝固有クリアランスがオメプラール(オメプラゾール)に比べて低いことから、血漿からの消失が遅く、AUCが高くなるため、オメプラール以上の臨床効果が期待できる。
さらに同薬は、オメプラールが取得している適応症(逆流性食道炎など)以外に、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」にも適応を取得している。

ネキシウムの一般名はエソメプラゾール。
オメプラゾールはRとSの鏡像異性体が混ざったもので、エソメプラゾールはSだけ。
エス-オメプラゾールでエソメプラゾールということらしい。

S体はR体と比べ、CYP2C19への親和性が低く代謝を受けにくい。
ネキシウムはオメプラールと同様にCYP2C19とCYP3A4による代謝を受けるが、ネキシウムの代謝におけるCYP2C19の寄与率は、オメプラールよりも低い。

そのため、ネキシウムはオメプラールをはじめとした他のPPIと比較して遺伝子多型の影響を受けにくい。
薬物動態や薬力学的作用の個体変動が少ないとされる。

これらの特徴によりネキシウムは安定した薬物動態を示し、優れた酸分泌抑制効果を発揮する。

作用点は他のPPIと同様、胃壁細胞に存在する酵素H+、K+-ATPaseを阻害することにより酸分泌抑制効果を示し、逆流性食道炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍をはじめとする酸分泌関連疾患の治療に用いられる。

アモバンとルネスタ

アモバンはゾピクロンで、ルネスタはエスゾピクロン。
なんかザイザルとかネキシウムとか、こういうの多いですね。

全くの新薬を作るより簡単なんだろうけど。

ルネスタはアモバンの鏡像異性体のエス体。
大した違いは無さそうです。

エーザイの担当者によると、脳内の覚醒系の神経伝達の抑制を担う神経伝達物質(GABA)の効果を増強させることで睡眠を誘発する。長期連用しても、有効性が減弱しないことが特長という。

苦味もアモバンより強力なのかな、と思ったら、苦味は軽減されているという話。

アモバンの強力版といっても、しょせんアモバン。
どの程度のニーズがあるのだろう。

ゾピクロンは鏡像異性体(エナンチオマー)が存在し、R体とS体が同じ割合で含まれる混合物(ラセミ体)である。
エスゾピクロンは中枢神経系のγアミノ酪酸(GABA)受容体複合体に結合し、GABAによる塩化物イオンの神経細胞内への流入を促進することでGABAの効果を増強し、催眠作用を示す。

ゾピクロンの薬理活性の大部分はS体に起因することが明らかになっている。
催眠作用や抗不安作用への関与が示唆されるGABAA受容体の4種のサブユニット(α1、α2、α3、α5)に対するエスゾピクロンの結合親和性は、いずれもゾピクロンに比べて高かった。
R体はGABAA受容体に対する親和性はなく、鎮静作用は有していないものと考えられている。
また、生体内でS体とR体での相互変換はなく、R体はS体の体内動態に影響を及ぼさない。
従って、ゾピクロンの薬効はS体のエスゾピクロンの量に依存すると考えられる。
このため、ゾピクロンの用量は成人の場合7.5~10mgであるのに対し、エスゾピクロンは2~3mgと大幅に少なくなっている。

ラセミ体のゾピクロンに比べて、光学異性体であるエスゾピクロンは、ベンゾジアゼピン結合部位とクロライドチャネル結合部位に対する結合親和性が2倍程度高い。半減期は、ゾピクロンが約4時間に対してエスゾピクロンは5時間と長くなった。

エスゾピクロン(eszopiclone、商品名: ルネスタ)はシクロピロロン系の超短時間作用型睡眠導入剤。
アメリカの製薬会社、セプラコールが創薬した。

ゾピクロンの (S)-鏡像異性体であり、ゾピクロン同様、GABA受容体に作用し効果を示す。

日本では2007年からエーザイがライセンス契約を結び、開発並びに販売に関する権利を取得しており、2011年には厚生労働省薬事・食品衛生審議会より承認されている。
エスゾピクロンは、EMAによって新規特許製品とするにはゾピクロンと似すぎていると2009年に判断されたため、欧州では販売されていない。

ルネスタにも苦味はあるのか?

ゾピクロンは徐波睡眠を回復するが、口中に苦味が出現することがある。

ルネスタ、アモバンともに苦味があり、これはゾピクロンのR体とS体がともに有する性質である。
添付文書では、味覚異常の発現率がゾピクロンでは4%、エスゾピクロンでは約36%となっており、エスゾピクロンの方が高頻度に報告されている。
しかし、治験の時代背景により有害事象の抽出感度が異なる可能性もあり得る。
一方、エスゾピクロンは投与量自体が少ないため薬物の曝露量が減少し、苦味が抑えられる可能性を指摘する論文も少なくない。

ゾピクロン、エスゾピクロンともに、体内吸収後に一部が唾液中に分泌されるため、翌朝にも苦味が残ることがある。
苦みは用量に依存して発現するほか、唾液量とも関係することが分かっている。

ルネスタはアモバンよりも強い?

日本精神科評価尺度研究会による「向精神薬の等価換算」で確認すると、アモバン(ゾピクロン)7.5㎎とルネスタ(エスゾピクロン)2.5㎎が等価なのだそうだ。

アモバンは7.5㎎がよく使われるが、ルネスタの3㎎はあまり使われることはなく、1㎎か2㎎の使用が多い。
そうすると、アモバンからルネスタへの切り替えによって、効果は落ちる患者が多い。

タリビッドとクラビット

タリビッドはオフロキサシン。
クラビットはレボフロキサシン。

タリビッドを構成する2つの化合物は、S(-)オフロキサンとR(+)オフロキサンという化合物であり、クラビットはこの中のS(-)オフロキサン(=レボフロキサシン)という化合物です。
S(-)オフロキサンとR(+)オフロキサンの抗菌活性を調べると、S(-)オフロキサンのみが強い抗菌活性を示し、R(+)オフロキサンは抗菌活性を示しませんでした。また、副作用について調べると、S(-)オフロキサンでは強い副作用を示さないが、R(+)オフロキサンは強い副作用を示すことが分かりました。

レボフロキサシンは、オフロキサシンより水溶解度が10倍向上し、抗菌活性は約2倍となっている。また、臨床でオフロキサシンには不眠の副作用が確認されていたが、レボフロキサシンではその発現率

クラビット錠の100mgが販売中止になったのは、100mgの用量で使い続けていると耐性菌が増えるから、と聞きましたが、タリビッドも使い続けていると耐性菌が増えそうな気がします。

ところで、タリビッドのことをタリビットと呼んでみたり、クラビットのことをクラビッドと呼んでみたり。。。間違えやすい。

タリビッドの名前の由来

TARGET(標的)の TAR と VIVID(躍動的、きびきびしたの意)の IVID から TARIVID とし、力強く標的 臓器に達する本剤を表現した。

クラビットの名前の由来

「CRAVE(熱望する、切望する)IT」から CRAVIT とし、待ち望まれた薬剤であることを表現した。

タリビッドの「ッド」は「ビビッド」の「ッド」。
クラビットの「ット」は「イット」の「ット」。

ザイザルとジルテック

「ザイザル」は、既に国内外にて豊富な販売実績と臨床経験を有する持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤「ジルテック」(一般名:セチリジン塩酸塩)の光学異性体のうち、より強い生理活性を有するR-エナンチオマーのみを光学分割により生産したものです。ヒスタミンH1受容体に安定して結合し、「ジルテック」の約2倍の親和性があるため、より効果的な抗ヒスタミン作用が期待できます。

「ザイザル」の製品特性
ヒスタミンH1受容体に高い親和性を示し、強力な抗ヒスタミン作用を示します
1日1回の投与で、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性皮膚疾患に対して、優れた効果を示します
投与早期より優れた効果を発揮し、24時間安定した効果が持続します
アレルギー性鼻炎の患者さんおよびアレルギー性皮膚疾患の患者さんの症状を改善することによりQOL(生活の質)を改善します

これが最後の抗アレルギー剤とも言われているので、期待の新薬です。

7歳以上で使えるけど、

成人:通常、成人にはレボセチリジン塩酸塩として1回5mgを1日1回、就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高投与量は1日10mgとする。
小児:通常、7歳以上15歳未満の小児にはレボセチリジン塩酸塩として、1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前に経口投与する。

とりあえず5mg製剤しかないので、半割しなきゃならない。メンドクセ。

そのうち小児用の製剤も発売するでしょうか。

レボノルゲストレルとノルゲストレル

緊急避妊薬として、ノルレボ錠が発売になりました。

成分はレボノルゲストレル。

低用量ピルのアンジュ、トライディオール、トリキュラー、にも配合されてます。

一方、中用量ピルのプラノバールにはノルゲストレルという成分が配合されています。

レボノルゲストレルとノルゲストレル。

レボフロキサシンとオフロキサシン、レボセチリジンとセチリジン、みたいなものか。

ノルゲストレルにはd体とl体の2種類の光学異性体があり、d体にのみホルモン活性があるので、l体を除去してd体のみとし、1/2量で同等のホルモン活性を得られるようにしたものがレボノルゲストレルである。

クラリチンとデザレックス

MSDが海外で販売している「クラリネックス」というクラリチンの改良版があるそうだ。
日本ではMSDと杏林が共同販売するとして、ニュースになっていた。
クラリチンの成分はロラタジンで、クラリネックスの成分はデスロラタジン。
最近よくある、ジルテックとザイザルみたいな鏡像異性体?と思ったら、デスロラタジンはロラタジンの活性代謝物のようだ。

日本では「デザレックス」という商品名で販売するようだ。

クラリチンの添付文書の「薬物動態」をみると、

活性代謝物descarboethoxyloratadine(DCL)の効力比は未変化体(ロラタジン)の7.9倍であり,ヒトに経口投与したときの主たる薬効に寄与しているのは活性代謝物(DCL)である。

descarboethoxyloratadine、デスカルボキシロラタジン。
これがデスロラタジンということか。

活性代謝物のほうを投与することで、ロラタジンからデスロラタジンに代謝される過程が必要なくなるわけで、代謝される過程で必要となる薬物代謝酵素の影響も受け無くなる。
そのためクラリチンで併用注意となっている、エリスロマイシンやシメチジンもデスロラタジンでは無くなるのではないかと思う。

クラリチンの相互作用には、以下のように書かれている。

ロラタジンから活性代謝物(DCL)への代謝にはCYP3A4及びCYP2D6の関与が確認されている。

エリスロマイシン,シメチジン

臨床症状・措置方法ロラタジン及び活性代謝物(DCL)の血漿中濃度の上昇が認められるので,患者の状態を十分に観察するなど注意すること。(【薬物動態】の項参照)
機序・危険因子薬物代謝酵素(CYP3A4,CYP2D6)阻害作用を有する医薬品との併用により,ロラタジンから活性代謝物(DCL)への代謝が阻害され,ロラタジンの血漿中濃度が上昇する。[活性代謝物(DCL)の血漿中濃度が上昇する機序は不明]

ロラタジンからデスロラタジンへの代謝は阻害されるけれど、ロラタジンばかりか、デスロラタジンの血中濃度も上昇するようだ。よくわからない。

キニジンとキニーネ

キニジン – Wikipedia

キニジン(英: quinidine)は、抗不整脈薬のひとつ。キニーネの鏡像異性体(エナンチオマー)。キニーネが左旋性、キニジンが右旋性である。

キニジンは抗不整脈薬、キニーネは抗マラリア薬です。

異性体だったのですね。
初めて知りました。

キニジンの併用禁忌にメファキンがあります。

メファキンはキニーネを元に作られているので、当然か。

dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩とdl-クロルフェニラミンマレイン酸塩

アレルギンはdl-クロルフェニラミンマレイン酸塩で、ポララミンはd-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。

紛らわしいので注意が必要である。

クロダミンシロップはdl-クロルフェニラミンマレイン酸塩で、ポララミンシロップはd-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。

ネオレスタミンコーワ散1%は、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。

ちなみにセレスタミンに配合されているのは、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。
フスコデに配合されているのは、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩である。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書: 薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
ツイッター:
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索